↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。  作者: 清澄 セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/107

アロナの願い

ドンッ!


突然、アロナは背後から思いきり突き飛ばされる。力の抜けた体は、為す術もなく床へと倒れ込んだ。


「惨めな姿ね、アロナ・フルバート。ずっと私を馬鹿にして、さぞ気分がよかったでしょう」

「……」


自身を見下ろし、三日月のように目を細めるククルを見ても、アロナは何も感じなかった。ただルーファスに裏切られたことだけが、彼女の頭にこびりついている。


幼い頃から今までずっと心の中で丁寧に綴ってきた彼への恋文は、目の前でびりびりに破かれてしまった。


アロナの心の拠り所は、ルーファスただ一人だけ。彼が傍にいない世界など、アロナにはなんの価値もない。このまま生きられたとしても、それは無意味だ。


「ちょうどいいわ。今ここで済ませてしまいましょうか」


優雅な仕草で口元を覆いながら、エルエベが言う。


「ほら、早くなさい!あなたがやらなければ、困るのはあなたの家族なんだから!」

「…っ」

「エルエベ、ククル。ここでというのは流石に…」

「あら、どうしたのルーファス。まさかこの期に及んで、怖気付いてしまったのかしら」


ククルの表情が、みるみるうちに歪んでいく。その大きな瞳からは、ぽろぽろと涙が溢れていた。


「酷いわルーファス…私のことが一番大切だって言ってくれたのは、嘘だったの?」

「ククル…」

「このままでは、いつか私はアロナに殺されてしまうわ!嫉妬に狂った醜い女に!」


さめざめと泣くククルの肩に、エルエベがそっと手を掛ける。彼女は聖母のごとき眼差しで、優しくルーファスを見つめた。


「ルーファス、私達だって心が痛いわ。だけど仕方ないの。言ったでしょう?これはアロナの救済でもあるのだからと」


アロナは虚な目でルーファスを見つめる。再びふいと逸らされた視線が、全てを物語っていた。


「はぁ…っ、はぁ……っ」


メイドの荒い呼吸が、段々とアロナに近付いてくる。それがすぐ耳元で聞こえたと同時に、短刀が彼女の心臓を貫いた。


「…カハ……ッ」


声を出すことができない。まるで火で炙られたかのように、刺されたところが熱くて堪らない。大きく咳き込んだ瞬間に、びちゃびちゃと音を立てて床に吐血した。


(ルーファス…)


愛していた、心から。そうでなければ、二度殺されてもなお彼の傍にいたいなどとは思わない。


アロナは惨めに頬を床に擦りつける。その冷たさが、やけに心地良く感じた。


「さようなら、アロナ」


それは一体、誰の台詞だったのだろうか。アロナの意識は混濁し、もうほとんど何も考えられなくなっていた。焼け千切れるような痛みも、段々と感じなくなっていく。


ふわふわとする頭の中でたった一つ、アロナは神に祈った。


三度目はどうか、このまま死ぬことができますように、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。