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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
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~第1夜~(「女だけの世界」「魚釣りのチート能力」)

「シェヘラザード様。異世界の物語はお好きですか?」


「異世界?たとえば、どのような?」と、シェヘラザードは問い返してくる。


「そうですね。たとえば、特殊な能力を与えられた人間が活躍する物語とか。恋愛、バトル、国盗り、出世、復讐、友情、裏切り、家族などなど」


「恋愛!恋愛は大好物よ!ま、おもしろければ、なんでもいいわ。つまらなければ、あなたのクビを切るだけ」


「おお~、怖い怖い」と、わざと大げさに僕は驚いてみせる。「では、このようなお話はいかがでしょうか?」


「どんな?」


「むかしむかし、あるところに女だけの国がありました」と、僕は話し始めた。


「なぜ、女だけなの?」と、シェヘラザード。


「そういう需要があるんですよ。読みたいのは『かわいい女の子のお話』であって、無骨な男なんて必要ない。ただし、主人公だけは別!『自分だけがモテモテになりたい』という願望というか、欲望を満たしてもらいたいと望む読者層が一定数存在しているんです」


「フ~ン。まあ、いいわ。続けなさい」


「では」と、僕は物語を続けた。


         *


「女だけの世界」


 むかしむかし、あるところに女だけの国がありました。

 お城にはお姫様が住んでいて、お姫様にはお母様がいました。でも、お父様はいませんでした。おばあ様もいました。けど、おじい様はいません。だって、女だけの国ですからね。

 同じように侍女はいましたが、男の執事はいません。街の住人もみんな女性。生まれてくる赤ん坊はみんな女の子で、男の子はひとりもいません。老若男女(ろうにゃくなんにょ)ならぬ老若女(ろうにゃくにょ)です。


 ところが、ある日、女だけの国に男の子が生まれます。

 さあ、一大事!


 実は、男の子は異世界から転成してきた人間だったのです。ご都合主義に思えるかもしれませんが、仕方がありません。だって、神様がそう決めたのですから。


 みんな、それはそれは男の子のコトを大切に育てました。

 ところが、男の子には前世の記憶があります。なので、生まれた時から周りの女性全員をエロい目で見ていました。物心ついた頃から、お世話をしてくれる女性の胸に触ったり吸いついたり、エロい行為しまくりです。

 でも、誰も怒りません。それが当たり前のコトだと信じ切っているから。


 男の子は、大きくなって勇者になりました。そうして、「魔王」を退治する旅に出かけます。

 もちろん魔王も女性だし、出会う敵出会う敵みんなメスばかり。


 味方のパーティも全員女性!魔法使いも僧侶も戦士も盗賊も全員女性!しかも、肌を露出した色香漂うデザインの格好ばかりしたがります。

 戦闘においては、敵の攻撃から身を守る重装備をした方が安全なはずなのですが、なぜだかおへそだとか太ももだとか大胆に露出した装備ばかりを選んでしまうのです。


 旅の道中、勇者はラッキースケベを連発し、敵であるメスの獣人ともエッチなシチュエーションになるというコトがしばしば。


 最終的に魔王の城にたどり着いた勇者一行は、敵の四天王(もちろん全員女性)をねじ伏せ、負けた敵はみんな勇者にぞっこん。SMプレイで女性魔王さえも打ち倒した勇者は、戦利品として全員連れ帰り、お姫様も魔王も四天王も侍女もパン屋の娘も、みんなみんな自分のモノにして一生ウハウハ幸せに暮らしましたとさ。


 めでたしめでたし♪


         *


「まあまあね」と、シェヘラザードは答える。


「ま、最初ですから。ボクシングで言えば、ジャブ程度の攻撃ですよ」と、僕。


「それにしても、あまりにもご都合主義が過ぎないかしら?そんなに誰も彼もが勇者に()れたりする~?」


「だから、そういう需要があるんですって。世の中には、この手の小説ばかり公開されて、作者も読者も喜んで書いたり読んだりしてる場所だってあるくらいですから」


「フ~ン。私が女のせいか、イマイチ感情移入できないわね。まあ、いいわ。他のお話はないの?」


「では、続けてこのような物語はいかがでしょうか?」と、僕は話し始めた。


         *


「魚釣りのチート能力」


 むかしむかし、あるところにひとりの漁師が住んでいました。

 実は、この漁師、別の世界から転成してきた人間で、ある特殊能力を持っていました。それは「魚釣りのチート能力」

 漁師が水の中に釣り糸を垂れると、海でも川でも湖でも、何か「便利な道具」や「珍しい生き物」が釣れるのです。

 ちなみに、この能力は1日に1度しか使えません。1回使ってしまうと、翌日の太陽が昇るまでは効果を発揮しなくなるのです。


 漁師はこの能力を使って、お金には全く不自由せず、自由気ままに暮らし続けていました。

 けれども、能力自体は人には明かしません。明かせば、人から(うらや)まれたり、嫉妬の対象になってよからぬコトになると考えたからです。


 けれども、人の口に戸は立てられません。

 市場でいつも「珍しい魚」や「高価な器」を売りさばく漁師を見て、「どうも、あいつはおかしいぞ」と人々のウワサになってしまいました。


         *



「おっと、そろそろ夜が明けそうですね」と、僕は話を引き延ばす。


「アラ、ほんと。夜が白んできたわ。じゃあ、続きは、また明日の晩に」


 こうして僕はシェヘラザードから話を終わらせることを許された。

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