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男よりも

(この子達は、ロファンソン卿の将来の妻候補なのかしら)


そんな考えは、実にしっくり来ない。アビゲイルを除き、三人とも貴族の娘には見えない。馬鹿にしているわけではなく、客観的な事実はそうだ。


この国には正式な側室制度はないが、裏で女を囲っている高位貴族など特段珍しくもない。こと近親婚については拒否反応が凄いが、それ以外であれば結局は地位が全て。


アロナの父親は愛人を作るなどという、非生産的で自身に弱みを作るようなことはしない。あの人は我が家を独立国家にし、自身をそこに君臨する王かなにかと勘違いしているのだと、彼女は思う。


(あまり好き勝手していると、いよいよ勘当か他国に身売りでも強要されそうだわ)


別に結婚の相手がルーファス以外であれば誰でも構わないのだが、父親のような暴君はできれば避けたい。歳を重ねた貴族であればあるほどに女性軽視の思想は根強く、死んだように生きている女性達も多いのだ。


自身の未来について、アロナは具体的なことを思い描けていない。


たった一つ、ルーファスだけはありえないという点以外は。


「ロナ?」

「ああ、ごめんなさい。少しぼうっとしていたわ」


こちらを覗き込むエイミに、アロナは柔らかく微笑む。触れるか触れないかの距離で彼女の頭に手を伸ばせば、エイミはじっとアロナに身を任せた。


「もしかすると」


アビゲイルが、そんな台詞を皮切りに話しはじめる。


「アロナ様であれば、なんとかしてくださるかもしれないわ」

「流石にそれは無理だろう。アルでさえ出来なかったことなんだし」

「わたしは嫌よ!アルにはわたし達以外いらないんだから!」

「わたし以外、だろ?マルマは」


カーニャが呆れ声を出し、マルマはばたばたと手足をばたつかせて主張する。


「どうせ今までとおんなじなんだから!」

「だけどアロナ様のように、私達を見ても動揺しない令嬢は初めてだわ」

「それは…っ、隠してるだけよ!アルに好かれたいからって、卑怯なことしてるんだわ!本当は今すぐにでもアルを独り占めしたいくせに!」


マルマはどうしてもアロナが…いや、アルベールに近づく令嬢が気に入らないらしい。


かつては自分もこうだったのだろうかと、アロナは一瞬妙な感傷に浸った。


「それがありえないことは、この子が証明してくれているわ。ええっと…エイミという名をいただいたのかしら?」


アビゲイルの問いに、エイミはこくんと頷く。


「素敵な名前ね。アロナ様はセンスがいいわ」

「ありがとうございます、アビゲイル」

「ともかく、このエイミが打算と欲まみれの令嬢に懐くなんてありえないことなのよ。それに、私達もね」


アビゲイルは、少女達のまとめ役のようなものなのか。マルマのような独占欲は感じられないが、なにかしらの思惑は持っていそうだとアロナは思う。


「あたしも、もっとアロナと話したい!なぁ、いいだろう?」


カーニャが言うと、アロナは頷く。


「カーニャまでなによ!この裏切りもの!」


マルマは、再びぷくうっと頬を膨らませた。そんな彼女を、アビゲイルが穏やかに諭す。


「あなたも理解しているでしょう?このままでは全てが大変なことになると」

「それは…むう…っ」

「アロナ様という稀有な存在がこのタイミングでやってきたことは、きっと運命なの」


アロナは、彼女達の発言の半分も理解できていない。故に知りたいと思う。


(いけない、ロファンソン卿のことがどうでもよくなってきちゃったわ)


自身が好奇心旺盛だったのだと、アロナはこの日初めて自覚した。

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