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待ちに待ったその瞬間

スファちゃん視点からのスタートです

 外に出られる唯一の機会である洗濯物を干す作業のために久しぶりに外に出た。

 連れて来られた時にこっそりと近くの木に結んでおいた細い黄色リボンの上から、見覚えのある細い赤いリボンが結んであった。


 思わず辺りを見回す。

 でも、いつもと変わらない街特有の喧騒しか聞こえない。

 でも、それだけで胸が熱くなる。


 細い赤いリボンの端をそっと掴んでみる。


 (フィリップが近くにいる)


 彼の手が触れたであろう細い赤いリボン。

 それに触れただけで、彼の手に触れたようで涙が溢れそうだった。


 慌てて、ポケットから同じ細い赤いリボンを取り出し、その上から願いを込めて結ぶ。


(貴方が無事でありますように)




**********


 プレオープンを知らせる花火の打ち上げ会場である河原には、子どもやその親など若い人を中心に多くの人が来ていた。

 その人の多さに驚くとともに、少しでも爆発の危険から遠ざけることが出来て良かった、わたしの手書きのチラシを見て人々が集まってくれたことに胸を撫で下ろす。


 そして、警備や誘導の方々(本職はセイサラの騎士団の方々)に従って、思い思いに座り、今か今かと夜空に打ち上がる花火を楽しみにしている様子だった。


 19時前、皇太子殿下とともに人々の前に進む。

 さすがは皇太子殿下。

 とても慣れた様子で微塵も緊張を感じさせない。

 それに比べて、わたしは手と足が一緒に出るぐらい緊張をしている。


 アマシアでの旧友が前の方を陣取っていてくれたのが見え、思わず笑顔になり幾分か緊張が解れた。

 月並みな挨拶は(こな)れている皇太子殿下がしてくださった。

 アッサムの身代わりのはずなんだけど、どっからどう見ても皇太子殿下然だ。

 そしてわたしも一言喋るように促される。


「紹介に預かりましたリアーノです。皆様の想いや言葉が大事な人に届くお手伝いをさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」


 皇太子殿下と目配せをし、タイミングを合わせて頭を下げると割れんばかりの拍手を頂いた。


 その拍手を皇太子殿下とともに一身に浴びながら、皇太子殿下がわたしにしか聞こえない小声で呟いてきた。


「リアーノ、これから新しい生活が始まるね。覚悟は出来てる?」

「???」

「やっぱり。リアーノはまずは「お姉様」の救出からだね」

 皇太子殿下がクスクスと面白いモノを見たかのように目を細めて笑われて、悪戯っ子のような表情をされた。


 そして、皇太子殿下の合図で花火の導火線に火がつけられて、打ち上げ花火が始った。


 待ちに待ったその瞬間がきたのだ。



*********



 少し遠くで花火が打ち上がる音が聞こえた。

 それは雷鳴のようにも聞こえる。


 「我々も行きましょう」


 アッサム殿下が屋根の上で楽しそうに微笑み、正面から突入を試みるため外で待機をしているジークと騎士団にもう少し待てと合図を送る。


 「アッサム殿下、総指揮は?」

 「せっかく、高いところに登れる機会なんです。いましばらくは総指揮も暇なので、こちらに加勢します」


 うれしそうにそう言うと、アッサム殿下は縄梯子を片手に、いとも簡単に隣の屋根に飛び移るようなことをやってのける。

 ジークからは聞いていたが、実際に見ると圧巻だ。


 あっという間に隣の建物の屋根裏部屋の窓際まで行かれ、縄梯子を取り付けられた。

 私も遅れを取るまいと意を決して、隣の建物に飛び移る。

 そして、アッサム殿下が短剣を構えられる側で、屋根裏部屋の窓を3回ノックすると、愛しい顔が目に飛び込んできた。


「ステファニー!!!」

「来てくれると信じていた」


 恥ずかしそうに微笑むステファニーは少しやつれているように見えた。


「ステファニーは大丈夫か?」

 満面の笑顔で頷いてくれる。


「子どもを先にお願いしたいの」

 私は無言で頷いた。


 一部始終を聞いていたアッサム殿下が短剣を鞘に戻し、窓際まで来た子どもをひょいと抱き抱えると再び、身軽に屋根を歩いていき、仮店舗側のベランダで待機していた騎士団に子どもに預ける。

 この作業を何度か繰り返し、子どもは全員救出できたようだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

ボチボチ更新中!


★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります。



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