~第7夜~「家庭で使う魔法道具(その2)」「完全な理想郷」「異世界同士の交流」
さて。昨夜の続きとまいりましょうか。
確か、魔法が一般人に開放されて「家庭用魔法器具(略して家法具)」が普及したところまででしたよね?
これから、世界は一体どうなっていくのでしょうか?
それを見ていきましょう。
もちろん、魔法は戦争にも生かされています。魔力で動く武器や兵器も数多く開発されました。
家法具や魔法兵器は、どのような仕組みで動いているのでしょうか?
実は、そのほとんどは「魔法石」からエネルギーを生み出しているのです。けれども、魔法石の採掘にも限りがあります。また、別の問題も発生していました。
ある会議場で、政治家たちが集まって議論をしています。
「だから一般人に魔法を解放するのは嫌だったんだ!結局、資源が足りなくなったではないか!」
「でも、しょうがないでしょ。そうでもしないと暴動が起きていたんだから。一部の特権階級が魔法技術を独占するような時代は終わりを告げたのよ」
「現実は現実として受け入れねば。過ぎたことを言っても仕方がない。目の前の問題にどう対処するか?それが重要だ」などといった議論が交わされています。
その上、最近では公害問題も見過ごせなくなってきていました。
「使用済みの『魔法石のカス』が環境に悪影響を与えていると言うではないか」
「そんなのは、環境擁護派のでっち上げたデマよ!デマ!」
「しかし、世界各地で実害が出ているという報告が後を絶たない。さすがに、見過ごせない事態になってきているのでは?」
「最近は、太陽の光から魔法エネルギーを生み出す方法も開発されつつあるが、まだまだ効率が悪い。絶対的にエネルギー量が足りない」と、ある軍人が口を挟みます。
この軍人、なんにでも「絶対的に」と頭につけるのが口癖でした。
「魔法石の使用は最低限に抑えて、昔ながらの生活に戻りましょう」
「そんな!今さら過去の生活に戻れるはずはない!『文明は逆行せず』だ。1度味をしめた連中は、甘い甘い蜜を手放しはせんぞ!無論、我々も含めてな」
「戦争だ!戦争だ!絶対的に戦争だ!戦争しかない!」
結局、人々は解決策を見いだせず、『持たざる国』は『持てる国』に攻め込んでは資源を奪うということを繰り返しました。
世の中は物資やお金を持っている者が絶対ではないし、軍事力を持っている国が最強であるとも限りません。それらの組み合わせでできているのですから。
*
「人の世ってのは、いつも争いが絶えないわね。常にどこかの誰かが戦いを起こし、戦闘は泥沼化していく。遠い昔からずっとそうだったわよ」と、シェヘラザード。
「そうですね。一時平和が訪れたとしても、いつかその平和は壊れてしまう時が来る。人は1000年先も同じコトを繰り返し続けてるかもしれませんね」と、僕は答える。
「『完全な理想郷』なんてものがあるのかしらね?」
「では、次はそのお話といきますか」
*
「完全な理想郷」
ある世界で、極限まで発達した文明は、ついに「完全な理想郷」へと到達します。
「天国という場所があるなら、こういうところだろうな」という世界です。
人々は、全く働かず、住む所にも食べる物にも困らず、自由気ままに暮らしています。戦争などありません。争いを起こそうとした者は、この世界から自動で消去されてしまうからです。
誰も何も文句を言わず、波風も立てず、ただ淡々と平和に生き続けていました。
けれども、そんな人生に耐えられず、退屈さから自殺してしまう者も大勢います。あまりにも理想的過ぎる世界も、考え物ですね。
理想郷に飽き飽きして、別の世界へと転生してしまった若者もいるのですが…
それは、また別のお話。いずれどこかでお話しするといたしましょう。
*
「平和過ぎて何も起こらなければ、物語は成り立たないわよね。遠い昔に私が語った数々の物語も、やっぱりみんなが争いあってたわ。恋人を奪い合ったり、王位を巡って殺し合いをしたり、国同士が戦争をしたり」と、シェヘラザードは笑いながら言いました。
「そこが物語の難しく、またおもしろいところでございます。何も起こらず誰も動かなければ、ストーリーは進みません。みんなが寝て過ごすか、一生懸命働いて幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたしとなるばかり。そんなお話が聞きたいですか?」と、僕は問いかける。
「そうねぇ。眠れぬ夜を過ごすには、やっぱり波瀾万丈、起伏に富んだ物語を聞きたいわ。登場人物たちには幸せになってもらいたいけど、それは紆余曲折を経たあとでなければ…」
「では、次の物語とまいりましょう」
*
「異世界同士の交流」
「異世界」と、ひと口に言っても、様々ありまして。
実は我々が住んでいる世界だって、他の世界から見れば「異世界の1つ」に過ぎないのでございます。
誰もが現実だと疑わない世界が、実は現実には存在しない可能性だってありますからね。ハッキリと感覚があって、この手に取ることのできる物質さえ、夢幻であり蜃気楼のごときモノかもしれません。
もしも、そんな世界同士がつながったとしたら、どうでしょう?
それほど突拍子のないお話でもございません。元々、この世界に住む人々だって、外に別の国があるなどとは想像もできずに生きてきたのですからね。
それが、やがて国同士が交流を持ち、大海を渡って未知の大陸を発見し、さらなる交流を広げていったわけです。
いずれ、この星の人々も、広き宇宙の海へとでかけ、他の星の住人とコンタクトを取る時代が来るでしょう。
それと同じだとお考えください。
おっと、そろそろ夜が明ける時間ですね。
では、この続きは、また明日の夜に。