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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
5/1003

~第4夜~(「宇宙を統べる者」「死にいたる病コロコローリ」)

「この宇宙には、『支配者』というのが存在しているのをご存じですか?シェヘラザード様」


「そういえば聞いたことがあるわね。人間の作った神話で」


「それが作り話などではございません。実在するんですよ。『宇宙の支配者』というのは」


「では、今夜はその『宇宙の支配者』とやらのお話ね」


「その通り。では、さっそくお話しいたしましょう」


         *


 現在、数多くの「異世界モノ」と呼ばれる物語が語られたり書かれたりしていますが、それらの舞台はみんな巨大な宇宙の中に存在しているものなのです。


 宇宙には「支配者」と呼ばれる存在が住んでいて、現在はその力をほとんど失った状態ですが、かつては強大な能力を有していました。


 たとえば、星1つを生み出すとか、星同士をぶつけ合い破壊してしまうとか。もちろん、それにもエネルギーが必要です。

 ()き火を思い浮かべてみてください。焚き火自体は人間が生み出すものではないですよね?でも、枝や(まき)に小さな火をおこしてやれば、大きな炎となって長い時間燃え続けます。


 いきなり何もない空間に自動車を誕生させることは難しいですが、細かい部品の組み合わせで、最終的に自動車を作ることは可能です。

 規模をどんどん大きくしていけば、もっと複雑な道具や機械を作り出すことも可能でしょう。たとえば、惑星そのものを破壊したり、太陽を生み出すような道具も。


 支配者が行っていたのも、それに近い行為でした。

 「充分に発達した科学技術は、魔法と見わけがつかない」という言葉もございますが、科学が極限まで進歩すれば、それは「魔法」と呼ばれるようになるかもしれません。科学と魔法は同一のモノだと言っても差し支えがないかと。


 宇宙には様々な生物が存在しています。たとえば、肉体を持たない精神生命体とか。

 「宇宙の支配者」も、それに近い存在です。我々が普通に攻撃しても、ダメージを与えることは全くできないでしょう。けれども「封じる」ことならばできます。


 現在、支配者はこの宇宙のどこかに封印されています。以前にお話しした「自分勝手な勇者」のように。

 宇宙にも巨大な川があり、壺の中に封じられた支配者は、深い深い川の底でいつか誰かが封印を解いてくれる日を待っているのです。


 これは、たとえ話ですけどね。実際には川の姿をしていないかもしれませんし、封じられたのは壺ではないでしょう。

 けれども、「いつか誰かが封印を解いてくれるのを待っている」という部分だけは真実です。


         *


「確かにスケールの大きな話ね」と、シェヘラザード。


「でしょ?実は、これとは別のタイプでもっとスケールの大きなお話もあるのですが、それはまたいずれ。今夜は、逆にスケールの小さなお話をいたしましょう。小さな小さな世界のお話を」


         *


「死にいたる病コロコローリ」


 剣と魔法の世界にもウイルスというのは存在していまして。物語の中では、あまりメジャーじゃありませんかね?でも、風邪くらいはひくでしょう。

 たまに酷い病にかかる登場人物もいますし。悲劇のヒロインとか、主人公の母親とか。

 それらはみんな、ウイルスの仕業ですよ。お話に登場しないのは、物語の「語り手」がよく考えていないだけなのです。「語られない」のと「存在しない」のは別のお話。


 今回お話しするのは、そんな小さな小さな敵について。

 けど、「宇宙の支配者」みたいに大きな存在じゃないからって、油断はできませんよ。それこそ、世界だって滅ぼしかねませんからね。


 ある時、ある町で、ちょっとした病気が発生しました。

 最初は誰も目を向けませんでした。「せいぜい風邪くらいのものだろう」「何日か寝てればすぐに治るよ」といった程度の反応。

 ところが、患者は何日経っても回復しません。それどころか、病はどんどん広がっていて、町の人たちがみんな感染してしまいました。

 すると、バタバタとあちこちで人が亡くなるようになり、ここでようやく人々は事態の深刻さに気がつきます。


 時すでに遅し。

 小さな町から発生した病気は、隣町、その隣町と伝染していって、ついには国中に広がってしまいます。

 そうなると、次は隣の国、さらに隣の国と広がっていき、瞬く間に世界中を(おお)い尽くしてしまいました。


 さて、困った人間たちは、どうにかしようと魔法に頼ります。

 ところが、どんな回復魔法も効果を発揮しません。魔法も科学みたいなものなんですね。より上位の病に対しては、上位の魔法が必要になる。でも、この時代にはそんな魔法は存在していません。

 新しい魔法を開発するにも時間がかかります。それでも、やるしかなかったんです。


 散々、研究を重ね、「どうやら目に見えない毒が体内に入って、体を(むしば)んでいるらしい」ということに気がつきます。

 この時代、「ウイルス」はまだ発見されていませんでしたが、それでも「目に見えない小さな毒」という発想までは到達したのです。


 そこでまず、魔術師たちは「空気を遮断する」ことを考えました。完全に空気を遮断することには成功しましたが、それだと息ができなくなります。「毒だけ取り除いて呼吸はできるようにする」という高度な魔法を開発するにはいたりませんでした。


 人々を死の世界へと誘う病は「コロコローリ」と名づけられます。


 おっと、そろそろ夜が明ける時間ですね。

 それでは、この続きはまた明日の晩に。

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