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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
715/1003

~第714夜~「アリ人間たちの戦争(その7)」「箱の中の世界(その11)」

「この人生は間違っていたのだろうか?」

 レーベとケンカし、失意の底へと沈むエルピージョ。


(あそこで終わりでもよかったのかもしれないな。戦場で敵に囲まれ、死に(ひん)した時、逃げ出さなくてもよかったのかも…)と、エルピージョは思います。


 けれど、かぶりを振って再び生きる気力を取り戻すエルピージョ。


「いや、違う!それだと、その後の人生はなかった!新しく生まれてきた無数の命も、その後の文明も、何もかもがなかったことになる!水泡に帰してしまう!」


         *


 そうこうしている内に、アリ人間の別の種族も、文明の発展をとげてしまいます。

 プリオとポステリが、力を与えて回ったからです。


 エルピージョとレーベが元いた黒アリや赤アリ族だけではなく、緑アリや青アリやピンクアリなどなど…

 どこの種族にも公平に近代文明がもたらされ、お金が流通していきました。


 すると、必然的に種族間の交流が活発になり、同時に争いも増えていきます。

 エルピージョとレーベのような恋物語が展開されたかと思ったら、お金の問題からイザコザが起り、時には殺傷事件にまで発展してしまうのでした。


         *


 それから、また数年の時が経過し、女王アリのレーベはこの世を去りました。

 ひとり残されたエルピージョは、教会の中、神様の像の前で立ち尽くしています。


「ああ…神様。あなたの行為には感謝しております。問題も数多くありましたが、あなたの援助のおかげで、命を救われた。この街も発展をとげた。どうもありがとうございます」


 それから、エルピージョは若い頃に願ったコトを思い出しました。


「そういえば、遠い昔、神様に会ってみたいと願ったコトがあったな。神様とは一体、何者だったのだろうか?ま、老いさらばえたこの体。今さら関係ないか…」


 その瞬間、エルピージョの体はふわりと宙に浮き、どこかへと消えてしまいました。



「箱の中の世界(その11)」


 真っ白な部屋。立ち尽くす黒アリ人間のエルピージョ。


「ここは…!?」

 エルピージョの前には、少年と少女がイスに座っています。


「君にお礼をしようと思うんだ」

 少年プリオが言いました。


「あなたは、私たちを楽しませてくれたからね」

 少女ポステリも言いました。


「まさか…神様!?」

 驚くエルピージョ。


「そう。君らの言葉で言えば、そういうコトになるかな?」と、プリオ。


「あなた、私たちに会いたがっていたでしょう?だから、その願いをかなえてあげようと思って」と、ポステリ。


「一体どうして…いや、そもそもなぜ我々に食べ物や発明やお金なんかを与えてくれたんですか?」


 エルピージョの質問に、プリオとポステリは正直に答えます。


「退屈をまぎらわせるためだよ」


「あなたたちがどうなるか見てみたかったの。それに、歴史の勉強にもなるからね」


 それから、プリオとポステリは、これまでに起ったコトを簡単に説明してくれました。

 自分たちは永遠に等しい命を持っているコト。どんな願いでもかなえられるけれども、それに飽きてしまったら自然消滅するしかないコト。だから、同じ種族同士を争わせて退屈をまぎらわせようとしたコトなどなど。


「あとは君の知っている通りさ。君とあの赤アリの女性が戦場を抜け出し、2人で新しい街を作り、発展させていった」


「私たちは、その手助けをしただけよ」


 プリオとポステリの話を聞いて、エルピージョは驚くやら悲しむやら。怒りや虚しさなど、様々な感情がゴチャ混ぜに浮かんでは消え、浮かんでは消えしていきます。


「そんな…だったら、この人生は一体…」

 複雑な感情をうまく言葉にできないあわれな1匹の黒アリ。


「だよね?うまく気持ちの整理がつかないよね?」と、プリオ。


「だから、私たちはあなたにプレゼントをしようと思うの」

 ポステリも言います。


「プレゼント?」


 エルピージョがたずね返すと、2人はうなずきます。


「そう。僕らの気持ちを理解してもらうための最高のプレゼントさ」


「私たちと同じ気持ちになってもらおうってわけ」


「それは一体…」と、エルピージョ。


「君に同じ力を与えようというわけさ」


「あなたたちの言葉で言うところの“神様”になってもらおうってコト」


「神様に…!?」

 驚くエルピージョ。


「そう。『それが一番手っ取り早いだろう』って、2人で話し合って決めたんだ」


「自分が同じ立場になれば、きっと私たちの気持ちも理解できるでしょ?」

 そう言うと2人は手を握り、余った方の手をエルピージョの頭の上にかざしました。


         *


 次にエルピージョが気づいた時、真っ白な部屋に1人だけが取り残されていました。

 ただし、頭の中に声が響き渡ります。


(願ってごらん。君の願いを)


(心の底から願えば、きっとかなうはずよ)


 そう言われても、エルピージョは困ってしまいます。


(なんでもいいんだよ)


(あなたのほんとの願い、夢は何?)


「ほんとの願い、夢…」

 そうつぶやくと、エルピージョは願いました。

「レーベを生き返らせてくれ!まだ若かった頃の姿で!」と。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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