恐怖のお茶会
ルーファスの父であり現国王、アーサー・ダオ・アルフォンソ陛下は、一年後に第一王子エドヴァンス殿下に王位を譲ると宣言している。
エドヴァンス殿下が戴冠式の後国王として即位すれば、ルーファスは爵位を賜り、私達は正式に婚儀をあげることが出来るのだ。
彼の妻となればアロナの身は王室に守られることとなり、あの三姉妹も迂闊に手を出すことは出来なくなるだろう。
(あともう少しの辛抱よ、アロナ)
ルーファスの為、自身の為、彼女はただひたすらに警戒し続けた。社交界にほとんど顔を出さなかったアロナは、当然周囲から浮いた。
何を贈られてもまず疑ってかかることからはじまる彼女の態度は、印象も悪く可愛げのない令嬢として陰で囁かれた。
それでもアロナは、ひたすらに耐え続けたのだ。いつか訪れる、ルーファスとの甘い幸せな生活を夢見て。
♢♢♢
確かにアロナの態度は、ルーファスの目には愛など感じられない、自分をただの政略結婚の相手としか見ていないように映っていたかもしれない。それでも彼女は、生き残ろうと必死だった。
厳しい妃教育も文句ひとつ言わずにこなし、両親からの躾という名の理不尽な仕打ちにも耐えた。そのおかげか国王や王妃からいたく気に入られ、王宮へ招かれることも多々あった。
その日アロナは、離宮にて王妃主催のアフタヌーンティーに招待されていた。
この為にあつらえた、落ち着いたキャラメル色のドレスは細やかな金の刺繍が施され、ともすればキツく見られがちなアロナの美貌を、柔らかなものに見せていた。
群青色の髪は優美に纏められ、同じ色の瞳は自信に満ち溢れている。彼女は扇子で口元を隠しながら、完璧な所作でアフタヌーンティーへと参加した。
「アロナ嬢はいつも非の打ち所がないわ。エルエベ達にも見習ってほしいものね。口ばかりよく動いて、努力というものをしないのだから」
「エルエベ様もローラ様もククル様も、それぞれ何ものにも代え難い魅力をお持ちです」
「まぁ。お上手なんだから」
王妹にあたるモルティーナが、私に向かって柔かな笑みを浮かべる。そしてすぐに、自身の娘達に厳しい視線を送った。アロナからすれば、この三姉妹は甘やかされている。このくらいのことを言われたからといって、自分を恨まないでほしいと。
「本当に、アロナ嬢は素晴らしいわ」
「ええ。ルーファスの婚約者に相応しいわ。ねえ、ククル?」
「…そうね」
三女のククルだけが、思いきり不満気な表情で答える。姉二人が、諌めるような眼差しで彼女を見つめていた。
ーー今は我慢しなさい。いずれこの女は私達の手で必ず殺してあげるから
(心の声が手に取るように分かるわ)
表面上は澄ました顔で繕いながらも、内心はいつ殺されるのだろうかという恐怖でがたがたと震えていた。
それでもアロナは、愛するルーファスをこの姉妹に取られたくない一心で必死に社交的に振る舞ったのだった。




