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1-1 じいちゃんと私

  ◇


 自分が他人と何かが違っていることに気がついたのは、まだ世の中の常識と非常識が曖昧にしか区別できない六つか七つくらいの頃だったと思う。


 物心ついた頃には〝普通〟の人間には視えないそれら――〝あやかし〟が視えていて、開業医をしている親代わりのじいちゃんの周りにはいつだってたくさんのあやかし達が存在していた。


『他人に話してはいけないよ』


 そう言い聞かされて育った私は、きちんとそれを守って暮らし、勉学の合間には自ら好んでじいちゃんの仕事を手伝った。


 表向きは偏屈な……あるいは藪、闇医者などと揶揄されるじいちゃんのその実態は、あやかし専門のお医者さまだ。


 あやかしとは人ならざる者で、幽世と呼ばれる夢幻の世界から現世(うつしよ)と呼ばれるこの世界にやってきて、人に化けていたり、人の中に棲んでいたり、あるいは人目を憚って街のそこかしこにこっそり棲みついていたりもする。


 つまり、普通の人には視えないあやかし達と常日頃対峙しているじいちゃんも他人とは何かが違っていて、それを生業として生計を立て、どういうわけか孤児である私を施設から引き取り、今日(こんにち)まで甲斐甲斐しく養い続けてくれたのだ。


琴羽(ことは)よ、大學進学おめでとう。いいかい、向こうの世界ではくれぐれも鬼には気をつけるんだよ。さぁいっておいで。壁にぶつかった時はいつでもここへ帰って来るんだよ』


 そうして入学の時を迎えた私は、京都・貴船町にあるじいちゃんの診療所兼自宅を出て、学校近隣の学生寮に入寮。入学式を迎える明日から人と少し違った大学生になる。


 學び舎の場所は、幽世。


 同窓生のほとんどはあやかしたち。


 じいちゃんの母校でもあるそこは、じいちゃんと同じ〝妖医(あやかしい)〟を目指す私にとってはこれ以上にない理にかなった修練の場となるだろう。


 未知なる世界への期待と不安、そしてじいちゃんからの声援を胸に、私は貴船の自宅を後にした。



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