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果たして、思惑通りか否か

怒涛の一日を終え、アロナはゆったりと瞼を閉じていた。


エイミと遊ぼうと思っていたアロナは、なぜか一日彼女に加え他三人からもなにかと絡まれた。マルマからは常に敵意がビシビシと飛んでくるし、カーニャはなにかにつけ匂いを嗅いでくるし、アビゲイルには気を遣う。


表情にこそ出さないものの、流石のアロナも疲労困憊だった。


エイミがクローゼットに帰ってから、ラーラはようやく主人の世話をすることができる。


ここアストフォビアでは貴重な入浴を堪能したアロナは、現在ラーラによって丁寧に髪を梳かされている。身体の芯まで温まった彼女は、心地よさに身を任せていた。


朝、クローゼットの少女・エイミから名付けを許されたアロナは、その存在をより一層可愛らしいと感じるようになった。


感情表現が乏しく、表情の変化もほとんどなければ口数も少ない。そんなエイミと接していると、要所要所でなぜだかククルを思い出してしまう。性分は、きっと正反対であるのに。


(きっと私、彼女に会えなくて寂しいのね)


王立学園に通っていても、ククルはアロナの元へ足繁く通っていた。くれぐれもエルエベ達には秘密にするようにと言ったアロナの言葉に首を傾げながらも、ククルは素直にそれを守っている。


彼女に仕えている信頼のおける侍女達以外は、ククルは“サマンサ・モンテベルダ”という令嬢ととても仲がいいと思っているはずだ。


それは、アロナが考えた偽名である。


ククルはアロナがアルベールに近づくことに反対していたが、なんだかんだと言いつつも力を貸してくれた。


アロナが“ルーファスの相談役”として名を上げたカリーナ嬢にも、ククルが上手くコンタクトを取り近づけてくれた。


あとは彼が彼女に夢中になってくれれば言うことはないのだが、出立前のあの様子だとそう簡単にことは運ばなそうだ。


ーー愛してる


(とてもそうは見えなかった)


ルーファスは嘘が得意ではないと、アロナはずっとそう思っていた。けれどとんだ勘違いで、もしかすると彼は息を吐くように嘘を紡げる人間なのかもしれないと、彼女は考える。


それに、もう一つ気がかりなこともある。それはエルエベ達だった。第二王女であるローラに関しては、彼女はエルエベの腰巾着である。本人の意思はそこまで強くないし、一人で動くことは不得手だ。


警戒すべきは、第一王女であるエルエベただ一人。ククルについてはなぜだか仲良くなってしまったために、もう注視する必要がなくなった。


ここまでアロナは、エルエベには慎重に接してきた。その努力が実ったのだと考えても良いのだが、いかんせん静か過ぎると少し怖い。


(偽名を使う必要がなかったと思うくらい、エルエベが関わってこないわ)


アロナ殺害に積極的だったのはククルであり、あくまでエルエベはそれを利用しただけ。比較対象であるアロナが目障りだったことは事実だろうが、今の人生でアロナは王室に最低限しか関与していない。


だから彼女の脅威にはならず、取るに足らない存在として認識されたのだろうか。


(戻ったらさり気なくエルエベの様子を見てほしいと、ククルに頼んでみようかしら)


彼女には、底知れないなにかがある。考え過ぎであるならばそれに越したことはないと、アロナは内心溜息を吐いた。


コンコン


「あら。こんな時間に誰でしょう」


ラーラが扉に近寄り、確認する。


「遅くに申し訳ありません、フルバート嬢。あなたの時間を少しだけいただきたいのですが、お許しいただけますか?」


扉の隙間から顔を覗かせたアルベールは、朝と変わらない輝きを放っている。


(胡散臭い笑顔だわ)


疲れが溜まっていたアロナには、そんな感想しか浮かばなかった。

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