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あと3日(初日)

リアーノの王城編

 お姉様、つまりステファニー王女殿下の身代わりがただ単に双子であり似ているだけでは務まらないと、すぐに現実を知ることになった。


 ニシア国王陛下ご夫妻(わたしの実両親)との面会に向けて、お姉様の普段使いのドレスをお借りしたのだが、まず胸のサイズが合わない。

 悲しい現実…だわ。

 わたしは食堂の娘なので、これでもしっかり美味しいものを食べている方だと自覚しているのに負けた… 完敗だ。


 もちろん、勝手にサイズを直すわけにもいかないので、とにかく布を下着の上からターナさんに手伝ってもらって、2人でヒイヒイ言いながら巻きまくった。

 いまが冬で良かったとつくづく思う。


 それにドレスなんて、半年前のザッハの任務で仮面舞踏会に参加した時とライラ様の結婚式で着用したぐらいなので「王女殿下のドレスの裾さばき」の正解がわからないのだ。


 ターナさんに真っ直ぐに歩くときや、階段を登り降りするときのドレスの扱い方などを教示していただき、ようやく「王女殿下らしく」歩けるようになった。

 いままで歩くことになんの意識もなかったけど、こんなに「歩く」が難しいものかと初めて知った。


 とりあえず、お姉様の行方不明をここしばらくは「体調不良で寝込まれている」で凌いできているので、それに乗っかりいまは「まだ回復途上で声があまり出ない」ということにして、少しでも人前で発言する機会を減らす作戦にすることにした。


 

 そして、いよいよ身代わりデビュー。

 少し緊張しながらも大理石の敷き詰められた階段や長い廊下を歩き、応接室に向かう。


 そこでは、陛下ご夫妻をはじめ、お姉様の婚約者であるフィリップ様、そして以前に一度だけお会いしたことのあるフォンデル公爵とさっきまで一緒だったジークもいた。

 もちろん、人払いがされている。


「リアーノ!よく来てくれた!」

 わたしが入室して扉が閉まるのを確認してからすぐに、わたしと同じ茶色の瞳の陛下が声を掛けてくださった。


「お手紙をありがとうございました」

「リアーノ、無理を言ってすまなかった」

 陛下が本当に申し訳なさそうなお顔をされる。

 

「ここにいる者たちで全力でリアーノを守るから安心をしてくれ」

 わたしが全体を見回すと、ここにおられる皆様全員が頼もしい表情でわたしに微笑まれる。


 よく考えると、とんでもなくすごい方々ばかりですよね。

 皆さまの頼もしいその微笑みにこれからの不安も一瞬で消え去った。


「皆さま、どうぞよろしくお願いします」

 落ち着いて、ゆっくりカーテシーをする。


「リアーノのニシアへの帰郷はいつも秘密裏だね」

 ジークがクスッと笑いながらとんでもない発言をすると、一同が困った表情で笑いながらも、少し重々しい空気が軽くなった。


 この場面でウイットに富んだ会話ができるジークはやっぱりさすがだわ。


 お姉様の婚約者のフィリップ様と目が合ったので改めてご挨拶をさせて頂く。

「フィリップ様、精一杯ステファニー王女殿下の身代わりを務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」

「リアーノ嬢、私のお披露目の舞踏会のためにありがとうございます。よろしくお願いします」


 お姉様の婚約者のフィリップ様は以前、ザッハで一度お会いしている。

 ジークと兄弟ということもあって、ジークとよく似た金髪に整った顔立ちをされていて、ジークよりも落ち着いた雰囲気で、とても優しそうな方だ。



 お披露目の舞踏会まであと3日。

 なんとかギリギリ間に合った。


 それでも1秒でも早く、ステファニー王女殿下を見つけなければならないのは変わらない。


「お姉様…ステファニー王女殿下は…」

 一同が、みんな暗い顔に戻り俯いた。


「心当たりはすべて探したがまだ。ステファニーは自分の立場や役割を一番理解している人だから、自ら出ていくことは考えられない。間違いなく事件に巻き込まれていると考えている」

 フィリップ様が悔しそうだ。


「そうなんですね。わたしの大好きなお姉様のためです。お役に立てることがあれば、なんでもおっしゃってください」

「ありがとう。リアーノ嬢の気持ちがうれしいよ」

 よく見れば、フィリップ様の目の下には大きなクマが出来ていた。

 お姉様が行方不明になってから、ゆっくり寝ておられないんだろう。


 それからわたしたちは、舞踏会に向けての打ち合わせや、お姉様の捜索について真剣に話し合った。

 



 打ち合わせがやっと終わった。

 わたしは舞踏会までの短い時間でやらなければならないことが多い。

 その課題の多さにやり切れるのか少々不安になる。

 少しでも早く課題に取り掛かりたいところだけど、打ち合わせ中もチラチラとわたしを見て、わたしとふたりでおしゃべりをしたくてうずうずしていたお母様には離してもらえず、結局お茶に誘われ、部屋に戻った時には夜になっていた。


「リアーノ様、お疲れ様でした」

 お母様に質問攻めにあったので、ぐったりしながら部屋に戻ると、ターナさんが部屋を暖めてくれていたおかげで心地よい空間になっている。

 からだに巻きつけた布を解き、持ってきた私服に着替えるとようやく落ち着くことができた。


 机の上を見ると資料が山積みになっていた。

 お母様とのお茶会で少し時間も押している。

 でも、いまはとにかくゆっくり寝ている時ではない。


 「貴族年鑑」と書かれた資料を手に取る。

「ターナさん、今夜中にこれを覚えますので、明日の朝に派閥やお姉様の交友関係のことを教えていただいてもよろしいですか?」

「もちろんです。ご無理をされないでくださいね」

 これでも食堂の娘なので、人の顔や名前を覚えるのは朝飯前だ。

 さぁ、わたしはやれば出来る子!

 本領発揮といきますか。

 指をワキワキさせながら、資料をめくった。

読んでいただき、ありがとうございます。


母:「貴女のアマシアでの話や恋の話を聞きたかったの」

リアーノ:「だから、うずうずされていたんですね」

母:「ちゃんとごはんは食べている?」

母「いまはアマシアでなにをしているの?」

母「アッサム殿下との仲の進展は?」

母「アッサム殿下とキスはした?」

母「馴れ初めは?いつから好きだったの?」

質問攻めってこんな感じだったのでしょう。

ステファニー王女が大変な時でも、聞きたいものは聞きたい。

女心ですね〰︎

お疲れ様。リアーノ。


★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが爆上がりします。



☆お知らせ☆

この小説がコミカライズされています。

「幼馴染は隣国の殿下!?〜訳アリな2人の王都事件簿〜」

まんが王国さん他で電子配信中。

作画は渡部サキ先生!

溺愛&事件&ほっこり系です。


マンガも原作もお楽しみ頂ければ、幸いです。

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