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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第二部 備えるは海洋貿易を見据えた内政と貴族政治
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197 おもてなしの準備

 驚くお父様、お母様、セバスチャン、フルールに、満面の笑みを返す。

 側で聞いていたエマもアラベルも目を丸くしていた。


 驚きが収まった後、お父様の目が興味深そうに光る。

 お父様は別に甘い物がそれ程好きと言うわけでもないけど、新しいスイーツと言うところに興味を惹かれたみたい。


 お母様は甘い物が大好きだから、興味津々だ。

 平静を装っているけど、フルールもね。


 一番落ち着いているのは、もう甘い物は胃もたれするらしいセバスチャンかしら。


「それはどんなスイーツなのかしら?」


 早く聞きたそうなお母様に、何を作ろうとしているのかを説明する。


 これまでは、『ゼンボルグ公爵領世界の中心計画』に関係することや物しか提案、開発してこなかった。

 材料を揃えるところから大変だったから、嗜好品のスイーツはどんどん後回しにして、これまで全然作ってこなかったのよね。

 だから、この手の提案をするのは初めてになる。


 もちろん、単に新しいスイーツと言うだけでなくて、計画の一環として、産業促進の狙いもあることを付け加えて。


「……さすがマリーだ」

「ええ、本当にね」


 どうやら理解してくれたみたいね。


「本来であれば、その手の政治向きの話を抜きにして、純粋にお茶会を楽しんで貰いたかったが……」

「まさに一石二鳥。ここまで気を回せるからこそのお嬢様でもありましょう」

「セバスチャンの言う通りだな」


 お父様には苦笑されてしまったけど、止められることはなさそうね。


「分かった、手配しよう。マリーの思うとおりにやってみなさい」

「はい、ありがとうございます!」


 お父様の許可も出たし、後は行動あるのみね。


「試作はママも手伝って欲しいです」

「ええ、もちろんよ。娘と一緒に娘が考えたスイーツを作る。とても楽しみだわ」


 お母様、嬉しそう。

 誘って良かった。


「やはり娘もいいものですね」

「そうよ。娘は最高よ。フルールも二人目をどう?」

「そうですね……夫と相談してみます」


 そうね、それなら。


「フルールも一緒に手伝ってくれると嬉しいわ」


 いつか娘とするスイーツ作りの予行演習で。


「ふふ。ではわたくしもお手伝いさせて戴きます」


 私の意図はバレバレみたいだけど、喜んでくれたからよし。

 それから。


「エマとアラベルにも試作を手伝って貰うけど、二人にはもう一つ手伝って貰いたいことがあるの」

「はい、分かりました」


 さすがエマ。

 内容も聞かず、二つ返事で引き受けてくれたわ。

 頼もしいわね。


「もちろんお手伝いします。それで、それはどのようなことでしょう?」

「新しい魔道具作りよ」

「新しい魔道具ですか!?」


 これにはアラベルだけじゃなく、みんな驚いたみたいね。


「それと、専用の調理器具とか色々ね」


 スイーツ作りに欠かせないあれこれを、この際だから一緒に作ってしまうの。

 新しいスイーツを広めるなら、絶対に数が必要になるもの。


「新しいスイーツのレシピはゼンボルグ公爵家としての武器になると思いますから、専用の調理器具の製造や流通は、ジエンド商会でしたいと思いますけど、いいですか?」


 新しい流通網のおかげで料理店などをジエンド商会で展開しているから、この手の食品関係はジエンド商会に任せてしまってもいいと思う。


「それは願ってもないことだ。後で具体的に説明してくれるかい?」

「はい、もちろんです」


 よし、これでバックアップ態勢も出来上がって、心置きなく開発に着手出来るわ。


 そして翌日、午後から早速離れのお屋敷(マリーの仕事部屋)へ。


「オーバン先生、お手伝い願ってもいいですか?」

「ふむ、察するに、また何か作りたい魔道具でも思い付いたようじゃな」

「はい。オーブンとハンドミキサーです」


 すでに火を使わないで加熱するコンロを作っているから、それを変形して箱形にしてしまえばオーブンになる。

 ウインチで回転機構はすでに作っているから、それを小型化して応用すればハンドミキサーになる。


「なるほど、コンロを変形して今度は調理用の窯を作ろうと言うわけか。しかも回転機構を利用して攪拌用の道具まで。その応用力と発想、さすがマリエットローズ君じゃな。実に素晴らしい」


 オーバン先生としては、乗せて加熱するコンロを変形することで入れて加熱するオーブンにする、全く無関係の工業機械のウインチの回転機構を調理器具のハンドミキサーに応用する、と言う発想が、すごく新鮮で興味深かったみたい。

 ノリノリで手伝ってくれたオーバン先生のおかげで、十日も経たず、あっという間に完成したわ。


 その間にお父様が必要な食材は全て取り寄せてくれていた。


 調理器具も発注して完成させ、すでに納品済み。


 これで試作の準備は万端ね。


 早速母屋のお屋敷のキッチンにオーブンとハンドミキサーを運び込んで、お母様、フルール、エマ、アラベルと一緒に、新しいスイーツの試作をする。


 前世では、就職後は仕事が忙しくてなかなか出来なかったけど、これでも私の趣味は乙女ゲームだけじゃなく、お菓子作りだってしていたんだから。

 その頃をちょっと懐かしく思い出しながら、みんなでわいわい楽しみながら試作品を完成させる。

 もちろんその場で試食会よ。


「すごいわマリー! こんなスイーツ初めてよ!」

「ああ、この口の中でとろけるような新しい食感……お嬢様は天才です!」


 お母様、大歓喜。

 フルールも、しみじみと味わって、感動しているみたい。


「本当に、こんなスイーツは初めてですお嬢様」

「これならお茶会も大成功間違いなしかと」


 エマが感動したのか涙ぐんで、アラベルはあっという間に食べきってしまった。


「みんなにこんなにも喜んで貰えたなら大成功ね」


 後は、完成度を高めるだけ。


 それと他に、ちょっと考えていることもあるから、そっちも試したいわね。

 そっちはおまけ程度だからお茶会に間に合わなくてもいいけど、間に合えばよしで。


「さあ、おもてなしの準備もこれで万端。後は本番当日を待つばかりね」



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― 新着の感想 ―
ヨーロッパっぽい世界観でパンを主食にしているなら薪を使うオーブンは当然元から存在していると思うので、元々国王の住居だった宮殿なら普通にキッチンに備わってそうですが、魔道具として作る必要はあったのでしょ…
[一言] 一番落ち着いているのは、もう甘い物は胃もたれするらしいセバスチャンかしら。 わかりみが過ぎて涙で続きが読めない(TдT)
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