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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第二部 備えるは海洋貿易を見据えた内政と貴族政治
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181 お仕事再開!

 帆船とは全く関係ないけど、新しい魔道具の開発に取りかかる。


 久々の本格的な魔道具開発だから、やる気が漲ってくるわ。

 王都では頭で考えて書類にまとめるだけで、それ以上のことが出来なくてもどかしかったんだもの。


 と言うわけで。

 テンション高めで、今回作る魔道具の書類だけを抜き出す。


「優先して作るのは、スチーム美顔器と馬車用の空調機関係です」

「ふむ、それぞれの詳細は後にするとして、この回転式と振動式の洗顔器は後回しにするんじゃな?」

「はい。それはどちらも素材を集めて選定するのに、予想以上に時間が掛かってしまいそうなので、手っ取り早く作れそうな物から作っていこうと思います」


 美容の魔道具の情報はすでに出回っていて、試作品があることになっている。

 しかも開発しているのはオーバン先生と言うことになっているから、私やお父様が王都に滞在中でも開発が進んでいないと不審に思われる。

 それなのに、開発に時間が掛かっていつまでも市場に投入出来ないままだと、変に勘ぐられたり、評判を落としたりすることにもなりかねない。

 ご夫人、ご令嬢達に、まだかまだかとせっつかれるのも怖いしね。


 だから、手っ取り早く作れそうなスチーム美顔器を、洗顔器に先行して作ることにしたの。


 もちろん、お父様とお母様には説明済み。

 さらに、お父様とお母様が夜会やお茶会などで、詳細を伏せたまま広めた情報と大きな齟齬がないことを確認した上で、了解を貰っているわ。


 そういうわけで、一応簡単に洗顔器の説明をする。

 特にその構造や素材の問題点などをだ。


「ふむ……」

「確かにクリアすべき問題は多そうだ」

「うん、すぐに完成とはいかなそうだ。ただ……」


 予想していたとおり、オーバン先生を始め、みんなの反応は鈍い。


 なんで顔を洗う魔道具が必要なのか、女性の考えることは分からない。

 そう言いたげだ。


「なのでこの二つは、出来れば女性の魔道具師や女性の職人を集めて、美容の魔道具の開発チームを作りたいと考えています」

「なるほどのう」

「女にまともな魔道具を作れるのか……と思っちまうが、お嬢様の例があるからな」

「お嬢様はかなり特殊な例だとしても、中にはいるんだろうな、職人気質で物作りに向いている女も」


 ちょっと引っかかる言い方だけど、それも時代背景を考えれば仕方ないわよね。

 女性の社会進出は歓迎されていない世の中だし。


 でも私の存在のおかげで、女性が魔道具師や職人として働くことに忌避感を示したり反対を唱えたりする人はいないみたい。

 いいことだわ。


「現在、候補となる女性の職人などを選定中です。なので、もしみなさんの家族や知り合いで、魔道具開発に興味があり、ある程度の適正や実力を備えていてやる気がある人がいたら紹介して下さい」


 もちろん、紹介されたからって、そのまま即採用とはならないけど。

 興味ややる気はあっても、魔法文字を覚えられないとか、致命的に不器用とか、壊滅的にセンスがないとか、そうなると、さすがに即戦力として採用するわけにはいかないもの。


 もし本当にやる気があるなら、後日、職業訓練学校が出来たとき、そこで学んで実力を付けてから改めて応募して欲しい。


 その話はそこまでにして説明に戻り、次は馬車用の空調機と暖房について説明する。


 これは既存の空調機の流用でいいから、そう難しい話じゃない。

 意義と有用性さえ伝われば、すぐに賛同を得られた。


 後は、サスペンションを外注して、そちらの開発と合わせて具体的に馬車をどう改良していくかだけね。


 問題は、スチーム美顔器の方かしら。


「これは温かな蒸気を噴き出して顔に当てる魔道具です」


 と言っても、単に湯気を作って当てる、と言う単純な物じゃない。


「熱と振動で蒸気の粒を細かくすることで、単に沸かしたお湯やお風呂の湯気を当てる以上の効果を引き出します」


 温かな蒸気のおかげで顔の毛穴が開いて、毛穴の奥の汚れを落としやすくなり、またメイクも落としやすくなる。

 同時に、化粧水やスキンケア用品がより浸透して高い効果を見込めるわ。

 加えて、肌に潤いを与える効果やリラックス効果もある。


 ただし、肌に潤いを与えるのは蒸気を当てている間だけ。

 その潤いは長続きしない。

 謂わば風呂上がりと同じ状態だから、風呂上がりのスキンケアと同様、肌に浸透した水分が逃げないようにケアしてあげないと、逆に肌が余計に乾燥してしまうことになる。


 つまり、無闇矢鱈と蒸気を浴びればいいと言うわけではない、と言うことね。


「――と言ったケアが必要になりますが、一定の効果が見込めます。サイズも卓上に置けて、持ち運び出来るサイズと重量になるので、わざわざ手間をかけてお風呂に入らなくても、手軽に使えると言う利点があります」


 説明は終わったけど、やっぱり空気は微妙。


「女性というのは、そこまでせんといかんのか……?」

「しないといけないんです」

「それだと、バスユニットと高級給湯器セットの存在意義を奪うのでは?」

「それはそれ、これはこれです」

「それはそれ、これはこれ……」

「それに、スチーム美顔器はお手軽に顔だけ、お風呂はじっくり全身をと、使い分けられるので平気です」

「そういうもの……なのか?」


 やっぱり男の職人達では、ピンとこないみたいね。


 でも、可能な限り早く作って貰う必要があるから、女性の魔道具師や職人の開発チーム結成を待てないし、お願いするしかないのよ。

 二つの洗顔器と比べたらスチーム美顔器はこだわる部分が少ないから、それでもきっとなんとかなるはず。


「お母様に話は通してありますし、お母様からの要望で、高級モデル、通常モデル、簡易モデルの三つのモデルを作ります。外観もそうですけど、性能にも差を付けるので、よろしくお願いします」


 その後、スチーム美顔器チームと馬車用空調機チームの二つに分けて、早速作業に入って貰う。


 馬車用空調機の方に希望者が偏ったのは……仕方ないけど。

 それでも、馬車用空調機は既存の魔道具の改良で、スチーム美顔器は熱と振動で蒸気を生み出す機能や、その蒸気を適切に噴き出す機能や構造が新技術だから、と説得することで人数を集めたけどね。


 ともかく、新しい魔道具開発スタートよ!



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