王都での休日
無事にレナード殿下の孤児院訪問の同行という大役も終え、平和な日々を過ごしています。
建国300年記念式典の招待状も着々と用意を進めつつあります。ふふふ!カード作りは楽しい!
今日は久しぶりにお休みの日です。朝はゆっくり起きて、寮の部屋を掃除してから、王都の中心街にカード類やペンを見に行こうと思っている。ライラさまを誘ってみたんだけど、婚約者さまとデートらしいんだよね。デートか… ライラさま、いいな。ってか、婚約者さまがいらっしゃったのね。今度、ゆっくりお話しを聞きださねば!
王都の中心街はすごく賑わっています。
王宮からは歩いて数分のとこなのに、こんなに賑わっているなんて、やっぱり記念式典に向けて活気があるという話しは本当なんだね。
まずは本日の1番のお目当ての文房具屋さんへ。アマシアとは違ってお店も大きくて、品数も豊富だわ。欲しかったペン先を購入して、ご機嫌よく店の扉を開けた時、
ドゴン!!!
と鈍い音と同時に、扉に何か大きなものが当たった感触が…
やってしまった!!
「すみません!!」
「ーーー痛ーっーーい」
長い黒髪の男性がうずくまっている。
「よく確認していなくて…申し訳ありません。
お怪我は?」
勢いよく扉を開けてしまった。
「本当にごめん…な…い」
うずくまっている男性が顔を上げられて、その見たことがある顔にびっくり!!
「レ…ナード…で」
殿下が慌てて、人差し指をご自分の唇の前にあてて、ウインクされながらシッーと合図をされる。
ここでお名前を言うのはご法度なんですね。
「…あの… 大丈夫ですか?」
恐る恐る聞いてみる。
立ち上がったレナード殿下は肩を撫でている。
「もしかして、肩をガツンとあててしまいましたか?本当に申し訳ありません。」
「リアーノ嬢、気にしないで。僕の肩はこれくらいのことで壊れないよ。大丈夫。」
レナード殿下の眼鏡の奥の黒い瞳が優しい。
「いえ…でも… 。」
「いや… 本当に大丈夫だから、気にしないで。」
わたしの頭をポンポンと撫でられる。
(…なんか、この感じ…懐かしい手だわ。)
「…でも…。なにかお詫びを…。」
「じゃあ、お昼ごはんに付き合ってよ。リアーノ嬢はもう食べた?」
そうです!お詫びにごはんでも奢らせていただきます!
「いえ、お昼ごはんは、まだです。」
「では、ひとりでは入りにくいと思っていたお店がそこにあるんだけど、一緒に食べよう。」
なるほど!いま王宮で話題の東方の国のような異国情緒溢れるカフェですね。
男性免疫ほぼゼロのわたしですが、意外にも緊張することなく楽しい会話ができ、美味しいごはんの後、お会計をしようとすると、レナード殿下がさっさと支払ってくださり、わたしはすごく恐縮してしまいました。
お詫びになっていませんね。
「リアーノ嬢はいまからどうするの?」
「王都のこれだけは見ていた方が良いと教えてもらった観光スポットのミリ教会を見に行ってから、帰ろうと思いまして。」
「ああ、あそこね。教会を中心に放射状に道があって、教会を中心に街が形成されていったのがよくわかるよ。」
「そうなんですね。さすが殿下ですね。よくご存知ですね。」
「ところでお店では聞こえてはいけないのでお伺いできなかったのですが、今日はおひとりでお忍びの視察ですか?」
「…ふふ… そうそう、一人で視察だよ。」
含み笑いをされて、目が悪戯っ子のようだ。
なんだろう。懐かしい… アッサムもいたずらをするときはよくそんな目をしていたっけ。
レナード殿下も、そんな一面があるんですね。なんて親しみやすいんだろう。
「リアーノ嬢、ミリ教会をご一緒してもいいかな。」
「!!」
「レナード殿下、目立ちますよ。殿下が普通に歩いているなんて。あり得ません!」
「自分は病弱ということもあり、あまり王宮から出たことがないから、そんなに有名じゃないからわからないと思うよ。」
「ねっ、だっていまも誰もお店では気づかなかったでしょ。!」
こちらをじっと見つめられていては、とんでもないご提案をお断りすることはできません。
「…はぁ〜レナード殿下はお時間はよろしいのですか?」
「あと少しくらいなら、王宮のみんなにバレないでしょ!」
殿下のまわりの方も大変だ。見たことがある面々の困ったお顔を思い浮かべる。
2人で並んで歩き、まるで側から見れば、デートのよう…だと思いたいのですが…
まぁ、レナード殿下が素敵過ぎて、ちんちくりんのわたしは子どものようで、どう見てもお兄ちゃんと妹といった感じですが…。
でも、すごい楽しいひとときを過ごしましたよ。一生の思い出ですね。