表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
722/1003

~第721夜~「貧しき国のミラーグレ(その6)」「箱の中の世界(その14)」

 ミレーグレも大人になりました。

 そうして、結婚し、子供を産み、育てました。


 生まれてきた子供は、別に特殊な能力者というわけではなく、いたってフツーに日常生活を送っています。

 そもそもミラーグレ自身も、生まれた時には他の子となんら変わりはなく、能力も後天的に(さず)けられたものなのです。


「この子だって、いつかは私みたいになんらかの力を与えられるかもしれないわ。そうなったらそうなった時に、自分で考えてどうにか対処するでしょう」

 それがミラーグレの持論でした。


 世界は特殊能力者であふれかえりましたが、そのほとんどは差別されることもなく受け入れられました。

 社会は特別な力を持った者を受け入れ、その上でシステム化したのです。



「箱の中の世界(その14)」


「なんだか退屈な終わり方ね」と、少女ポステリは言いました。


「この世界の人類は自然消滅することもなく、大きな戦争を起こすでもなく、うまく適応してしまった。その結果に不満かい?」と、少年プリオがたずねます。


 プリオの言葉を聞いて、ポステリはクビを横に振って答えました。


「いいえ。これはこれで1つの答えなのでしょう。私はただ“退屈だ”と言っただけ」


「じゃあ、この世界にはこれ以上干渉はしない?それとも、もっといろいろな要素を投げ込んでみるかい?」


「よしましょう。これはこれで1つの答え。答えを導き出した人類に、私たちがどうこうするべきじゃないわ」


 ポステリの言葉にウンとうなずいてから、プリオはさらにたずねます。


「人類というのはペットみたいだとは思わないかい?」


「ペット?」とたずね返すポステリ。


「そう。人間が愛玩(あいがん)動物を飼う行為。ネコだとかイヌだとか…中にはワニやヘビ、魚、ネズミなどを飼う者もいる」


「それは知ってるけど」


「ペット自体は人間の都合で生み出されたモノ。だからといって、その命を人間が勝手に奪っていいわけでもない。人間たちは独自のルールを決め『自分のペットであろうとも、むやみに虐待したり殺してはならない』とした」


「なるほどね。確かに似てるかも。私たちは、世界を創造した。人類を生み出した。だからといって、彼らの命を勝手に奪ってはならない。そういうコトね?」


「その通り。ここまで進化した人間たちを…いや、進化は関係ないかもしれない。たとえ原始的な生物であろうとも、僕らが生み出した命であろうとも、生まれ落ちた瞬間からその命の権利は彼らにもあるんじゃないか?」


「『だからペットと同じ』というわけね。おもしろい考え方だと思うわ。けど、動物実験はどう?サルやネズミや虫を使って、人間たちは科学実験や遺伝子操作を行っている。それは許されるの?」


 ポステリの疑問に、プリオは少しの間考えてから答えました。


「ただ、人類は年々、動物実験を減らすように心がけるようになってきている。代わりに、コンピューター上でのシミュレーションを増やしたりしてね」


「だったら、私たちも同じじゃない?私たちも彼らも、大別すれば“コンピューター上のデータ”に過ぎないのだから」


 そうなのです。

 プリオもポステリも、彼らが作り出した世界も人類も、みんなみんな電子上のデータに過ぎないのです。


「フム…」とアゴに手をやってしばらく考えてから、プリオが再び口を開きました。


「その点に関しては、実に難しい問題だと言える。果たして、彼らは“生きている”と言えるのだろうか?そして、僕らは?電子生命体である僕らに命はあるのだろうか?魂は存在しているのだろうか?そして“生命の定義”とは?」


「私たちは、こうして自分でものを考え、自主的に行動している。それは、生命の定義にならないかしら?」


「だとすれば、彼らにも命があるということになる。だが、魂の方はどうだい?」


「魂…それが何かはわからないけど。たとえば、虫やプランクトンに魂はあるのかしら?プランクトンが水を(ただよ)い、自己増殖を繰り返す。それって、プログラムに近いモノなのでは?」


「ならば、高度なプログラムの集合体である僕らも生命体であるという理屈か…」


「そうよ。それに加えて、植物はどう?植物は自分で考えたりする?そこに魂はあるの?物理的に存在する植物よりも、電子の世界にしか存在しない私たちの方がよっぽど生き物らしくない?」


「なるほど。その発想はおもしろい。『植物よりも進化した我々は、すでに生命体としての条件を満たしている』か…」


「その辺りを考慮に入れて、もう1度世界を作ってみましょう」と、ポステリが提案します。


「次は、一体どんな世界にする?」と、プリオ。


「そうねぇ…たとえば、“植物が自分で思考し、移動する世界”とか。あるいは“自分たちが電子の存在だと知っている生物の世界”とか」


「僕らと同じように?」


「そう。私たちと同じように。それでいて、もちろん能力は制限されている。何もかもを無尽蔵に生み出せたりはしない。今回の世界と同様に」


 プリオとポステリの話し合いは尽きません。

 この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ