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朝から楽しそうなことで

「まったく、失礼な方ですね!」

「やめなさいラーラ。誰に聞かれているか分からないのだから」

「お嬢様は寛大すぎます!」


アロナはつつがなく朝食を終え、自室へと戻る。道中ラーラは、終始息巻いていた。


「ロファンソン様はお忙しい方だろうから、こんなことでいちいち腹を立てていても仕方ないわ」

「昨日はクローゼットから少女が出てきたって言うのに、ロクな謝罪もなかったのですよ?お嬢様でなければとっくにここを出ていますよ!」

「むしろあの方にとってはそうなる方が好都合なのでしょう」


昨夜夕食を共にしたことで、アルベールがどういう人物であるのか、若干ではあるが理解したアロナ。


(注視すべきは使用人が彼に向ける視線よ)


城の主人として、万が一にも使用人に舐められることがあってはならない。かといって恐怖による抑止は反感を買い、ひいては領民達からの信頼を失う引き金にもなりかねない。


そういった意味で、アロナから見たアルベールと使用人達の関係はすこぶる理想的だった。我がフルバート家とは大違いだと、彼女は素直に感心した。


きっとアルベールは、人心掌握に長けているのだろう。尤も、結婚目当てで自身に近づいてくる令嬢達を除いて、の話だが。


まだ、滞在二日目。あと何日かの間に、アルベールに契約の提案ができるくらいの材料はほしいと思うアロナだった。





「アル、もう行くのか?」

「お仕事なんてやめて私と遊びましょう、アル!」

「僕もそうしたいのはやまやまなんだよ、可愛いお姫様達」


部屋へ戻る道すがら、そんな光景を目の当たりにしたアロナとラーラは、思わずピタリと足を止める。


“のっぴきならないご事情”により朝食は共にできないというクロッケンの気遣いの嘘は、まんまと真実が露見してしまった。


(可哀想に)


アロナはちらりとラーラに視線を向ける。まるで鬼のような形相で睨んでいる彼女の肩を指でつつき、ふるふると首を左右に振った。


自分を思うあまり、ラーラが不敬として処罰されてはいけないと彼女は思う。


アルベールはアロナ達に気が付いていない様子で、三人の少女たちと仲睦まじく会話をしていた。


どうやら彼は仕事へ出かけるのを、彼女らに引き止められているようだとアロナは察する。アルベールが柔らかく微笑み、順に頭を撫でていた。


「おや」


アロナがあまりにも長くその光景を見つめていたせいで、アルベールが気づいた。彼は先程とは違い、仮面を貼り付けたような笑みを浮かべアロナに近づく。


「これはこれは、フルバート嬢ではありませんか」

「おはようございます、ロファンソン様。とても寝心地の良いベッドで、素敵な夢を見ることができました」

「それはよかった。朝食の件での失礼を、どうかお許しください」


互いに腹の内の見えない、ぞわぞわとした会話。それを真芯から破ったのは、三人の少女だった。

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