~第308夜~「予言者と鬼の娘テーラ(その5)」
大きな街であるハイワンで職探しを始めた4人。
魔法使いのサフルと孫のミーシャは、得意分野を生かして安定した収入先を見つけます。
蝶よ花よと育てられたお嬢様のテーラは、何もできないので仕方なく仕立屋で下働きから始めることに。モカメルは就職の前に、自動車の運転面を取得しようと奮闘します。
そして、数ヶ月後…
モカメルは無事、免許証を手にしました。
「やったぞ!これで、オレも立派な大人だ!」
けれども、喜びもつかの間、今度は車を購入するための資金が必要になります。
「しまった!金がねえ!どうしよう!」
あせって頭を抱えるモカメル。
そんな彼に、サフルは言いました。
「モカメル君、心配はいらんわい。ワシにまかせておけ!」
「でも、どうやって?」
「実は、ワシはこの街で魔術師の講師として働いておったんじゃが、これが思いのほか好評でな。ボーナスまでいただいて、予想以上の収入があったのじゃ」
「そいつはありがてぇ!」
そう言って、モカメルはサフルからお金を借りると風のようにビュ~ン!と飛んで行って、中古の自動車を購入してしまいました。
さて、問題はリーダーであるテーラです。
ミーシャは薬草屋で地道に働き続け、それなりの収入を得ていましたが、テーラはお嬢様育ちなこともあって人の下で働くのに向いていません。最初の職場は、雇い主とケンカして、わずか数日でやめてしまいます。
その後も、給仕係 → 料理人 → 荷物運び → 売り子 → 煙突掃除人 → 漁師といった感じで職場を転々としますが、どれ1つとして長続きしません。早いものだと半日もたたずにやめてしまうのです。
最後にたどり着いたのは、街の踊り子でした。大勢のお客さん(主に男)を前に舞台に上がり、華麗な踊りを披露するのです。
テーラは物心ついた頃から習い事をさせられており、その内の1つが「歌とダンス」
おかげで、舞台に立っても緊張1つすることなく芸を披露することができ、初日から大歓声の嵐!たちまち人気者となり、トップスターに登り詰めます。
しかし、残念ながら、彼女の場合それが悲劇の始まりでした。
「アレ?なんか体がおかしいわ……」
そう思ったときにはもう手遅れ。なんと、テーラはステージの上で倒れてしまったのです。
すぐさま病院へ運ばれましたが、医者の診断によると原因は過労。
「しばらく、踊り子はやめて、ノンビリ静養することじゃなと忠告されてしまいます。
*
それから、またしばらくの時が流れました。
ベッドの上で充分に静養したおかげで、テーラも元気を取り戻します。以前よりもさらにパワーアップして、その辺りの公園をピョンピョン跳び回る始末。
けれども、精神的にはそうではありません。働き過ぎでドクターストップがかけられて以来、テーラは人生について深く考えるようになっていました。
「生きるとはなんぞや?」「人類がこの世界に誕生した意味とは?」といったテーマについて、毎日毎日何時間もかけて考え続けるのです。
「今さらだけど、私たちって、本当にこのままで大丈夫なのかしら?そもそも、この旅の目的ってなんだったっけ?こんなに長く同じ街に滞在し続けていていいのだろうか?なんだか、とっても不安になって来たわ!」
そんな時、魔法使いのサフルがこう提案します。
「テーラお嬢様。すっかりよくなられたようで。気分転換にどこか遠くの国に行きまぬか?」
「それって、どこのコトかしら?」
「そうですね。たとえば、ここよりももっと都会的な国とか。世界には、このハイワンよりも、もっとずっと発展した大都会があると聞きます。この世界とは別の世界に通じる道もあるのだとか。別の世界を訪れてみるのも一興かと」
「アラ!それは素晴らしいアイデアね!」
こうして、テーラたちは、ハイワンの街をあとにして、別世界を目指すコトとなりました。
*
この数ヶ月の間に、モカメルは購入した自動車を使って、荷運びや人を乗せる仕事で頻繁に運転を繰り返していました。おかげで自動車の運転技術はメキメキと上達!いっぱしのドライバーとなっています。
4人は、それぞれの職場に別れを告げ、モカメルの運転する中古自動車へと乗り込みました。
「ワシは『魔術師の講師として残ってくれ!』と随分引き止められてしもうたわい」と、サフル老人。
「アタシもよ。勤め先の薬草屋で随分かわいがってもらったの。でも、テーラ様の頼みですものね!断るわけにはいかないし、私も一緒に別世界を目指すわ!」と、ミーシャ。
「オレだってそうだぜ。金を借りたまま、逃げるワケにもいかねえだろ」と、モカメルも言います。
「みんな、ありがとう!じゃあ、出発進行ね!」
テーラのかけ声に従って、自動車が走り始めます。
まず最初の目的地は、大都会・ハイワンから遠く離れた田舎町。ここを経由して、隣の国へと出国するのです。
モカメルはハンドルをギュッと握りしめながら、こう思います。
(オレもついに車を買って、みんなを乗せて旅できるようになったんだなぁ。あのまま、チンケな村でギャンブル暮らしをしてたら、こんな生活一生できなかったろう。やっぱり、村を出てきてよかったぜ!)
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




