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最善の方法

読んでいただきありがとうございます。

「アッサムは、リアーノは落ち着いた頃合いを見計らって、ステファニー王女殿下を救出しに王城から飛び出す日が必ず来るからと。だからその前に確実で安全に君を確保しておきたいと話していた。だから協力したんだ」


 確かに。その通りだわ。

 完璧にアッサムに行動を読まれている。

 舞踏会も無事に終わったし、このままお姉様の救出に進展がないようなら、わたしがダンカまで行って、囚われているお姉様の身代わりをしても良いと思っていた。


「そうだったのね…だから、わたしがすぐに飛び出すような作戦を」


 ジークが一連の首謀者ではなく、わたしの誤解だったとわかって安堵し座り込んでしまったわたしに、ジークが優しく手を差し出してくれた。


 その手を遠慮なく取り立ち上がると、少し緊張気味のジークの瞳をしっかりと見た。


「ジーク、いろいろありがとう。貴方の迫真の演技がなければ今ごろはまだ、お姉様の部屋でわたしに出来ることをうじうじと悩んでいたわ」


 本当にそう。

 ジークが自分の心を犠牲にしてまで、あんな黒い演技をしてくれたから、いまここにいられる。


「嫌な役をやってもらってごめんなさい。そして、ありがとう」


 少し照れくさそうにしてジークは視線を外し、小さく首を縦に振った。

 その横顔が泣きそうだったのは見なかったことにしたい。


「人目につかないようにリアーノ嬢がすぐにここを出るにはこれが最善の方法だと私も思ったよ。だから、この作戦に賛同した。それにニシアの陛下やダンフォース様が簡単に愛娘のリアーノ嬢をここから出すわけがないしね」

 横でジークとわたしのやり取りを見守っていた皇太子殿下が「申し訳なかった」と付け加えて、謝られる。


 わたしはただただ恐縮するばかりだ。


「このままリアーノが王城で身代わりを頑張っていたら、ステファニー王女殿下も兄様もふたりとも戻って来なかった時は、本当に俺たちは無理矢理でも結婚させられるぞ」

 ジークがわざと深刻そうな顔をする。


「ええっ???そうなの??」

「そうだな。その可能性は十分にあり得る。政治とはそういうもんだ」

 皇太子殿下が意味ありげに頷かれた。


「さほど、驚くことでもない。このままステファニー王女殿下の行方が不明なら、リアーノ嬢は間違いなく永遠にステファニー王女殿下の身代わりだな」

「そうだね」

 ジークも横で頷いている。


「それにしてもやっぱりな。アッサムの言ってた通りだ。ステファニー王女殿下は必ず戻って来るとリアーノは信じているんだろう?」

 ジークが少々呆れ顔で聞いてくる。


「当たり前じゃない」

 ジークはいまさらなにを言っているのよ。

 お姉様はきっといまもダンカのどこかでご無事なはず。


 その言葉を待っていたのか、ふたりが嬉しそうに微笑む。


「あの… 本当にアッサムが変な作戦をお願いしてご迷惑を掛けてごめんなさい」

 改めて、おふたりに深々と頭を下げた。


「腹黒いアッサムが俺と結婚させられそうな環境にずっとリアーノを置いておくわけ訳がないだろう。本当は自分で攫いに行きたかっただろうけど、いまは時間がないからすごい我慢しながら、信用のある俺に託したんじゃない?」


 ジークが可笑そうに笑って「妖精ねぇ」と意味のわからないことを小さく呟いてはまた笑った。



「ステファニー王女殿下の侍女さんはターナさんという名前だったかな?ターナさんは孤立無援じゃないから心配しなくても大丈夫だよ。王妃殿下も一枚噛んでいるからね」

 ジークがしてやったりと言わんばかりのドヤ顔だ。


「ええっ???」

 わたしはまた思ってもないことで、驚かされる。


「王妃殿下に秘密の通路の場所を教えてもらわなかった?」

「教えていただいたわ!でも、ベランダからの方が見つかりにくいし、そちらのほうが確実かと思って…」


 あの時のあれはそういうことだったの?

 

「王妃様は危ない目に遭わずに秘密の通路から

リアーノには行って欲しかったんじゃないかな?」

「わたし、そんなことを知らずにベランダからとかすごく恥ずかしいんだけど…」

「多分それはアッサム以外、みんな想定外だったと思うよ」

 皇太子殿下もジークもすごく愉しげだ。

 さては、おふたりとも始めから見ていたのね。

 穴があったら、入りたい… いますぐに。


「ステファニー王女殿下の留守は王妃殿下やターナさんに任せておこう」

 ジークの一声に深く頷く。

 ターナさんのことが心配だっただけに少し安心した。


「おじいさまや陛下はこのことは?」

「こんな俺らの陳腐な作戦に気づいているだろうけど、黙認してくれていると思うよ。あの方達は個人の気持ちを優先できる立場じゃないからね」

「そうだな。あの身内だらけの場でも国益のことを考えると、本当の気持ちは言えなかっただろうし、あっちはあっちで動いて大変だろうしな」

 ジークと皇太子殿下が気の毒そうに話す。


「おじいさま達は大丈夫なの?」

「大丈夫さ。あちらはこういうことには手練れていらっしゃる。ここまでいろいろとわかってくると、黒幕探しもあっという間なんじゃないかな」


 おふたりが顔を見合わせて、悪巧みが成功したかのような満足気な顔をして、クスッと笑われた。


読んでいただき、ありがとうございます。


★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります。



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毎月15日更新!

詳しいこと等は活動報告でっ。

マンガも原作もお楽しみ頂ければ幸いです。

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