頼みごと
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「ダン様、お願いがあります。セイサラ王国のダンカに私もお供させて頂くことを許諾して頂けますか?」
フィリップ殿が縋るような眼でダン爺に同行の許可を求めた。
「兄さん!!なにを言ってるんだ!明日は今日のご来賓のお見送りもあるし、万が一にでも兄さんになにかあったらどうするんだっ!!!」
ジークが勢いよく立ち上がり、珍しく声を荒げる。
「ステファニーがいないと私はここにいる意味なんてないんだ!ジークが私の立場なら何がなんでも助けに行くだろう?」
いつもは優雅で穏やかな雰囲気のフィリップ殿が猛々しい表情でジークを睨む。
「それは…」
ジークがフィリップ殿の勢いに押されて、少し怯んだ。
(なんでも卒なくこなしそうなフィリップ殿が感情を顕にするとは。この兄弟も仲が良いんだな)
「フィリップ殿、一緒にダンカに急ぎ向かいましょう。きっとステファニー王女殿下もフィリップ殿が救出に来られることを待ち望んでおられます。陛下もダン爺も良いですよね?」
俺はニシアの陛下を見据える。
「アッサム殿下…」
ニシアの陛下が眉間にシワを寄せながらもやれやれという複雑な表情を浮かべて、頷かれた。
ダン爺は笑顔で応えてくれる。
「ありがとうございます!ジークもそれで良・い・よ・な?」
少し強めの語彙でジークに同意を求めると、ジークが少し拗ねた表情で頷いた。
「ところで、また明朝は同盟国と会議をする必要が出てきたな」
皇太子殿下がふぅと横でため息を吐く。
「そうですね。豊穣の女神の復活を望む者達の件と火薬の因果関係の説明が必要ですね」
「同盟国内でもきっと同様なことが今まさに行われている可能性があると思われるしな。私が残って同盟国には説明をしよう。ここにおられる皆様はそれでよろしいですか?」
皇太子殿下のありがたい申し出に誰も異議はない。
誰もが頷いた。
「あの…舞踏会も終わったことですし、明日のご挨拶を終えたら、わたしもお姉様の救出に行きたいのですがよろしいでしょうか?」
リアーノが恐る恐ると言った感じで申し出る。
もちろん結果はわかっている。
「なにを言ってるんだ。ステファニーの救出は危険が伴う。リアーノは残りなさい」
ニシアの陛下がピシャリと制す。
「そうだ。陛下のおっしゃる通りだ。リアーノにまでなにかあったらどうするんだ。ステファニー王女殿下の身代わりを務めていなさい」
ダン爺も同様だ。
「………」
リアーノは今回ばかりは無理を何回言っても駄目だとすぐに悟ったようだ。
「わかりました」
蚊の鳴くような声ですぐに返事をしていた。
それからすぐに俺とフィリップ殿とダン爺でセイサラ王国のダンカに向かうことになった。
「アッサムも何日寝てないんだ?」
「なぜ、わかった?」
会議の後にジークに声を掛けられた。
「いや、会議を仕切るアッサムが珍しく余裕がない気がして…」
(俺がフィリップ殿のセイサラ行きを強引に押し切ったのがそう見えたか)
「想像に任せるよ」
「兄さんも寝てないんだ。さっきもあの調子だったろ。だいぶ精神的に参っているみたいだけど、よろしく頼むよ」
「わかった。それより、俺もジークに頼みがある」
「アッサムの頼まれごとは重いからいやだ」
そう言って、ジークはニタニタと笑う。
俺は横にいたリアーノに視線を向ける。
「ジーク、リアーノを頼む」
「またかよ」
横にいたリアーノにも聞こえていて、3人で思わず顔を見合わせて笑った。
♢
あれから、アッサム達は深夜にも関わらずニシアの王都カイカックを出発をした。
きっと、夜にでも出港出来るキーモンさんの船に乗るのだろうか。
おじいさまはわたしにくれぐれも王城で大人しくしていなさいと何度も言っていた。
わたしは翌日、ニシアの陛下と王妃殿下とご一緒にステファニー王女殿下として、たくさんの来賓のお見送りをした。
さすがにフィリップ様が不在の中では、わたしも声を発してご挨拶をしなければならず、「お姉様ならどんなご挨拶をするか」をずっと意識しながら挨拶を続けた。
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