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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第二部 備えるは海洋貿易を見据えた内政と貴族政治

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213 みんなでケーキ作り

「はっ、そうでしたわ!」

「うん!」

「う、うちも、見たいです」


 お喋りが楽しくて忘れていたみたいだけど、思い出したみたいね。

 思い出してくれたところで、もう一つ提案してみる。


「では、せっかくですから、私達で飾り付けしてみませんか?」

「まあ、わたくし達でケーキを飾り付けるのですか!?」

「なんだか面白そう!」

「や、やってみたい、です!」


 決まりね。

 みんなすごく乗り気だわ。


「エマ、お願い」

「はい、お嬢様」


 エマが厨房へ連絡してくれる。

 程なく、シェフを始め厨房スタッフ達が、ワゴンを押してテラスへとやってきた。


 ワゴンに乗るのは、焼いて半分にカットしたスポンジケーキ、生クリーム、苺、ラズベリー、ブルーベリーなどのフルーツ。

 木製のヘラや金属製の絞り口、内側を防水加工した布製の絞り袋、ハサミ、などの道具類。

 カット用のナイフ、人数分のフォーク、取り皿だ。


 エマにお付き侍女、お付きメイド達を案内して貰った時に頼んだそれらが、無事に運ばれてくる。

 そうして、子供達のテーブル中央にそれらが並べられた。


「良かったらお母様方とお付きの方達もこちらで一緒にご覧になりませんか?」


 声をかけると、お母様が他のお母様達を促して、それぞれ私達の側にやって来た。

 お付き侍女やお付きメイド達も、その後ろに控えて、みんなでテーブルを囲む。


 まず、スポンジケーキの一段目を二枚、私とクリスティーヌ様、ミシュリーヌ様とソフィア様の間に置く。


「生地を作ったり焼いたりするところからだと時間が掛かってしまうので、今回はデコレーションのみですけど、みんなで作っていきましょう」

「ええ」

「うん!」

「は、はい♪」

「まずヘラで生クリームを塗っていきます」


 ボウルに入った生クリームをヘラで掬い取って、スポンジケーキに塗ってお手本を見せる。


「こんな感じです。では、皆様もどうぞ」


 クリスティーヌ様、ミシュリーヌ様、ソフィア様が私の真似をして、生クリームを塗っていく。


 クリスティーヌ様はとにかく万遍なく見栄え良くと真剣に。

 ミシュリーヌ様はとにかくたっぷり分厚く。

 ソフィア様はオドオド慎重に少しずつ。


 生クリームを塗るだけで、みんな個性が出るわね。


 所々、私とシェフがアドバイスしながら形を整えて、一段目は終了。


「では次は、この上にカットしたフルーツを並べましょう」

「あ、間に挟まれていた、フルーツ、ですね?」

「ええ。基本的に好きに並べてしまっていいですけど、カットしたときの断面を意識して並べると、より良いですよ」

「確かに、綺麗に並べて綺麗な見た目にしたいですわね」

「うん、美味しければなんでもいいよ!」


 フルーツを並べるだけでも、やっぱり個性が出るわね。


 クリスティーヌ様はカットした断面が美しく見えるようにと計算しながら。

 ミシュリーヌ様はびっしり並べすぎなくらいに。

 ソフィア様は逆に控え目過ぎるくらいに。


「ほらソフィ、もっとたくさん並べないと美味しくないよ」

「ああっ!?」


 ソフィア様が並べた隙間に、ミシュリーヌ様が山盛り詰めていく、なんて場面も。

 フルーツを並べ終わったら、スポンジケーキの二段目を重ねて、また生クリームをみんなで塗る。


 そして次がいよいよ、絞り口を使ってのデコレーションだ。


「絞り口をこの三角形になった絞り袋に入れて、先端から絞り口が三分の一程出るように、絞り袋の先をハサミでカットして――」


 実演しながら、手順を説明していく。


 絞り袋の先から絞り口の先端が出たら、絞り袋を折り込むようにして少し絞り口の中に押し込める。

 こうすることで、生クリームが隙間から溢れ出さないようにするのがポイントね。


 次は絞り袋の広い方を外側へ折り返すように開いて、ヘラで生クリームを絞り袋の中に詰める。

 手に持ってやりにくい時は、カップなどにセットして詰めるとやりやすいわ。


 余った絞り袋の口は閉じるようにねじって、生クリームが逆流して出てこないようにすれば準備完了。


「絞り袋の絞った方を片手で握って、もう片手は絞り口に添えるように持って、片手で生クリームを絞り出していくように、こう」


 実演して、くるんと小さな花のように、生クリームを飾り付ける。


「わあ!」

「本当にお花のようだわ」

「こ、こんな簡単に……綺麗♪」


 みんな驚いて、でもすごく嬉しそう。

 だから、絞り袋を四人分作ってそれぞれに渡す。


「あ、ミシュリーヌ様、両手で握り締めないように、片手でそっと。両手で握ると生クリームが温まって状態が悪くなりますし、力加減が難しくなりますから」

「うん、分かった!」

「では、みんなで飾り付けていきましょう」

「は、はい♪」

「ええ♪」

「うん!」


 それからみんなで、ああでもないこうでもないと、各自で工夫しながら生クリームで飾り付けていく。


 やっぱりクリスティーヌ様は見栄え重視で、ミシュリーヌ様は山盛り大きく、ソフィア様は逆に控え目に小さく、統一感は全くないけど、楽しく飾られていく。

 そうして最後に、みんなでフルーツを飾り付けて。


「はい、完成です」

「やった♪」

「はぁ……楽しかったぁ♪」

「ふぅ、やりきりましたわ」


 みんな笑顔で大満足ね。

 でも、みんな作るのに夢中で忘れているみたいだけど、これで終わりじゃないわよ。


「では、カットしてみんなで頂きましょうか」

「「えっ!?」」

「あ! そうだった! 食べよう♪」


 はっと思い出して喜んだのはミシュリーヌ様だけ。

 ソフィア様とクリスティーヌ様は、何故か絶望したような顔になる。


「た、食べるの……もったいない、です……」

「そうですわよね。こんなに素敵に作れたんですもの、切ってしまうなんてそんな」


 うん、気持ちはよく分かる。


 私が初めて母と一緒にケーキを作ったのも小学生の時で、もったいなくてなかなかナイフを入れられなかったな。

 ずっと飾って取っておきたかったくらいに。

 なんだか懐かしい。


 ちなみに、『なんのために作ったのよ。早く食べましょう』って、母は情けも容赦もなく目の前で切り分けてくれちゃって、軽くショックだったけど。


「そうだわ! わたくしの指導をして下さっている画家を呼び寄せて、このケーキを絵にして残せば!」


 呼びに行って連れて来てって、一週間以上掛かっちゃいそう。


「ケーキ、傷んじゃいますよ?」

「うぅ……」


 苦笑交じりに指摘したら、クリスティーヌ様が困ったようにまなじりを下げる。

 可愛いなぁ、もう。


「みんなで作ったから、きっともっと美味しいですよ。今度また一緒に作りましょう」


 せっかくだからみんなで食べましょう、って微笑みかけると、葛藤の末、クリスティーヌ様もソフィア様も頷いてくれた。


 納得してくれたところで、エマに頼んでカットして貰う。


 私とクリスティーヌ様が作ったケーキは、私とクリスティーヌ様、そしてお母様とリチィレーン侯爵夫人、両家のお付き侍女、お付きメイド達に。


 ミシュリーヌ様とソフィア様が作ったケーキは、ミシュリーヌ様とソフィア様、ブランローク伯爵夫人とシャルラー伯爵夫人、両家のお付き侍女、お付きメイド達に。


 それぞれ一切れずつ配られた。


「わ、わたし達もよろしいのでしょうか?」


 取り皿を受け取って戸惑うお付き侍女、お付きメイド達に、私は笑顔で頷く。


「お仕えするお嬢様の手作りケーキです。是非、味わって食べて下さいね」


 お付き侍女、お付きメイド達は躊躇うように、それぞれお仕えする夫人とお嬢様に確認する。


「マリエットローズ様がこう(おっしゃ)っておいでです。せっかくのご好意だから頂きなさい」

「うん、食べて食べて!」


 それぞれ、みんな賛成してくれたから、お付き侍女、お付きメイド達は別に用意されたテーブルへ移動して着席する。


「では、頂きましょう」


 こうしてみんなで作って食べたケーキはとっても美味しくて、みんなも嬉しそうに、そして美味しそうに食べてくれた。



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[良い点] 宮□(しかく)浩幸治原作、ケーキの切れない貴族令嬢たち。彼女らが非行少年なんかにならないように、認知機能向上トレーニングを施さにゃあなぁ?
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