~第310夜~「予言者と鬼の娘テーラ(その7)」
農園が続く土地の真ん中、小さな町へとたどり着いた4人。
テーラ、ミーシャ、サフルの3人は、宿屋の主に頼まれて、近所に果物を配りに出かけました。
遅れて宿屋にやって来たモカメル。横には新聞記者を名乗る男を連れています。
モカメルと宿屋の主人が会話していると、宿屋の奥さんがやってきました。
「アラアラ、またお客さんですか。こんな田舎の宿に珍しい。今日は一体どうしたのかしら?」
「あ、オレは先に来てる3人の連れで…」と、モカメルが自己紹介を始めます。
すると、新聞記者も続けて名を名乗りました。
「僕はチャルラタン。珍しい事件やおもしろい出来事を探して、世界中を旅して回っているんです」
「そうですか、そうですか。お客さんなら、どなたでも大歓迎ですよ!」と、気さくに接してくる宿屋の奥さん。
そこに残りの3人も戻ってきました。
「アレ~?モカメル?そっちの人は、だぁれ?」とたずねるテーラにモカメルは説明します。
「フ~ン。私たちと一緒に行動したいんだ。別にいいんじゃない?」
「テーラ様がそうおっしゃるなら、ワシらも異存はありませんぞ。なあ、ミーシャ?」
サフルの言葉にミーシャも同意します。
「ええ、もちろんです」
こうして、新たな仲間を加えた一行。旅を続けることになりました。
*
それから一行は、無事に国境を越え、隣の国へとたどりつきます。
ちょうどこの時代、世界は急激に自由化が進みつつあり、“国”という概念も薄れつつありました。
…というのも、今から20年ほど前に、別の世界からやって来た一団が、新しい文化や技術と共に新時代の考え方をももたらしたからです。
それは「人類は皆平等であり、誰しも自由に生きる権利を有している」という考え方でした。その代わりに、常に能力だけは上げ続けなければなりません。“自分の身は自分で守る”というのが基本にあり、能力なき者は簡単に切り捨てられてしまいます。
そんな世の中において、旅人は人気の職業の1つでした。なにしろ自由の象徴ですからね。
*
さて、旅を続けるテーラたち一行。ある時、ある王国へとたどり着きます。その名も“カエル王国”
名前の由来は、カエル人間が国をおさめているから。そして、そのカエル人間とは…
「カエルの王様かぁ。これは、いい記事が書けそうだぞ!」と、新聞記者のチャルラタンは街に着くなり、張り切り出します。
そうして、交渉の末、カエル王国の王様に謁見できるコトになりました。なにしろ、王様は旅好きで、旅人からおもしろい話を聞くのが一番の楽しみなのですから。
さっそく一行が城の中に入ると、玉座には大きなカエルが座っています。
「おお!よくぞ来たケロ!我輩がカエル国の王“ケロ吉”である。よろしく頼むぞ!」
ちなみにカエルなのは国王だけで、国民は人間だったり、他の動物人間だったり、様々です。この国では人種差別なく、どのような者でも受け入れる体制が整っているのでした。
「我輩は、その昔“クロガネ”という男に連れられて、この世界にやって来たケロ。クロガネは“究極に自由な世界”を創造するため奮闘し、各地で争いが起ったケロ」と、カエルの王であるケロ吉は語り始めます。
「へぇ~!そんなことがあったんだ。それで、その後はどうなったの?」と、テーラがたずねました。
「ああ。我輩は、そんな生活に飽き飽きし、ひとりで自由気ままな旅を楽しむようになったんだケロ。まさに、クロガネの言葉通り自由に」
それからケロ吉は、自分の冒険談を長々と語って聞かせます。各地を旅しながら、その都度、魔物を倒したり、人助けをしたり。結果的に、人々から指示されるようになり、国を1つまかさされるようになったコトまで。
「こうして、我輩は王様になり、幸せに暮しましたとさ。めでたしめでたしケロ♪」
一通りの話を聞き終わってから、モカメルが言いました。
「けど、それで理想の国が作れたなら、アンタは立派な王様ってことになるんじゃないのか?」
「そうケロね…けど、いろいろと問題も多いケロよ。まあ、この国を好きに見て回るといいケロ。きっと、これまで見えなかったモノも見えるようになるケロ」
そう言いながら、ケロ吉王は最後にケロロッとうれしそうに笑いました。
こうして、旅の話をするはずだった一行は、逆に王様の話を聞くだけで帰されてしまいます。
それでも、王様に国中を見て回る許可をもらったテーラたちは、なにかと優遇してもらえることになりました。たとえば、無料で宿に泊めてもらったり、食事をごちそうになったりといった感じで。
カエル国のある街にて、突然、サフルが一軒の建物の前で立ち止まりました。レンガ造りの立派な建物です。
「ン?どうかしたの?おじいちゃん?」とたずねるミーシャに、サフルは答えます。
「ホレ、見てみい。あの建物の中を」
みんなが中をのぞいてみると、そこでは体の不自由な人たちが奇妙な体操をしておりました。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




