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屋根は危険です

「リアーノ、今日のお昼休みは時間ある?貿易商が来ていて広場でお店を出しているんだけど、一緒に見に行かない?」

 ライラさまからお誘いです。

「そうなんですね!それはすごく興味があります!行きます!」

 もう、二つ返事です!

 さすがは王宮。貿易商自ら出向いて、お店を出してくれるんだ。

もしかして、アッサムの家も来ているのかな。来ているといいな。ちょっぴり期待してしまいます。


「すごい人ですね。」

「いつもこんな感じよ。」

 お昼ごはんをそこそこにわたしたちは、出店へ。割といろいろな物が置いてあって、東方のお茶や香料、布に南方のドライフルーツに髪飾りなどそれは多種多様。

 辺りを見回しますが、アッサムのとことは違うようです。

 目移りしながらも楽しんでいると、独特の風合いを持つ紙に目が留まる。厚手で美しい白色だ。

「お嬢さん、お目が高いね。それは東方の国に伝わる独自の製法で作られた代物だぜ。なかなか手に入らないぜ。」

「うーん。そうなんですね!では、これを1枚ください!」

 コレクター魂に火がつきます。

 少し奮発しましたが、思い切って購入です。

「15ヤーロだよ。」

では、20ヤーロで。と渡し、5ヤーロのお釣りをもらいました。


???? あれ… ??


 お釣りの5ヤーロのお札の手触りに若干の違和感が… でも、お店の人も気づいていない。

 わたしの勘違い…かな。


 悪気もなさそうです。

ここでとやかく言って、5ヤーロで騒ぐのもよくないので、とりあえずスカートのポケットにクシャとお札をツッコミました。


「どうしたの?変な顔をして。」

「ううん。なんでもありませんよ。さぁ、ライラさま早くしないとお昼休みが終わってしまいます。」



 最近、わたしはお気に入りの場所がある。

寮から少し離れた倉庫群の一角にある建物で、木を蔦って、屋根に登れるんです!

 発見した時は思わずニンマリですよ。

 もちろん、屋根に登ってウロウロは、隣の家のアッサムに会う時も屋根伝いに行き来していたので朝メシ前。


 王宮は山城なので、この倉庫も高いところにあり、王都の街並みが一望できます。

 夜しか来たことがないけど、家々に灯が点り幻想的な雰囲気です。


 今日もよく労働したな。

 夕ご飯を食べ、寝るまでの少しの間の時間をここで過ごすのは至福のひととき。

 山から吹くおろす風が心地よい。

 スカートのポケットから昼間のあのお札を取り出す。

 やっぱり手触りも少し厚みも違う。

 少し舐めてみる。

 厚さが違う。やっぱりいつものお札と違うものだ。


…偽札…。 まさか…

…たまたま?

偽札を作る罪の重さは殺人より重い。


「…どうなんだ。」

「ご報告が遅れまして…。」

倉庫の側で声がする。

こんな時間にこの倉庫に人が来るなんて…

見つかったら怒られると思い、息を潜める。

わたしに気づきませんように。


「工場は順調です。紙もなかなか良い物が手に入りましたよ。」

「そうか。試作はどんな具合だ。」

「いい仕上がりですよ。気づくものはそういないでしょう。」

一体、なんの話しをしているんだろう。

今日は半月なので、月明かりだけでは誰だかよくわからない。

そっと、下を覗いてみる。

ぽっちゃりお腹の男性のフォルムに見覚えが…。思い出せわたし!


「おまえ、ここで使ったのか!!」

「実験ですよ。でも大丈夫ですぜ。昼間は混んでたこともあるけど、本当に誰も気づきやしないんですぜ。」

昼間… あの貿易商か…?

「でも、ここはまずい。明日はあの偽札は使うな。」


もしや… いま、わたしが握っているこのお札の話か。

偽札!!!


大変なことを聞いてしまった!

絶対、見つかってはならない。

お札を握る手に自然に力がこもる。

その時、真横に人の気配が!

話しに気を取られて気づいていなかった。


「リアーノ嬢、僕だよ。驚かせたね。でも、声を出さないで。」

 長い髪を束ねた眼鏡の麗しい男性が人差し指を唇に当てて、小声でシッーと合図される。

 わたしは咄嗟にコクリと頷く。


レナード殿下が座っているわたしの横に立っている。

 驚きで声も出ないが、まだ下にいる2人の会話が終わるのを息を殺して待つ。


 どうやら、終わったようで、わたし達に気づくことなく、貿易商達は立ち去っていった。


「リアーノ嬢、どうしてここに…。」

なんて、説明したら良いのだろうか…

いま、偽札の話しをうっかり聞いてしまったことを話せばいいのか。

その前に屋根の上にいるのは相当怪しいよね。

「…あの… 偶然、で…。」


 殿下と同じように立ち上がろうとして、緊張で足が強張っていて動かない。


グラリーー


バランスを崩してしまった。

落ちる!!!


「!!!リアーノ!!」

 思わず、差し出された手ではなく、殿下の長い髪の束を掴んでしまう。


うわっ!!!

長い髪の束が取れる。なんで???


そのまま、尻もちをつくように倒れる。

なんとか下に落ちずに屋根にとどまる。

わたしの手に殿下の長い髪の束が残される。


「……。」

「………。」


しばらくの静寂の後、

「…大丈夫?」


頭をポンポンとされ、ふふふと笑顔で殿下が隣に座られる。

 そして、眼鏡を取られる。


あれっ?ええっ!!アッサム!!!


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