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舞踏会へ

読んでいただきありがとうございます。

リアーノ王城編に戻りますよ!

 お姉様の消息が全く掴めないまま、とうとう舞踏会の日が来てしまった。

 

 フィリップ様は朝早くにお部屋に顔を出してくださり、今日の段取りの確認を一緒にする。


「ステファニー、少し耳を貸して」

 フィリップ様はそう言うとわたしの耳元で声を低くされた。

「今日はジークがある人の提案で城下にある古い建物で探し物をしているよ」

「そうなんですね!ありがとうございます」

 段取りの確認で難しい顔をしていたわたしが急に元気になったので、フィリップ様は少し笑いながら優しく微笑まれた。


 ジークならきっとなにか、手がかりを掴んできてくれるはずだ。

 舞踏会に出席予定だろうに、ギリギリまで最善を尽くしてくれるジークに感謝せずにはいられない。


 そして、フィリップ様は午前中はセイサラ王国の皇太子殿下から同盟国へ重要な報告とその説明の会議があるということもこっそりと教えてくださった。

 アッサムが急ぎ王都サハに戻った、あの火薬の盗難事件のことだ。

 あの後の進展をわたしは全く知らない。

 無事に盗まれた火薬は見つかったのだろうか。


 アッサムは無事なのだろうか。

 いまは無性にアッサムに会いたい。

 一目だけでもと思ってしまうのは、いまから始まる身代わりの本番が不安で仕方ないからだろうか。


 ここで弱気になってはダメだ。

 わたしにしか出来ないことをがんばると決めて、この場所にいるのは私自身だ。


 誰にも見られないように後ろを向いて、自分に気合を入れるために赤くならない程度にペチッ両頬を叩いた。

 


 ドレスは見事にフィリップ様の瞳の色、そのものだった。

 この色をお姉様が選んだのかと思うと、フィリップ様のことをどれぐらい想っておられるのかが手に取るようにわかる。

 本当ならこのドレスをお姉様が着て、フィリップ様の隣でお披露目の日を無事に迎えられたことをお祝いをしたかったに違いないと思うと心が締め付けられた。


 ドレス姿のわたしを見たフィリップ様が一瞬だけど目を見開き、そして少し寂しげに微笑まれたことをわたしは見逃しはしない。

 きっと一瞬、わたしにお姉様の姿を見て、そして違うと現実を見られたんですよね。



 「リアーノ、綺麗だ」

 舞踏会のホールに入る直前に人払いをされ、陛下ご夫妻とフィリップ様の4人だけになった。

 陛下が泣きそうな声でわたしのドレス姿を褒めてくださった。


「ありがとうございます。今日はターナーさんや他の侍女さん達もみんなでがんばってくださいましたよ」

「リアーノをこんな身代わりという形で表舞台に出したくなかった。リアーノにはリアーノのお披露目の場を用意したかった。ステファニーの結婚が落ち着いたらとゆっくりしていたことが悔やまれてならない」

 陛下が苦悶に満ちた顔をされ、同じような表情を王妃様もされている。


「いつかきっと、リアーノだけの機会を作ります」

 王妃様がそう言って目を潤ませてわたしを見るので、もらい泣きをしそうになる。


「わたしが公表されてなくて良かったんですよ。こうやって身代わりをすることができました。いまは舞踏会が上手くいくことと、お姉様のことだけを考えましょう」


 お互いが深く頷き合った。



 各国の王族やニシアの貴族達が静かに見守る中、フィリップ様にエスコートされ、陛下ご夫妻の後に続いて入場をする。

 前だけを見据えて胸を張り、震える足を一歩一歩間違えないように意識的に前に前に出す。


 

 なんとか入場も無事に終えて舞踏会が始まると、フィリップ様とステファニー王女殿下に扮したわたしは各国の王族達に挨拶をして回る。


 フィリップ様がご来賓の方々とひとりでずっとお話しをしてくださる。

 わたしはもっぱら、ニコニコと隣にいるだけ。

 先日、わたしには話しかけられないように仕向けていくことをおっしゃていたが、本当にフィリップ様の話術はすごい。

 たまにわたしが話しかけられると二言三言お話をしてから、作戦どおりにしきりにゴホゴホとしてみせる。


 そして、セイサラ王国の陛下の名代で来られた皇太子殿下にご挨拶となった。

 近くでお顔を拝見するのもお話しをするのも、セイサラ王国にいる時では全く機会がなかったので初めてだ。


「フィリップ、おめでとう」

「ありがとうございます」

気安く皇太子殿下がフィリップ様のお名前を呼ばれた。

 フィリップ様との打ち合わせの時に事前に聞いてはいたが本当に皇太子殿下とは旧知の仲のようだ。

 お姉様も皇太子殿下とはそうらしい。


「ステファニーも良かったな。今日は私が陛下の名代できたが、今度は私の弟を交えてゆっくりお話しをさせてくださいね。本日、この場で弟を紹介できないのが残念です」

(訳:この場にはアッサムではなくて、私が来てがっかりしただろう。アッサムは少しもリアーノに会わせてくれない。今度、ゆっくり話をしよう)

 わたしに悪戯っ子のような目で話しかけられる。

 それがとてもアッサムと重なる。


「ぜひ、よろしくお願いします」

 恐る恐る答えると、隣でフィリップ様が笑いを堪えているのか、肩が揺れている。


 その時、会場がざわざわとして遠くで女性たちの黄色い声が上がった。

 3人とも、その声の方に視線を向ける。


 あれは…


 皇太子殿下とフィリップ様が同時にその人物達に合図を送られて、その人物達がこちらの様子に気づく。


 そのふたりは顔を見合わせてから、こちらに競い合うかのように早足で向かってきた。


 それはアッサムとジークだった。


読んでいただき、ありがとうございます。



★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります。



☆お知らせ☆

第1章がコミカライズされました。

「幼馴染は隣国の殿下!?〜訳アリな2人の王都事件簿〜」

まんが王国さん他で毎月15日電子配信中。

作画は実力派の渡部サキ先生!

リアーノがアッサムがジークが!

麗しい&可愛いでたまらんですよ。

ぜひ一度、各電子書籍さんに見に行ってくださいね。

マンガも原作もお楽しみ頂ければ幸いです。


以下↓お目汚しですが…


皇太子殿下:俺とフィリップは旧知の仲

フィリップ:ジークもステファニーもだよね

皇太子殿下:そうだね。小さな頃から知っている

フィリップ:私たちも幼馴染ってことにしますか

皇太子殿下:ということは「幼馴染は隣国の殿下」

フィリップ:「そうです。ステファニーのことです♡」

皇太子殿下「いや、私のことでもある」

アッサム、リアーノ「乗っ取るのやめてください!」

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