~第316夜~「退屈な星のサルサラ(その4)」
倉庫で在庫チェックをしている最中、テーラとサルサラが会話しています。
「人のコトまで考えられるなんて、カッコイイです!アタシは自分のコトで精一杯だから…アタシも将来、テーラお姉さんのようになりたいと思います!」
「アラ、ありがとう。けど、私みたいになりたいなんて思わない方がいいわよ。あなたの未来は、あなただけのものだから。もし何かあったとしても、それはあなたの責任。自分の選択に自信を持ちなさい」
「ハイッ!」
それから、テーラは遠い世界を見るような目で語り始めます。
「けど、私もひとりじゃ無理だった。側で支えてくれる人たちがいたから、ここまでのコトができたの。最初は3人。そして、すぐにもう1人の仲間が加わって…」
「どんな人たちだったんですか?」
「そうね。1人目はミーシャという女の子で、私よりも4つくらい下だったかな?…といっても、もう私と同じおばさんね。結婚して、子供も生まれて、今は幸せに暮しているわ」
「2人目は?」
「2人目はミーシャのおじいちゃんで、サフルという名の老人だったわ。ちょっとした魔法が使えて、随分とお世話になったものよ。けど、もう何年も前に故郷の村に帰って、亡くなったわ…」
「そうなんですか。それは悲しいですね」
「ええ。でも、それもまた自然の摂理よ。そして、3人目はモカメルという若者だった。ギャンブル好きで、それがこうじて相場で一発当てて大金持ちになったわ!」
「マジですか!?それはすご~い!」と飛び上がって驚くサルサラ。
「けど、すぐに大損して。また大儲けして…その繰り返しで、今でも世間をにぎわせてるわよ。そして、4人目は新聞記者のチャルラタン」
「新聞記者?」
「そう。当時はそういう職業があったの。いや、今でもあるかな?ただ、昔みたいに好んで新聞を読む人なんて、ほとんどいなくなっちゃったけど」
「その人は、今は何をやってるんですか?」
「形を変えて、メディア王よ。新聞という文化はすたれちゃったけど、今やインターネットを舞台として、人々に情報を発信する仕事は残り続けてるの。それに、いろんな業界に手を伸ばして、どんどん成長させてるわ」
「凄い人なんですね」
「ええ。彼は彼なりに一生懸命にやってるわ。私とは違う方法でだけど。目指す場所は近いモノがあると思う。他にも、かつて仲間だった人の中には、成功を収めた人もいれば、平凡に幸せな人生を送っている人もいる。そして、残念ながら犯罪者になった人も…」
「テーラお姉さんは大冒険したんですね。うらやましい!アタシもそんな風に退屈しない人生を送ってみたい!」
「確かに退屈はしなかったわね。けど、それが正しかったかどうか?思い返してみてもわからないわ」
「そうなんですか?」
「そうよ。それに、時代は変わったわ。私がやっているコトだって、この時代に必要なのかどうかさえわからなくなりつつあるし…」
「このお仕事が?みんなにいろんな物を届ける立派なお仕事じゃないですか!」
「けど、もはや、かつてほど物流が必要とされない時代。各世界は光ファイバー回線でつながり、データのやり取りが最重要視されている。自動車やコンピューターであれば、現地で生産すればいい。ほとんどの資源も、それぞれの世界で産出される。データさえあれば、物理的に何かを送る必要なんてないのよ」
「それでも物を届ける人は必要でしょう?完全にこのお仕事はなくなったりしないでしょ?」
「そうねぇ。たとえば、魔鉱石と呼ばれる特殊な鉱石は、ある星でしか発掘されない。機密重視のため、回線を通さずデータを直接小型メモリに入れて受け渡す仕事もある。けど、そういうのは例外的な仕事なの。ほんとは無理して物なんて運ばなくていいのかも。そういう時代になりつつあるのよ」
「なんだかさびしいですね…」
「そうね。でも、それが“時代の流れ”ってヤツなのよ」
「もしも…もしも、このお仕事がダメになったら、テーラお姉さんは何をしたいですか?何になりたいですか?」
「転職ってコト?」
「そう…ですね」
「そうねぇ。この年で新しい仕事を始めるのもどうかなぁ?どこかの星にとどまって、そこで同じような仕事を続けるかな?テーラ商団の支部も各世界にあるし。けど、あなたを見てると、全然違う新しい生き方をするのもいいかなって気にもなってくるわね」
「アタシ!?」
「そうよ。サルサラ、あなたは若かった頃の私が持っていたモノ、今の私が失ってしまった好奇心とか冒険心のようなモノを持ち合わせている。目一杯光り輝いて生きてる姿を見てると、私もまた見知らぬ世界に旅立ちたくなってくるわね」
「旅立ちましょう!一緒に!」
「そうね…そういうのもいいかも。考えとくわ」
そう言って、テーラは倉庫から去っていきました。
倉庫にひとり残されたサルサラは、そっとつぶやきます。
「好奇心、冒険心。それがアタシの魅力か…けど、アタシこれからどこへ行けばいいんだろう?何をすればいいんだろう?このまま、この商団で働き続けてていいのかなぁ?」
さて、この続きは、また明日の晩に語るといたしましょう。




