~第301夜~「未来を予見する少年」
さて。では、今夜からまた新しいお話を語っていくとしましょう。
まずは軽めの物語から…
「未来を予見する少年」
ある時、ある世界にひとりの少年が住んでおりました。
少年は子供の頃から不思議な力を持っており、その力で人々を助けておりました。たとえば、急に嵐が来るとわかったり、事前に山火事が発生することを当てたりといった感じで。
人々はそんな少年に感謝はしていましたが、同時に気味悪がってもいたのです。
ある日、いつものように少年が未来を予見します。
「これから、この村に大飢饉が起こる。今年は麦も他の作物もサッパリ取れないだろう。今の内に食糧を確保しておいた方がいい」
それを聞いた村人達はあわてて食料庫に向かいます。しかし、そこにはもう食料はなく、残っていたのはわずかばかりのパンだけでした。
そこで、村人たちは総出で遠くの街へと出かけていき、購入できるだけの食糧を手に入れて帰りました。
それから数ヶ月後…
急に天候が荒れ、近年まれに見る冷夏となってしまいます。おかげで、少年の言った通り、各地で大飢饉が起こり、いくつもの村が壊滅してしまいました。
唯一、少年の住んでいる村だけは事前に食料品を買いだめていたために、難を逃れます。
「これで助かった…」
村人は、誰もがそう思いました。
ところがです!大飢饉が発生して食べる物がなくなった他の村の人たちが不平を言い始めます。
「おかしいぞ。あの村だけ、まるで飢饉がやって来るコトがわかっていたかのように事前に準備してたじゃないか!」
「確かに。きっと、何かカラクリがあるに違いない」
「そんなコトはどうでもいい。とにかく、今は食いもんじゃ!食いもんがあるとこからもろうてくるしかないじゃろう!」
そうして、食糧を求めて少年の住む村に人々が押しかけてきました。
村人たちも、最初は追い返そうとしましたが、飢え死にする寸前の人々を前に村長は心を鬼にすることができず、結局は食べ物をわけ与えてしまいます。
その結果、村はあっという間に飢えた人達であふれかえりました。
「ああ…なんということだ。結局、この村も食べる物がなくなってしまった」
「こんなコトならば、奴らを追い返せばよかったのだ!」
「そうだ!そうだ!」
「けど、そんなコトをしたら、きっと戦争になっていたぞ。そしたら、大勢の死人が出たはずじゃ」
「それでも、食糧を守れるならば、そっちの方がよかったわい!明日の食いもんにも困っとるんじゃぞ!」
こんな風に、村人同士険悪なムードになってしまいます。
絶望に打ちひしがれる村長。
その時です。例の少年がやって来て言いました。
「心配ないよ。僕の家には食料がまだたくさん残っているからね」
「本当か!?それはありがたい!」
「だが、どうしてだ?なぜ、お前の家には食べ物が残っているんだ?」
不思議そうな顔をする村人たち。
「それはね。こうなる未来もわかっていたからさ。実はね、僕は未来が見えるんだよ。近い将来に何が起きるのかがわかる能力さ。だから、他の村から腹を空かせた者たちがわんさかやって来る未来も見えていたってわけ。そこで、事前に予備の食糧を隠しておいたんだよ」
「ホウ~、なるほど!それでか!」
村人たちは、以前にも増して少年のコトを尊敬し、同時に恐れるようになっていきました。
「アイツは、どこか不気味じゃ」
「そうじゃ!そうじゃ!未来が見えておるなら、きっとワシらの生活もみ~んな覗かれておるぞ!気をつけにゃ、アカン!」
「しかし、どうやって?先が読める人間なら、どのような策を弄しても全て見透かされてしまうじゃろうて」
「それもそうじゃな…」
こうして、少年は恐れられながらも尊敬される人物となり、スクスクと成長していって、いつしか『預言者』と呼ばれるようになりました。
「予言者様!予言者様!今年の収穫はいかがですか?」
「フム。今年は豊作だ。それも、ここ10年で一番の豊作になるだろう!」
「やった~!バンザ~イ!」と、喜ぶ村人たち。
けれども、予言者は続けて忠告もしてきます。
「これこれ、喜んでばかりいてはおられんぞ。あまりの大豊作ぶりに、穀物の価格は下がるであろう」
「それは困った!どうすればよろしいですか?」
「そうだな。収穫が終わったら即座に収穫物を売り払うのだ。そうして金に換え、他の村の収穫が終わり食糧が余った頃に、安く買い戻せばよい」
忠告通り、村人たちは収穫が終わるとすぐに街まで行って手持ちの農作物を全て売り払ってしまいました。
その後、穀物の価格はダダ下がりに!おかげで、村人たちは大儲けすることができ、皆一財産作ることができました。
毎年毎年、この調子。予言者の忠告に従うだけで、何もかもがうまくいくのです。
ところが、あまりにもうまく行き過ぎると、逆に弊害も生じてしまうもの。簡単にお金が儲かるようになった村人たちは、全く働かなくなってしまいました。
おっと、今夜もお時間となったようです。
それでは、この続きはまた明日の夜にしましょう。




