表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/103

チーム・ダン爺

読んでいただきありがとうございます。

 夕刻、いよいよ「その時」が刻々と迫ってきていた。

「チーム・ダン爺」(※アッサム命名)の面々も朝から各所に打ち合わせに行き全ての準備を終わらせて、この最前線である仮店舗に再集結をしている。


 今日1日、お隣は何の変化もなかった。

 わたし達の作戦に気づかれていないと喜んでいいのか、それともなにかの罠なのか。

 

 わたし達は2つの班に分かれることにした。

 お姉様とニシアから攫われた人達の救出班が当然の如く、フィリップ様だ。そして、ジーク。

 ニシアの国民を救うのは筆頭公爵家として当然のことだとフィリップ様が発言をし、ジークが深く頷いていた。

 

 お店のプレオープンの花火班はもちろんわたしとそして、なんと皇太子殿下だ。

 

 昨晩、皇太子殿下が用事を済ませて仮店舗に戻って来られた時は、アッサムやフィリップ様にわたしは、皇太子殿下のその姿に言葉を失った。


 皇太子殿下の髪の毛が!!

 アッサムの髪型によく似せた黒髪のカツラをどこからか調達してきたのか、うれしそうに被っておられた。


 皇太子殿下はアッサムの実兄であるから、ふたりはどことなくは似ていたが、アッサムの身代わりを?と思ってしまうほど、今回は似せてきていた。


 さすがに皇太子殿下と一緒に外出していたジークは事情を知っていたみたいで、わたし達が固まり驚く(さま)を見て、必死になって笑いを堪えている。 

 アッサムが皇太子殿下にすぐさま、どうされたのかと事情をお尋ねしたら、ずっと公務で「表」に立ち続けている自分は面が割れている可能性が非常に高いこと、王都サハに近いダンカの街などをウロウロする時は旅装のフードコートなどで顔を隠しているとはいえ、自分は目立ち過ぎるからアッサムに似せていると説明された。


 そう。皇太子殿下は表の仕事。

 アッサムが今回のような裏の仕事。

 棲み分けがされている。


 そして、今回の事件の総指揮と花火大会の両方を仕切らなければならないアッサムは物理的に両方をすることは難しい。

 だから、花火大会のほうを皇太子殿下が「アッサムの身代わり」をさせてほしいとのことだった。

 その申し出に誰も反対しようもない


 わたしとアッサムに扮する皇太子殿下は、店の「オーナー夫妻」として朝から花火職人さん(職人さん以外はセイサラ王国騎士団の人だった)と会場である河原で、人々の誘導や警備、式次第などの細かい段取りの打ち合わせをした。

 そして仮店舗に帰ってきてからは、わたしはひたすらチラシを作成しては店前で配った。

 1人でも多くの人にチラシが行き渡り、避難してくれますようにと願いを込める。


 そして、総指揮のアッサムはこの仮店舗の最前線に残る。



 金髪のカツラもつけず、アッサムのお下がりの服を着ず、「いつものリアーノ」に戻ってみんなと最終確認をしているとジークが上か下まで何度も見てくる。

 旧友にもらった服がそんなに気になるのだろうか?


「リアーノはその格好でいいのか?」

 ジークが驚いたように聞いてきた。

「もう、いつものわたしに戻って大丈夫。壇上でのプレオープンの挨拶が終わって花火が始まったら、人々の誘導は騎士団の方におまかせをして、すぐにお姉様の救出班に加勢するわ。いざとなったらお姉様の身代わりをしようと思っているの。だからこの姿なのよ」

 アッサムには事前に相談済みだ。

 ジークが少し納得をして、チラッとアッサムを見てアッサムに聞く。

「いいのか?」

 アッサムが軽く頷いた。

「いざとなったら、俺がなんとかする」


 ジークがアッサムが本当は言いたかった言葉を汲み取ったようでニヤニヤする。


「いざとなったら、「俺が守る」だろう」

 ジークがすっごい悪そうな顔でアッサムの言葉をオウム返しのようにすると、アッサムがとても嫌そうな顔をしてから、少しフィと目を逸らした。

 照れた?耳が真っ赤だ。

 アッサムがみんなの前で言いにくいことをサラッとジークは言ってのけて、アッサムをからかって楽しんでいる。

 これって、いつぞやの仕返しを地味にされている?


「フィリップ様、お姉様は高所恐怖症ではないですか?作戦のひとつである、攫われている方々を隣の建物の屋根裏から縄梯子での救出はお姉様には無理では?」

 違和感を感じていた時から気になっていたことをフィリップ様に問う。

「どうして高所恐怖症のことを?」

「お姉様の私室に滞在していた時にベランダの鍵が錆びていて、鍵を開けてベランダに出られた形跡がなかったからです」

 フィリップ様の瞳が大きく見開いた。


「その通りだ。ステファニーは高所恐怖症なので救出は正面入口からしたほうが早いかも知れない」

 やっぱりそうだったのね。


「「「わかりました」」」

 その場にいた皆が頷く。


「お姉様はいまから救出に向かうことを薄々でも知っておられるんですか?」

 その質問にフィリップ様がポケットから色とりどりの細いリボンを取り出し、わたしに見せてくれた。

「干してある洗濯物にこのリボンがあったから大丈夫だ。これを私達はいつも持ち歩いていて、決められた場所で結ぶリボンの色によって伝えたいメッセージが変わるんだ」

「そうだったんですね!!!」


 だから、フィリップ様は洗濯物でお姉様の無事を確認できたのね!

 パンツに名前を書いているのかしら?という推測は全然違った。

 うっ。うっ。お姉様ごめんなさい。


「フィリップ様、もしかしてこれはおふたりの秘密だったのでは?」

「リアーノは察しがいいね。そうだよ。幼い頃からふたりだけで手紙のように使っていた。例えば、黄色のリボンを結んでいたのなら「今日も元気だ」という意味なんだ。私達はお互いが忙しくいつでも会えるわけではなくすれ違うことも多かったから、こういうことを思いついたんだ」


 それを聞いたアッサムと目が合う。


 幼い頃はわたし達はずっと側にいた。

 それがどんなに幸せなことだったのか、いま改めて実感をする。


 ひとしきり確認事項などを済ませる。

 「では、みなさんよろしくお願いします」

 アッサムのそのひと言でそれぞれが持ち場に向かう。

 わたしも皇太子殿下と一緒に花火が打ち上がる河原に向かおうとした時だった。

 


兄上(・・)、リアーノをよろしくお願いします」


 アッサムが皇太子殿下を呼び止め頭を下げた。

 アッサムはなかなか頭を上げない。


 皇太子殿下が珍しく目を見張り驚いた表情を一瞬されたかと思うと優しく微笑まれ、その後晴々とした表情で思いっきり破顔された。


「もちろんだ。弟の頼みだ。この身を挺しても義妹を守ると約束をする」



 時刻はもうすぐ19時。

 花火が打ち上がったのを合図に各地一斉に行動開始となる。

読んでいただき、ありがとうございます。

がんばって、ボチボチ更新中。


★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります。



☆お知らせ☆

第1章がコミカライズされました。

「幼馴染は隣国の殿下!?〜訳アリな2人の王都事件簿〜」

まんが王国さんで先行配信中。

他電子書籍さんにて配信中。

作画は実力派の渡部サキ先生!

コミカライズはよりわかりやすく、よりキュンとなります!

原作はなろう、ノベルバで投稿中。

マンガも原作もお楽しみ頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ