~第307夜~「予言者と鬼の娘テーラ(その4)」
テーラと3人のお供は、旅の途中で“ハイワン”という大きな街に立ち寄りました。
ハイワンではちょうど大きな催し物が行われている最中。そのイベントとは、古代遺跡から発掘されたばかりの機械人形によるロボットショーでした。
「すごいなぁ!これが人間そっくりの動くマネキンか!」と、モカメルが驚きの声をあげます。
「ホント。まるで本物の人間が動いてるみたいね!」と、ミーシャも感心しています。
「フム…興味深いものだ」
そう言ったのは、テーラたちの横で見物していた黒いローブをまとった老人でした。
「おじいさんもロボットショーを見にいらしたんですか?」と、声をかけるミーシャ。
「ああ、そうじゃ。孫と一緒にな」
そう言ってフードの老人は隣にいる少年の肩をポンッと叩きました。
「どうも」と言って、帽子を取りながらあいさつしたのは、まだ10歳前後にしか見えない少年です。
「それじゃあ、アタシたちと一緒ですね。アタシもおじいちゃんと旅をしてるんです。もっとも、他に2人の連れがいますけど」
ミーシャの言葉にテーラが即座に反応します。
「ちょっとぉ~!どっちかって言えば、あなたたちの方がオマケでしょ!」
「テヘへ」とかわいらしく笑うミーシャ。
その時でした、ド~ン!という轟音と共に会場のロボットが暴れ始めたのは。
「キャ~ッ!」
突然のアクシデントに、観客たちはパニック状態になります。
「オイ!ヤバいぞ!」
モカメルが叫ぶと同時に、少年はサッと老人の手を取って駆け出しました。
「私たちも逃げないと!」
テーラの言葉に、3人のお供たちもコクンとうなずき、即座にその場を離れようとします。
けれども、サフルが足をもつれさせて転倒してしまいました。
「大丈夫かい?しっかりするんだ!」
モカメルは倒れたサフルを抱きかかえて支えました。
「すまんのう。もうろくだけはしたくないものじゃが…」
「何を謝ることがある。早く逃げるんだ!」
ギャンブラーのモカメルはサフル老人を抱えて残りの2人と一緒に逃げ出します。
…と、その時、舞台上から声が響きました。
「ア~ッハッハッハ!このロボットは、我が盗賊団がいただいた!」
よく通る男の声です。その言葉を聞いて、4人は思わず足を止めて振り返ります。
すると、そこには派手な衣装に身を包んで、これまた派手なメイクをした男が立っていました。長いアゴヒゲを生やしていますが、年齢は20歳そこそこといったところでしょうか?
男はマントをひるがえしながら高笑いを響かせます。
「我こそは大盗賊のアルゴ!お前たちが盗んできた宝物は、我々が有効に使わせてもらうぜ!」
その言葉で、モカメルはようやく事態を理解します。
「あの野郎!まさか、あのロボットを奪いに来たのか!?」
すると、さっきまですぐ横で観覧していた老人と少年も、いつの間にか舞台上へと上がっています。
「もしかして…」
「アイツらもグルだったとか!?」
ふたり同時に驚くテーラとモカメル。
ここで正義のヒーローならば、どうにかして盗賊団を止めようとするのでしょうが…残念ながらこの物語の主人公たちは、まだたいした能力も持ち合わせていなかったため、ボ~ッと指をくわえてロボットが奪われるのを眺めているしかありませんでした。
ゴ~ン!ゴ~ン!と大きな足音を立てながら街から遠ざかっていく巨大ロボット。それを追いかけていく警備の兵隊たち。
その光景は夕日に照らされて実に美しいモノでありました。
*
さて、それから数日後…
気を取り直したテーラたち一行は、この街で手に職をつけようと奮闘を始めます。
なにしろ馬車を購入してしまった上、モカメルがギャンブルでかなりの額をスッってしまっていますからね。そろそろ本格的にお金を稼がないと、この街の滞在費すらひねり出せそうにありません。
「やっぱり私たちには商人の才能があるわね!」と、テーラが根拠のない自信にあふれ返ったセリフをはくと、モカメルも自信たっぷりに答えます。
「そうだな。オレたちならきっとできるはずだ!」
けれども…
相変わらず何の役にも立たない2人。なにしろ、2人とも生まれてこの方、汗水垂らしてまともに働いた経験などないのです。
お金を稼いでくるのは、いつも老人のサフルと孫のミーシャだけ。
サフルはこの街で“魔術指導”の仕事を見つけ、ミーシャは薬学の知識を生かして薬草屋で働き始めました。どちらも、それなりの高給取りになっています。
残されたテーラとモカメルは、街の中心部にある職業安定所へと足を運びました。
紹介された仕事はどれも単純作業ばかり。
「仕方がない。最初は地味な仕事から始めるしかないわね…」
そう言って、テーラは洋服の仕立屋で下働きとして働き始めました。
一方、モカメルの方はというと…
働くには資格を持っていた方が有利だと気がつきます。そこで、まずは自動車の運転免許を取ることに。借金をして、自動車学校に通い始めました。
おっと。今夜もお時間が来たようです。
それでは、この続きはまた明日の夜に…




