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お知らせの思惑

読んでいただきありがとうございます♪

 以前、本屋だった名残りで外壁から突き出た看板であるアイアンサインプレートは本屋のままだけど、長い間そのままになっていたために蔦が絡まり、なにの看板かよく見えない状況になっている。

 時間がないのでこれ幸いにそのままにして、扉に木の簡単なプレートを掛け、それを看板として店舗は出来上がった。


「カード・手紙の専門店 代筆も承ります」

 いまは仮の店舗。

 店の本来の目的は隣の建物の監視と突入の時の足がかりだ。

 だから、店の名前はあえてつけなかった。


 識字率がそう高くないダンカでは、代筆という仕事は重宝をされるだろうし、需要もそこそこありそうだ。そして、文字の読み書きを教える事業を一緒にやってみたいと夢は膨らむけど、いまはお店の運営を考える時ではない。


 いまはこの両国間を巻き込んだ事件の最前線本部だ。


 新居と開店の準備をしていると近隣には思われているので、いまは様々な人が出入りしても少しもおかしくない状況になっている。

 だから、各地からの報告も「鳩」は少なめだ。(やたら滅多、急に鳩が飛んできても恐怖でしかないしね)


 おじいさまが率いる特殊部隊の方や、騎士だと思われる体格の良い人が、ダンカの街の人に紛れる平民の変装をして荷馬車に様々なものを積んで持ち込んでくる。

 武器、梯子、網、ロープ…

 すべて、テーブルや椅子などの家具の梱包に紛れている。

 それらは全て、昨晩遅くまで綿密に打ち合わせした通りのものだ。救出に向けて、着々と準備が進む。

 今朝、ジークと皇太子殿下がふたりで出掛けたのもこのこともあったからだ。

 アッサムは梱包を解いて指示を出し、搬入を手伝っている。


 フィリップ様はずっと隣の建物の監視だ。

 お姉様があそこにいるとわかっているのに、いますぐに踏み込んで救出が出来ない歯痒さとその焦燥感が伝わってくる。

 苦しそうな表情でずっと建物を監視しておられるからだ。


 何事もタイミングが全てだ。

 この企てに関わった全ての者を一網打尽にするには、時が満ちるのを待つしかない。

 昨晩、気持ちが早るフィリップ様に皇太子殿下が説得されていた。


 各地から、次々と準備完了の報告が入る。

 もちろんキーモンさんも海の上でその時を待っているらしい。

 特殊部隊のみなさんや、セイサラ王国の騎士団は秘密裏に各鉱山や各都市、街道に配置され、団体の拠点や行動の監視体制が敷かれている。

 いつでも突入出来るらしい。

 

 おじいさまたちもニシア国内で準備が整いつつあるらしい。

 黒幕を楽しく追い詰めているとのことだ。


 そして、鉱山から報告があった消えた火薬の量から推測される爆弾の威力、数量、そして想定される被害などの細かい数字が上がってくるがこれはアッサム殿下の執務室の面々からだ。

 ライラさまやダーリア殿の計算では、火薬がどこにもまだ流通していないと仮定して、ダナンの街でそれらが一斉に爆発した時は、街の1/4ぐらいが軽く吹っ飛ぶらしい。恐らく、地面に5メートルの穴ができるだろうと。

 人口が過密であるダナン。

 もしこれが実際に起こったら、一体どれだけのひとが被害に遭うのかと想像するだけで身震いをしてしまう。

 なんとしてでもこの計画を阻止しなければならないし、慎重にならざるを得ない。


 古の豊穣の女神の復活を望む者がいるのは理解できる。

 豊作を女神に祈り、感謝する。信仰心は決して悪いものではない。


 ただ、幻覚草で人間の思考力を失わせ、簡単に使える「人」を作り出し、その者たちをモノのように扱い爆弾を抱かせ、各国に同時多発的に自爆テロを起こし、人々の心を恐怖に陥れて正しい判断が出来なくなった状況で信仰心を煽るつもりなのだろう。

 そのやり方が許せない。

 人を人と思わないそのやり方がもっと許せない。

 お姉様も同じ思いでいまは孤軍奮闘されているのだろう。


 

 「リアーノ、どうした?難しい顔になっている」

 アッサムの言葉にハッとする。

 店のプレオープンのお知らせを書いているペンを持つその手に相当の力がこもっている。

 このままでは折ってしまう勢いだ。


 「あっ、うん。大丈夫」

 きっと、アッサムにすぐにバレるであろう作り笑いで平静を装う。

 そして、すぐにバレた。


 「リアーノの怒りも不安もわかる。きっとステファニー王女殿下も大丈夫だ。すべて上手くいく」

 あの大きな手でいつものように頭をポンポンと撫でられる。

 わたしはこれだけで落ち着けるし、元気になれる。

 安堵からか目頭がじわりと熱くなるがこれはバレたくないので、少し横に視線を逸らし俯いた。

 


 美しい豊穣の女神を描いた紙が各地にばら撒かれている。

 それはこれから人々を恐怖に陥れる序章に過ぎない。


 それに対抗するようにこちらは陽動作戦で、こちらも人々の興味を集めることを書き、敵を撹乱させる計画を遂行する。

 

 「ペンは剣より強し」と先人は上手く言ったものだ。

 わたしの武器はこれだ。

 再びグッとペンを力強く握り締め、ひたすら店のプレオープンのイベントのお知らせを書き続け、手の空いたアッサムが表の通りで配りまくっていた。


 アッサムが配るわたしの渾身(こんしん)の手書きの200枚以上のお知らせには、明日の夜19時にこの店舗より少し遠い河原でプレオープンを知らせる花火の打ち上げが行われるイベントの告知が記載されている。


 そう!明日のこの時間に各地同時に教団関連の場所に突入をする。

 そして、わたしたちもようやくお姉様たちの救出に向かえる。

 夜はまだ少し肌寒いが少しでも多くの人々が河原に集まってくれることを切に願う。

 そう、万一の爆発の時には、被害に遭わないように避難を兼ねているのだ。


 どうか、どうか計画通りに上手くいきますように。いや、きっと上手くいく!!

 わたし達「チーム・ダン爺」(これは勝手にアッサムが名付けた)ひとりひとりがずっと心の中で強く思っている。

読んでいただき、ありがとうございます。

ボチボチと更新中。


★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションがかなり上がります。



☆お知らせ☆

第1章がコミカライズされています!!!

「幼馴染は隣国の殿下!?〜訳アリな2人の王都事件簿〜」

まんが王国さんで先行配信中!

各電子書籍さんでも好評配信中!!

毎月15日、最新話配信!

作画は実力派の渡部サキ先生!

コミカライズの表紙の絵を見たことがありますか?

1巻も2巻もめっちゃ可愛いんですよ♡

2巻はアッサムのムクれた顔を想像してしまいます笑

わたしはもちろんスクショで待ち受け画面にしております笑

チェックされてない方はぜひ一度、ご覧あれ!!

一見の価値あり!!

マンガも原作もお楽しみ頂ければ幸いです。

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