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アロナの策略

ルーファスに見切りをつけたアロナだったが、表面上は良好な関係に見せなければ、両親が黙っていない。


以前のように行き過ぎた躾を回避できているのは、ひとえに「王子の婚約者」という盾を掲げているからだ。


――今後一度でも手をあげれば、それをルーファスに告げる。


この脅しが、アロナを両親の折檻から守っていた。


(その為にあんな嘘まで吐いたのよ)


お人好しのルーファスは、アロナが男性の苦手な性分であると思っている。だから無理に誘うことはしないし、手紙のやり取りのみでも気分を害することはない。


ルーファスに割く時間を、アロナは自身の為に使った。両親は彼女が多少好き勝手しようとも、口は出しても手までは出せない。


いくら小言を言われようとも、アロナには右から左だった。適当に相槌を打つだけで、従う気は全くない。以前と変わらず、大切なことはリュート夫人の教えを乞うた。


付き合うべき貴族、警戒するべき人物、社交界での有力者。その全てを、アロナは三度の人生ですっかり掌握していた。


多少のズレはあるかもしれないが、大きく変わってはいないだろう。


そしてもう一つ大切なこと。それはこの人生でも、王妃であるシャロンから気に入られることだった。


アロナは、ルーファスの元には行かずとも王宮には足繁く通っていた。


王妃についての知識も、充分に持っている。彼女の懐に入ることは、アロナにとっては簡単なことだった。


シャロンは、ルーファスをあまり可愛がっていなかったことを、アロナは知っている。第一、第二王子とも出来がよく、優柔不断で王族らしからぬルーファスは期待されていなかった。


アロナにとってはそんなところが良かったのだが、今となってはどうでも良いことだ。


(上手く同情を買えるよう、少しずつ誘導しましょう)


アロナは幼少期から、資質だけでいうならばルーファスよりも上の兄達の妃として相応しいと言われていた。しかし母であるグロウリアの生家の状況があまり芳しくなかった為に、他の高位貴族の令嬢がその座に収まった。


それでもみすみす手放すのは惜しいと、ルーファスの婚約者として選ばれたのだ。


シャロンには娘がおらず、エルエベ達よりもアロナの方に目をかけていた。それは今の彼女にとっては、非常に都合が良い。


以前のように、ただ義理の母に気に入られたいというのではない。この先の未来を見据えているのだ。


“円満な婚約破棄”という、未来を。

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