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予期せぬ事態

――それから、アロナとククルの関係は目に見えて変わった。エルエベ達の手前表立って一緒にいることは出来ないが、アロナはことあるごとに手紙やプレゼントを彼女に送った。


“親愛なるククル様へ


サマンサ・モンテベルダ”


アロナは偽名を使い、姉達の目をかいくぐった。ククルが告げ口をしない確率は五割だと思っていたアロナだったが、どうやら彼女は秘密にしているようだった。


それは自身の利益の為というのももちろんあるだろうが、それだけではないように思う。


というのも、最初は来なかった返事が少しずつ返ってくるようになったからだ。


ぎこちなかった定型文が、回数を重ねるごとに砕けた文章に変わっていく。


そうして三年が経つ頃には、ククルはすっかりアロナに心を許していたのだ。


アロナが十三歳、ククルが十一歳。三姉妹全員が、ルーファスと同じ王立学園へ通っている。


それでもククルは、時間を見つけては“サマンサ”に会いにわざわざ馬車を走らせやってきた。


「私、あそこの人達とは合わない。何かにつけてお姉様達を褒め称えるんですもの、嫌になっちゃう」

「ククルの素直さが羨ましいのよ」

「そうかしら。みんな私が三女だからって、馬鹿にしているんだわ」


長い長い溜息を吐くククルを見て、アロナは柔らかく微笑む。春の花が咲き乱れる温室にて、二人はアフタヌーンティーを楽しんでいた。


「ねぇ、これおいしいわ」

「でしょう?あなたが好きそうだと思ったわ。甘さ控えめで、香りが引き立つ茶葉なんですって。イギルキアでは採れない貴重なものなの」


アロナはたまに、自分でも首を傾げてしまう。


(どうして私、この子と仲良くしているのかしら)


最初は利用するつもりで近づいたのに、予想以上に懐かれてしまった。ククルは彼女が思っていた以上に単純で、そして素直だった。


やはりククルは、姉達から虐げられていた。エルエベとローラは、さもククルを可愛がるような素振りをして、腹の底では馬鹿にして笑っていたのだ。


ルーファスのことに関しても、彼女達は表面上は協力の姿勢を見せている。けれどアロナからしてみれば、それは本心には見えなかった。


ことエルエベにおいては、必要以上にククルの嫉妬心を煽り自身にとって邪魔なアロナという存在を排除するよう、洗脳していたようだ。


三度目までは確かにアロナはルーファスに執着していたので、余計にククルにとっては忌むべき存在となったのだろう。


だが、今回は全く違う。まずアロナはルーファスを必要としていない。公式な場以外ではほとんど会っていないのだから、ククルが嫉妬する原因は単に婚約者ということだけ。


それもアロナは、自身は望んでいないと早々に彼女に対し宣言した。最初は半信半疑だっただろうが、アロナの言動と行動はぴたりと一致していた。


ルーファスに会う時は、なるべくククルを呼ぶよう努めた。そしてそこで、アロナは常に彼女を褒めた。あくまでさり気なく、自然に見えるように。


こうしたアロナの行動は、まだ幼かったククルの心を掴むには十分過ぎた。


その結果、彼女は実の姉よりもずっとアロナのことを信用し、なんでも相談するようになったのだ。

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