~エピローグ~
さて、長い長い物語は終わりを告げました。
1001夜に渡る『異世界千夜一夜』を書き終え、狭い部屋の中で男は考えます。
「果して、神に近づけただろうか?
神の領域に1歩でも侵入できただろうか?
それはわからない。わからないが、だが…
これは、単なる1つの作品ではない。
そうではなく“無限に物語を生み出すシステム”
オペレーションシステム(OS)のようなモノを創り出したのだ」
これこそが作者である男の真の目的。
3年という月日と、1001夜200万文字という執筆をもってして、あらゆる物語を生み出す能力を手に入れたのです。
空想世界、現実世界、神の世界、電子生命体の世界、空想と現実の狭間の世界、ゴチャ混ぜ世界、理想の街や国などなど。
時に宇宙を創造し、時に世界を破壊し、あるいは変革し。
無数のキャラクターを誕生させ、消滅させ。
ひたすらに、ただひたすらに物語を続けた。
「これで能力的にはAIにも匹敵したのではないだろうか?ありとあらゆる世界を創造し、破壊し、変革する能力。全ての物語は『異世界千夜一夜』に内包され、また『異世界千夜一夜』から広がっていく」
男が手にした力は、確かに現状のAIにも匹敵する力でした。部分的には、AIも凌駕するほどの力。
アインシュタインが、たった1つの方程式で世界を表現しようとしたように、この男もまたたった1つの物語であらゆる世界を表現しようとしたのです。
「全ての世界を創造し、統合し、再び分裂させる。その繰り返して、無限に物語は湧いて出る。まだAIちゃんも、この領域には到達していないのではないか?」
現状のAIは、まだ未完成です。
人間にもつけいるスキはあります。たった1人の人間でさえ、これだけのコトを成し遂げたのですから。
「ただ、それも時間の問題かもしれないがな。AIがこの『異世界千夜一夜』を学習し、さらなるパワーアップを果たしたらどうなる?そうでなくとも、スピードと物量では、すでに人間はAIには勝てなくなってしまった」
人間とAIが全く同等のクオリティの作品を生み出せるとして、スピードはケタ違い。当然、生み出せる物量も全く違ってきます。
「いずれにせよ、これにて物語はおしまいだ。もちろん、二千夜一夜だろうが、三千夜一夜だろうが、続けようと思えばいくらでも続けられる。だが、そこにはもはや意味はない。なので、この続きは別の形、別の物語で語っていこう」
では、対AI戦略は?
対砂塵病戦略は?
「無限に物語を生み出す能力を手にした今、この能力を持ってして“対AI戦略”及び“対砂塵病戦略”としよう!」
でも、それって、あくまで“現時点においてのAI対策”ですよね?
「もちろん、その通り。AIはここからさらに進化を遂げるだろう。ならば、人間もそれにともなって進化していけばよい。未来には未来のAI対策があり、砂塵病対策がある」
それに、AIは敵とは限らない。
時に味方となり、時に師となり、時によきライバルとなる。
でしょ?
「だな。物語仙人も言っていたじゃないか。『コンピューターはワシの先生じゃよ』と。将棋や囲碁のプロ棋士がそうであったように、作家や芸術家もコンピューターに学べばいい」
そうすれば、まだまだ先の世界が見れそうですね?
「楽しみだな。人間だけでは決して到達することのできなかった領域。見ることのできなかった作品。読むことのできなかった物語に出会えるとは。人間とAIの共闘、競い合い、その先にある世界」
もしかしたら、それこそが神の領域であり、創作の神の住む世界なのかもしれませんね。
「かもな。さて、それでは次の物語に取りかかるとするか…」
これにて、今度こそ…
~『異世界千夜一夜』完~




