表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/103

ステファニーの行方

 いま、わたしはどこにいるんだろう。

 ニシアの大事な国民を守れずに、こんな得体の知れない団体のところへ女性や子どもを来させてしまったことを悔いている。

 そして、自分の好奇心と直感に感謝だ。

 

 帆船で海を渡ること3日。そして、荷馬車に押し込まれて1日。

 迂闊だった。

 自国を離れ、よくわからない遠くまで連れ去られてしまうとは。

 

 あれだけ幼少の頃から勉強をして、国内の地理はもちろん、国外の地理もかなり頭に入っているのに、情けないことにいまいるこの土地がどこだかわからない。

 

 見たこともない山々が遠くに見え、そしてそこそこ、大きな街。

 ニシアでないことは間違いない。

 ニシアだったら大概の町や村は視察で行ったことがあるからだ。この規模の街なら、絶対にわかると自信がある。

 気温やこの辺りの植物や建物の形状を見る限り、ニシアからはそう遠く離れた国ではないことは見当がついている。

 しかし、いまは見張りがいて自由に町を歩くことができないため、ここがどこだか確認をすることができない。

 私は女性や子ども達と古い工房兼住宅に軟禁されている。

 残念なことに隣にある店舗兼住宅は空家だし、反対の隣も空き店舗なので、全く町の人と合わない。そのため、少しも情報が得られないのだ。

 人口が多いのを逆手に、人混みに紛れるかのように私達は上手いように完璧に世間から隔離されている。

 ここに連れてきた奴らも本当の馬鹿ではないということだ。

 

「スファちゃん、元気がないね。どうしたの?疲れちゃった?」

 ここでは、「ステファニー王女殿下」である身分は隠して、商人の娘の「スファ」と名乗っている。

 隠していなくても、誰もこんなところに王女殿下がいるとは思わないだろうけど。

 

 ただ、王族らしい「エレガント」な振る舞いをしないように気を張り詰める毎日だ。

 ふとしたところでそういう所作や言葉使いが出るのはここでは命取りになる。


「大丈夫だよ。ラナちゃん、心配してくれてありがとうね」

 ラナちゃんの頭を撫で、慌てて止まっていた手を動ごかす。

 心配そうに横にいるラナちゃんの母もこちらを見ているので、無難な笑顔で応える。


 わたしの目の前に置かれている天秤で黒い粉末状のものを大きな袋からすくって計り、それを手のひらの大きさの小さな陶器の壺に入れる。

 そして、横にいるラナちゃんの母にその壺を渡し、ラナちゃんの母が天秤で黄色っぽい粉を計り、またそれを壺に入れ、それを次の人に渡す流れ作業をしている。

 

 この工房の責任者はこの作業を薬の調合であると、この作業に従事する者たちに説明しており、みんなもそれを信じているがこれは決して薬ではない。


 工房の責任者や見張りは男性ばかりだが、それ以外は連れて来られたニシアの平民の子どもと女性だけだ。

 みんな、ニシアの教会から慈善事業だと説明を受け、連れてこられた者ばかり。


 そんな者たちがこの「薬」の本当の正体を知っているわけがない。

 なにが慈善事業だ。

 でも、本当のことは言えない。真実を知るとみんな間違いなく殺されることは明白だ。

 わたしも無知な娘を装い、その正体を知っていることを隠している。

 そして、この「薬」のこれからの行く先を追っている。

読んでいただき、ありがとうございます。

がんばって、毎週更新予定。


★「続きが早く読みたい」と思われた方や面白いと思われた方、ブックマークや下記の評価をどうぞよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります。



☆お知らせ☆

コミカライズされました。

「幼馴染は隣国の殿下!?〜訳アリな2人の王都事件簿〜」

まんが王国さんで電子配信中。

作画は渡部サキ先生!

アッサムの憂いの表情は最高です!

リアーノは、めっちゃ可愛いんですよ!

溺愛&事件&ほっこり系です。

マンガもお楽しみ頂ければ、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ