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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第二部 備えるは海洋貿易を見据えた内政と貴族政治

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236 皇子ハインリヒはやっぱり退屈

◆◆



 このオレが捜してやってるってのに、どこにいるんだ?


 本当にあいつは生意気な女だ。

 父上と母上に付いて歩きながら、あちこちパーティー会場を見回しても、どこにも姿がない。

 だいたい、そっちから挨拶に来いよな、まったく。


 父上にくっついて挨拶の仕事が終わったら、父上達とは別れてすぐにレオナードの所に行く。

 あいつ、無駄に目立つからな。

 すぐに見つかった。


 あの生意気な女も無駄に目立つから、すぐ見つかると思ったのに。


「レオナード」

「ん? ハインリヒ、どうしたの?」


 レオナードの側になんか偉そうで生意気そうな女がいたけど、まあいいか。

 女の用事なんて後回しだ。

 オレの用事の方がよっぽど大事だからな。


「レオナード、知ってル……あ~……エライ……」


 ああクソ面倒臭いな、オルレアーナ王国語は習い始めたばかりで、まだよく分からないんだよ。


『レオナード、あの生意気な女はどこだ? せっかくオレが話をしてやろうって言うのに、捜してるのに見つからないぞ?』

『生意気な女? 誰のこと?』

『ゼンボルグの赤い髪の生意気な奴だよ』

『ああ。生意気ってことはないと思うけど、ともかくゼンボルグ嬢のことだね』

『そうだよ。どこだ? 来てるんだろう?』

『それが……』

『なんだ?』

『ゼンボルグ公爵家は残念ながら欠席だよ』

『はあ!? なんでだよ?』

『ここではちょっと……』


 後で父上に聞いたら、山賊に襲われて間に合わなかったらしい。

 何やってんだよ山賊相手にって思ったけど、どうやら普通の山賊じゃなくて、どっかの貴族(馬鹿)の差し金だろうってことだった。


 せっかく習ったオルレアーナ王国語を聞かせてやって、格好いいって言わせてやろうって思ってたのに、その馬鹿貴族のせいで全部パァだ。

 絶対オレのこと、見直したはずなのに。


 母上からは、パーティーが終わったら見舞いの手紙を書いてやれって言われた。

 怪我はなかったか、怖くなかったか、心配だ、って。


 父上や母上の前でだって平気にしてたあの生意気な女が、山賊ごときにビビるなんて思えないけど。


 手紙なんて面倒だから嫌だって言ったら、絶好のチャンスだから絶対に書けって怖い顔で言われた。

 本気で怒った母上は怖いからな……仕方なく書いてやるけどさ。


『あの生意気な女がいないなら用はないや。じゃあまたなレオナード』

『え!? あ、うん……』


 なんか国王と王妃が一瞬怖い顔したし、さっさと父上達の所に戻ろう。


 つまんない貴族のつまんない挨拶ばっかされる退屈しのぎに、せっかくこのオレが話をしてやろうと思ってたのに。

 このオレのすごさを見せつけてやるのは、また今度だな。



◆◆



「レオナード」

「ん? ハインリヒ、どうしたの?」


 レオナード殿下と歓談していたら、なんとヴァンブルグ帝国の皇子殿下が近づいて来ましたわ。


 これはいい機会ですわね。

 未来のレオナード殿下の婚約者として、ご挨拶しなくては。


 そう心構えをしましたのに、皇子殿下はわたくしをチラリと一瞥しただけで、声をかけて来ることなく、レオナード殿下と話し込んでしまわれましたわ。


 ちょっと……失礼ではありませんこと?

 ヴァンブルグ帝国では、女性の扱いが悪いとは聞いていましたが、いくら皇子殿下でも、これはさすがにあんまりですわ。

 今、あなたの目の前にいる女性は、未来のレオナード殿下の婚約者、未来の王妃なのですわよ?


 ところが、お二人の会話に、聞き捨てならない言葉が聞こえてしまいましたわ。


『ゼンボルグの赤い髪の――』

『ああ。――ゼンボルグ嬢のこと――』


 ゼンボルグ……つまり、皇子殿下は、あの田舎娘を捜していると?

 何故ですの?


 ヴァンブルグ帝国語はまだ習い始めたばかりで、早口だとほとんど聞き取れないのが悔しいですわ。


 皇子殿下が田舎娘になんの用があるのか分かりませんが、欠席だったことを知らなかったご様子。


 そんな田舎娘のことなど、どうでもいいでしょうに。

 国王陛下も王妃殿下も、一瞬怖い顔をされましたし。


 皇子殿下ががっかりされて会話が途切れたところで、姿勢を改めましたわ。

 いよいよわたくしの紹介とご挨拶ですわね。


 ここは良い印象を抱いて戴かなくては。

 だって将来、王妃としてお付き合いをすることになるのですもの。

 国王陛下と王妃殿下にさらなるアピールチャンスですわ。


『――じゃあまたなレオナード』

『え!? あ、うん……』


 ……え?


 ちょ……ちょっと待って下さいまし!

 なんで行ってしまうんですの!?

 ご挨拶は!?

 わたくしのことは無視ですの!?


 ……なんたる屈辱!


 わたくし、モーペリエン侯爵令嬢ジャクリーヌ・ラ・ド・モーペリエンですのよ!?

 モーペリエン侯爵家はオルレアーナ王国でも有数の大貴族ですのよ!?

 いくらヴァンブルグ帝国の皇族とて、無視していい相手ではありませんのよ!?


 それを……!


 まさか……。

 このわたくしが、ゼンボルグ公爵家の田舎娘ほどの興味も持たれていないとでも言いますの!?


 ……許せませんわ。

 許すまじ、田舎娘ですわ!



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― 新着の感想 ―
最後、田舎娘関係なさすぎて笑った
[一言] はぁ。、王国貴族の馬鹿さ加減はほとほと呆れかえる
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