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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
724/1003

~第723夜~「9色にわかれた世界(その2)」

 青の国は、他の多くの国と積極的な交流があります。

 たとえば、鉄を生み出すには、灰の国が主な産地となっている鉄鉱石が必要ですし。その鉄鉱石を加工するには、赤の国が持つ強力な炎の力が必要だからです。


 水を象徴とする青の国は、非常に暮らしやすく、他の国から大勢の移住者がやって来ます。

 なので、灰の国から鉄鉱石を輸入し、赤の国の職人が鉄に加工し、青の国の水で冷やすということが行われるわけです。


 逆に、赤の国は火山が多く、地震も頻繁に起るので、住むにはあまり適しません。

 樹木が多く、多種多様な花々が咲き乱れる緑の国には、水を扱う青の国からの移住者が多くいます。

 黄の国は光にあふれ、黒の国は闇に閉ざされ…といった感じで、それぞれの国に特色があり能力者がいるのです。


 赤の国を治めるのは、“エスティラス”という名の少女。

 エスティラスは、火山に囲まれた土地で、今日もひとり考えます。


「ああ~あ…どうやったら、世界を救えるのだろうか?」


 エスティラスは、救世主になりたいのです。あるいは、英雄に。

 世界を救うには、まず世界が混沌としていなければなりません。誰から見ても明らかな“悪”がいて、初めてそれを倒す“正義”が存在できるのですから。

 ところが、世界は比較的平和で、細かい問題は無数に起これども、大きな意味では悪など存在していません。

 世界は救世主など求めてはいませんでした。


「ノッティヨルダあたりが破壊活動を起こしてくれないかしら?世界を滅ぼすような破壊活動を…そうすれば、アタシが出ていって大活躍して、英雄になれるのに!」


 ノッティヨルダというのは、黒の国の支配者。

 黒は破壊の象徴。なので、黒の国には破壊を司る能力者が生まれます。

 ただし、その力は山を切り開いたり鉱山を掘ったり、もっぱら人々のために活用されているので、悪の魔王などとはかけ離れたイメージを持たれています。


「シグラ!シグラはいる?」


 エスティラスが大声を出して呼んだのは、赤の国の教育係であるシグラ。

 かっぷくのよい中年女性です。


「ハイ、なんでしょうか?お嬢様」


 エスティラスは、赤の国の女王ではありますが、シグラは彼女のコトを“お嬢様”と呼んでいます。


「アタシは退屈なのよ!何か用意してちょうだい!」


「何かと申しますと?」


「救世主になるための何かよ。“世の中にはびこる悪”とか“心の底から嫌悪する存在”みたいなのを探してきて!すぐにアタシが退治してあげるから!」


「そうは申されましても、このような平和な世の中ですからねぇ。なかなか難しゅうございます」


「そこをどうにかするのがあなたの役割でしょうが!」


 エスティラスは、自分の力を持て余していました。

 赤の力は、炎の力。「何かを攻撃するのが最もふさわしい」と、エスティラスは考えています。なのに、その力を発揮できる場面が全然訪れないのです。

 それに加えて、彼女は非常にせっかちで激情しやすい性格でありました。まるで、真っ赤に燃えさかる炎のごとく。


「では、またモンスター退治にでも出かけましょう」


「もんすた~たいじぃ~?ヤダ!ヤダ!アタシ、もうそういうのは飽きちゃったの!もっとちゃんとした人助けがしたいの!悪い奴がいて、困ってる人がいて、颯爽(さっそう)とアタシが現われて助ける。そうゆうのがやりたいのぉ~!」


 この世界には野生のモンスターが住んでいて、誰でも勝手に狩ることができるようになっています。

 だからといって、そんなに危険な存在でもなく、たまに田畑を荒らすコトがある程度。

 たとえるなら、イノシシやシカといった害獣退治みたいなものですね。


「やれやれ、困ったお嬢様だこと…」

 フ~ッと大きなため息をつく教育係のシグラ。


「ま、しょうがないわね。今日のところは我慢しておいてあげるわ」


 なんだかんだ文句を言いつつ、それでもモンスター退治に出かけるエスティラス。

 城の外はどこも岩だらけの荒野。遠くにはモクモクと煙を吐き出す火山。ところどころに、林や小さな山も見えます。


 先頭を進むエスティラスを、巨体を揺らしながら追いかける教育係のシグラ。さらに後ろからは、イザという時のための後方支援部隊や食糧部隊などが続いてきます。


「待ってくださいよ~!お嬢様~」


「もう、何やってんの?スットロいことやってるんだったら、置いてくわよ!サッサとしなさい!サッサと!」

 後ろを振り向きながら叫ぶエスティラス。こういうとこもせっかちなのです。

 その声を聞きながら、ふぅふぅと息を切らせながら追いかけるシグラ。


 そうこうしている内に、遠くにモンスターたちの姿が見えてきました。ゴリラに近い生き物や、鋭く長い爪をたずさえた生き物もいます。


「さぁ!お出ましよ!楽しくなってきたわね!」

 そう言うと、サッと魔物たちに近づいていくエスティラス。


「あ!お嬢様、お待ちを!危のうございます!」

 慌てて追いかけるシグラ。

 けれども、そこはさすがに赤の国の国民。いざ戦闘が始まると血が騒ぐらしく、シグラも巨体を揺らしながら、嬉々としてモンスターたちを打ち倒して回るのでした。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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