新たな関係
アロナはククルの手を取り、その目を見つめる。群青色の神秘的な瞳から、ククルはしばらくの間目を逸らすことができなかった。
「このことは、ククル様だからこそお話ししたこと。どうか、内密にお願いいたします」
「だけど私は…っ」
「今は信用できないかもしれませんが、結論を出すのはもう少し私の行動を見てからでも遅くはないでしょう。あなたはたった今、私の弱みを握ったのですから」
ククルは信じられなかった。今までずっと嫌な態度しか取ってこなかった自分に、こんな重大なことを打ち明けるアロナが。
それほど真剣であり、本当にルーファスのことはなんとも思っていないのかもしれない。
酷い両親から離れたくて、アロナも必死にもがいているのかもしれない。
彼女の言う通り、敵ではないのかも。
ククルの思考が、手に取るように分かる。彼女の懐柔はやはり簡単だったと、アロナは思った。
「そろそろ戻りましょうか。エルエベ様達もククル様を待っているでしょうから」
「…待っているかしら」
ぽつりと呟いたククルを見て、アロナは違和感を覚える。
(もしかしてククルは、エルエベ達に虐げられているのかしら)
三度経験した人生の中では、特段そんな風に感じることはなかった。だがもしもそういった事態が本当に起こっているのであれば、さらに事態を操ることは容易となる。
(私が敵だと思っていたものは、所詮この程度だったのね)
ククルも愚かだが、それと同じくらい自分も愚かだったとアロナは思う。三度も同じことを繰り返して、四度目にやっと気づけるなんて。
ルーファスに対する恋心は、アロナの世界を恐ろしく狭めていた。もはや愛というよりも執着に近く、彼女の中で勝手にルーファスを神格化していた節もあった。
両親には逆らえず、心を許せる友もいない。エルエベ達からは絶えず攻撃され、周囲の重圧にも黙って耐える日々。そんな中で、唯一ルーファスだけが希望の光だと思っていた。
(だけど違ったわ。私のことは、私が守らなければならなかったのよ)
結局頼りだった己を、アロナは省みそして反省した。今度こそは、この手で運命を変えてみせると。
ガーデンテラスに戻った二人は、周囲から見ればいつもと変わらぬ関係性に見えただろう。アロナがルーファスのことでククルに苦言を呈したか、ククルがアロナに対し嫌味をぶつけたのだと。
しかし実際は、そのどれもが間違っていた。
アロナとククルの間には、四度目にして初めて生まれた関係性だった。
(これからも上手くやるのよ、アロナ)
ちらりとこちらに視線をやったククルに対し、アロナは柔らかな表情を返す。ぷいっとそっぽを向かれたが、彼女の頬がほんのりと紅く染まっていることに、アロナはちゃんと気付いていた。




