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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第三部 切り開くはアグリカ大陸への直通航路

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296 テラセーラ島にて 7 神の怒りに触れた村

 ヘラルドの問いかけに、村長の顔が渋く歪む。


 ヘラルドの言う『お守り石』は、『神の守り石』とも言う。

 つまり、火属性の魔石および宝石のことである。


『あの村なら滅んだ』

『……滅んだ!? 何故!?』


 村長のあまりの言葉に、ヘラルド以外の五人も驚きの声を上げたり絶句したりする。


『あの村はな、「神の住まう山」の麓近くにあって、「神の住まう山」から「お守り石」を分けて戴いては、お守りを作り他の村と交易していた』


 村長が胸元のペンダントに触れた。

 木製のそれには火属性の魔石や赤い宝石がいくつも嵌め込まれている。


『恐らく、村人の誰かが禁忌を行い神の怒りに触れたんじゃろう。神の怒りは真っ赤に灼けて溶けた岩となって溢れ出し、その村を飲み込み、押し流したんじゃ』

『その村の者達は? 助かった者はいなかったのか?』

『いくらかおりはした。助けてくれと、この村にも来たのう』

『それでその村人達は?』


 これまでそんな話は聞いたことはないが、もしこの村で保護されているのなら詳しく話が聞きたかった。

 しかし、村長の答えに愕然とすることになる。


『もちろん追い返したとも』

『それは――』

『当然じゃろう。この村まで神の怒りに触れて滅ぼされてはたまらん』

『――……ああ、そうだな』


 村長の対応は、至極当然だった。

 立場が違えば、ヘラルド達も同様の対応をしたと、理解出来るからだ。


 特に船乗り達は信心深い。

 もし海の女神ポセーニアの怒りに触れて沈没させられた船の船乗りが助けを求めてきたら、誰もが拒否するだろう。

 そのような罪人を助けて船に乗せ、自分達まで神の怒りに触れて沈没させられては適わない。

 ましてやゼンボルグ公爵領へ連れ帰るなど、言語道断だ。


 これは村長やヘラルド達がことさら薄情と言う話ではない。

 この時代の倫理観、宗教観に照らし合わせれば、ごく当然の、常識的な対応だ。


 もちろん、その場にマリエットローズがいれば対応は違っただろう。

 それが神の怒りなどではなく、ただの自然災害であることは明らかなのだから、被災した村人達を保護することは、人道上、当然である。


 その後、その村人達がどうなったか、ヘラルド達は尋ねることはしなかった。

 自分達がこの島を訪れる、一年も前の話なのだ。


 どこかの村で保護されているのならいいが、それは期待出来ない。

 であれば、どこでどうなったかなど考えるまでもないし、考えたところで今更何が出来るわけでもない。

 なので気持ちを切り替え、考えるべき事を考える。


 つまりそれは、このテラセーラ島における魔石と宝石の加工技術と伝統が途絶えてしまったと言うことだ。

 採掘する者達がいなくなった以上、供給すら行われない。


「どうしたヘラルド?」

「……続きは帰ってから話そう」


 村長に別れを告げて、全員で借りている家へと戻る。

 そして、いつもより早めの報告会を開いた。


「現場の確認が必要だと思うが、どう思う?」

「そうだな……確かに必要だ」

「村長や村の人達にバレると不味いですよね?」

「ああ、良くは思われないだろうな」


 バレれば村を追い出され、交流を断たれるかも知れない。


「だけど大丈夫なんですかね……オレ達余所者だし」

「うん、俺達が勝手に『神の住まう山』に近づいたら、神様、怒るんじゃ?」


 それで再び噴火が起きれば、間違いなくテラセーラ島全ての村人達から袋叩きにされるだろう。

 最悪、怒りを鎮めるための供物として捧げられ、火口に投げ込まれる可能性すらある。


「その滅びた村の村人が何をしでかして神の怒りを買ったのかは分からないが、村と採掘場の様子を見て回るくらい大丈夫のはずだ」

「ご神体に手を出したか、禁足地に踏み入ったか、供物を掠め取ったか……」

「ああ、きっとそんなところだろう。いずれにせよ、滅多なことをしない限り、そうそう怒る神ではないと思う。でなければ、数百年ぶりの大噴火とはならなかったはずだ」

「そうだな。怒りっぽい神なら、もっと頻繁に噴火しているだろう」


 セサル達若い船員達は腰が引けているが、ヘラルド達ベテラン船員達は、これまでの航海や人生経験から、神がそうそう怒りを露わにすることはないと感じていた。


「では、十分な準備をしてから、その村と採掘場へ行ってみよう」


 翌日から、ヘラルド達は村の仕事を手伝いながら準備を始めた。

 村長に根掘り葉掘り聞いては怪しまれるため、数日掛けて村人達からそれとなく情報を集め、その滅びた村や採掘場の位置を調べた。

 そして、十分な量の食料を確保すると、村の周辺を見て回ることを口実に、一旦村を離れたのだった。



 いつも読んで頂き、また評価、感想、いいねを頂きありがとうございます。


 書籍第二巻、発売中です。

 また、ドラゴンエイジのWeb媒体「ドラドラふらっと♭」にてコミカライズが決定しました。

 是非、期待してお待ち下さい。


 励みになりますので、よろしければブックマーク、評価、感想、いいねなど、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
あー、あの祠壊しちゃったの?それじゃもうダメだね。君、たぶん◯ぬ ってやつで草。まあそもそも魔石って何ってのがそもそも謎ですがそろそろ明かされるのかな?
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