表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/107

愛されたがりの狂人

三名もの王族が刺されるという凄惨な事件を引き起こしたのは、同じく王族である三姉妹の次女ローラ。


それを聞いた時、アロナはなにかの間違いではないのかと、何度も確認した。エルエベの腰巾着だったローラがまさかこんなことをしでかすなど、にわかには信じられない。


全ての元凶は、ルーファスだった。


彼は愛されたがりだった。優しく、愚かで、流されやすい。


――僕は君を、心から愛してる。


濁った瞳でアロナに告げたあの言葉に、きっと嘘はなかったのだろう。ルーファスは、アロナがアストフォビアへ去ってしまったことをきっかけに、彼女への愛を貫くと決めたらしい。


けれどもう、なにもかもが遅過ぎた。


アロナとルーファスは、男女の親密な関係にない。ククルともそうだろう。


では、ローラとはどうだったのか。彼女が一方的にルーファスを愛していたのか、それとも彼が思わせぶりな態度を取っていたのか。その真相は、今や本人の死とともに消えた。


確実なのは、エルエベとルーファスには“それ”があったということだ。彼女はその体に、ルーファスとの結晶を宿していた。


我がイギルキアでは、近親婚は禁忌にも近い。昔ほどではないにしろ、婚約者のいる身でありながら従姉妹と関係を持ち、あまつさえ身篭らせてしまうなどあってはならないこと。それを重々承知しているエルエベは、ルーファスの立場を慮り表沙汰にしようとはしなかった。


しかしルーファスが変わってしまったことにより、彼女の心情もまた変化した。彼が「これからはアロナただ一人を愛する」と、エルエベに宣言してしまった。


それを聞いたエルエベは絶望し、ルーファスを道連れにしようとお腹に子を宿していることを公表した。


そしてエルエベの事実を知ったローラは嫉妬に狂い、死を以てそれを知らしめようと決めた。


そしてククルは悲惨にも、それに巻き込まれてしまった。以前アロナが「ルーファスに相談相手を」と頼んだカリーナ嬢が、精神を病み学園を去ってしまったらしく、ルーファスならば事情を知っているのではと、たまたま彼の元を訪れていたらしい、


侍女の話によれば、ククルは自らローラの前に飛び出し、ルーファスを庇ったのだという。なぜそんなことをしたのか、その真相も本人以外には分からない。


ククルを刺してなお、ローラはルーファスを刺した。そしてエルエベとお腹の子までをも手にかけ、最期は自死を選んだ。


――来世こそは、ルーファス様と。


己の喉元に短剣を突き刺す直前、彼女は涙を流しながらそう叫んでいたのだという。


この登場人物の全てが、ただ愛を求めていた。


ルーファスという傲慢な優しさを持った、狂った男に愛されたかった。願いはそれだけだった。


この話を聞いた時、アロナはすぐに思った。自分が”こう”ならなかったとは言い切れない、と。


あのままルーファスを愛し続け、何度も何度も殺されていたならば。いつか精神は崩壊し、三姉妹を手にかけていたかもしれない。


フルバート家の公爵令嬢ではなく、ただ一人のアロナとして自分を扱ってくれたルーファスのことが、本当に好きだった。彼さえいれば、他にはなにもいらなかった。


愛とは所詮、エゴでしかない。愛したならば、その分愛を返されたいと思ってしまう。


純粋な想いほど、歪んだ瞬間取り返しのつかないことになるのだろうと、アロナは自身の胸にゆっくりと手を当てた。


(まさか、こんな結末を迎えるなんて)


愛とは美しく、そしてとても恐ろしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ