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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第三部 切り開くはアグリカ大陸への直通航路

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263 目指す灯台の仕様

 お父様には、灯台の必要性や意義は理解して貰えたと思う。

 次は、中身についてね。


「灯台そのものの高さは、設置する場所によって変わると思います」

「確かに、港から少し離れた小島に建設するのと、岬の高台に建設するのでは、必要な高さも変わるだろう」


 そこは、建設予定地を決めてからの話ね。


「ただ、内部の仕様は規格を統一したいです」

「そうだね。灯台で働く職員の教育も一本化出来るし、職員の移動もさせやすい。何より灯台の魔道具を量産するのなら、規格の統一は必要なことだ」

「灯台の魔道具に使う魔石は光属性で、出来れば大きな魔石を使いたいところですが……」

「それは……少々難しいかも知れないね」


 賢雅会のエセールーズ侯爵が光属性の魔石を産出する魔石鉱山を握っているから、そこからの調達は難しそうよね。

 灯台をたくさん設置する場合、それだけ数が必要になるから。

 特に大きな魔石ともなると、足下を見られて、かなりぼったくられそう。


「マリーも書いているが、魔道具の推進器のように、小さな魔石を複数組み合わせて作る方が無難だろう。いずれにせよ、大きな出力で遠くまで光を届かせるなら、その魔道具はある程度大型になるのだろうし」

「そうですね。私もそれが無難だと思います」


 小さな魔石の場合はその内包するエネルギーが切れるのも早いから、こまめな交換が必要だ。

 さらに数が多いとなると、それだけ手間になる。


 だから、大きな魔石を使いたかったのだけど。

 現状、仕方ないわよね。


 ヴァンブルグ帝国の魔石利権貴族から買い付けるにしても、さすがに輸出の許可は出ないだろうし。

 当然、大きな魔石はヴァンブルグ帝国にとっても貴重だろうから。


 仮に許可が出ても、輸送する船を襲われて奪われたら、それこそ大打撃だわ。

 つくづく邪魔よね……賢雅会って。


 もっとも、向こうもこっちをそう思っているんでしょうけど。


「それ以上に問題なのは、大きなレンズか……」

「はい……」


 透明度が高くて、歪みが少なく綺麗に磨かれた、水晶もしくはガラスのレンズ。

 だけど、普通にレンズを作ったら分厚く、重く、材料も大量に必要になってしまう。


 そこで採用したいのが、フレネルレンズと呼ばれるレンズだ。


 フレネルレンズがどのようなレンズかと言うと、以下のような形状になっている。


 まず、片面が平らでドーム状になったレンズを同心円状に切り分け、中心部の円のレンズと、それを囲む複数のリング状のレンズに分割する。


 すると、中心部の円のレンズは、円柱の分厚い土台の上に、ドーム状の部分が載った形状になる。

 それを囲むリング状のレンズも、リング状の土台の上に、ノコギリの刃状の部分が載った形状になる。


 そこで、この中央のドーム状の部分とそれを囲むノコギリの刃状の部分のみを残し、土台部分を全て削ると、中央から縁まで高さが揃ったレンズが出来上がる。

 これがフレネルレンズだ。


 フレネルレンズの利点は、レンズの高さ、つまり厚みを一定に揃えたことで、薄くて軽量になり、土台部分に使われる材料の節約になることにある。


 代わりに、集光性能は若干落ちてしまう欠点があるけど。


 でも、灯台に使われるレンズのサイズを考えれば、普通のレンズでは重量がどれだけになるか分からない。

 重量がある普通のレンズでは、それを保持し、バランスを取り、回転時の遠心力にも負けない重く頑丈な設備が必要になる。


 それを考えると、デメリットよりメリットの方が大きいと考えられたのね。


 ただ、現状問題なのは、それを今の工業力で作れるのか、ましてや量産出来るのか、と言うこと。

 これは、多少色付きやサイズが小さくなってもいいから、ガラス工房に頑張って貰いたいわ。


 魔道具のことだから、補助金が必要ならブルーローズ商会が出していいから。


「魔道具の方で光を束ねると言うのは無理なのかな?」

「はい……色々考えて、オーバン先生やクロードさんにも相談してみたんですけど、現状、使えそうな魔法文字や慣用句は見つかっていないです」


 簡単に言えば、それは直進する光をねじ曲げると言うことだから。


 ちなみに、複数のスポットライトを束ねる方法も検討しているけど、その場合、届かせたい目標地点に焦点を合わせる微細な角度の調整が非常に難しく、限られた腕のいい職人しか製作、設置出来なくて、これもまた量産に問題があるのよね。


「そうか。しかし、多方面からのアプローチは大切だ。大変だとは思うが、引き続き、魔道具の方で実現できないか研究を続けなさい。私も、ガラス工房を当たってみよう」

「はい、お願いします」


 灯台の建設は、そのレンズの問題が解決してからね。

 多少不出来でも、現在ある灯台より有用性が高いのは確実なんだから。


「マリー、仮に灯台を建設するとなった場合、依頼するのは大型ドックを建設した商会や職人達とはまた別の者達にしたいと思うが、構わないかな?」

「それはいいですけど、どうしてですか?」


 大型ドックを建設してくれた商会や職人達の方が、人柄や技術に信頼があるのに。


「大型ドック建設から外された商会と職人達にも仕事を回したい」

「ああ、そういうことですね」

「幸い、核心部分はマリーが作る魔道具だ。容れ物となる建物だけであれば、機密は少なく、仮に漏れてもさほど問題にはならない。それにもし大型ドックを増やすとなった時、手が空いていて貰わなくては困るからね」

「分かりました、そういうことなら問題ないです」


 特定の商会と職人達ばかりに仕事を振っては、利権になってしまうものね。

 それに、大型ドックを増やす、つまり大型船の量産に力を入れることをお父様が視野に入れていることは朗報だわ。


 ただ、街道と港の整備、大型ドックの建設、練習船と本番の大型船の建造と、現状大きな投資が続いていて、投資の回収もまだまだこれからだから、今すぐ次の大型ドックと大型船に着手するのは難しいわよね。

 せめて練習船か本番の大型船が何かしら成果を上げてからじゃないと。


 しかも、懐中時計に投資が決まって、さらに灯台までとなると……さすがにちょっと手を広げすぎかしら?


 いえ、駄目なら駄目って、お父様が止めるはず。


 本当にもう、お父様には感謝しかないわ。

 こんな子供の私の言うことに耳を傾けて、こんなにも莫大な投資をしてくれて。

 だから絶対に計画を成功させて、その期待に報いないとね。



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― 新着の感想 ―
[良い点] パパの親馬鹿極まれりですなあ。まあパパ単独だとスパイスで浪費してしまうからしゃーない。
[一言] レンズの代わりに凹面鏡反射板とかもあるよね。 聖火を点けるためにも使われる由緒正しい方法ですし、野外活動用のコンロもあるくらいに高熱になりますし。 架空兵器ではソーラーレイ(ガンダム)も太陽…
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