ステファニーの行方
いま、わたしはどこにいるんだろう。
ニシアの大事な国民を守れずに、こんな得体の知れない団体のところへ女性や子どもを来させてしまったことを悔いている。
そして、自分の好奇心と直感に感謝だ。
帆船で海を渡ること3日。そして、荷馬車に押し込まれて1日。
迂闊だった。
自国を離れ、よくわからない遠くまで連れ去られてしまうとは。
あれだけ幼少の頃から勉強をして、国内の地理はもちろん、国外の地理もかなり頭に入っているのに、情けないことにいまいるこの土地がどこだかわからない。
見たこともない山々が遠くに見え、そしてそこそこ、大きな街。
ニシアでないことは間違いない。
ニシアだったら大概の町や村は視察で行ったことがあるからだ。この規模の街なら、絶対にわかると自信がある。
気温やこの辺りの植物や建物の形状を見る限り、ニシアからはそう遠く離れた国ではないことは見当がついている。
しかし、いまは見張りがいて自由に町を歩くことができないため、ここがどこだか確認をすることができない。
私は女性や子ども達と古い工房兼住宅に軟禁されている。
残念なことに隣にある店舗兼住宅は空家だし、反対の隣も空き店舗なので、全く町の人と合わない。そのため、少しも情報が得られないのだ。
人口が多いのを逆手に、人混みに紛れるかのように私達は上手いように完璧に世間から隔離されている。
ここに連れてきた奴らも本当の馬鹿ではないということだ。
「スファちゃん、元気がないね。どうしたの?疲れちゃった?」
ここでは、「ステファニー王女殿下」である身分は隠して、商人の娘の「スファ」と名乗っている。
隠していなくても、誰もこんなところに王女殿下がいるとは思わないだろうけど。
ただ、王族らしい「エレガント」な振る舞いをしないように気を張り詰める毎日だ。
ふとしたところでそういう所作や言葉使いが出るのはここでは命取りになる。
「大丈夫だよ。ラナちゃん、心配してくれてありがとうね」
ラナちゃんの頭を撫で、慌てて止まっていた手を動ごかす。
心配そうに横にいるラナちゃんの母もこちらを見ているので、無難な笑顔で応える。
わたしの目の前に置かれている天秤で黒い粉末状のものを大きな袋からすくって計り、それを手のひらの大きさの小さな陶器の壺に入れる。
そして、横にいるラナちゃんの母にその壺を渡し、ラナちゃんの母が天秤で黄色っぽい粉を計り、またそれを壺に入れ、それを次の人に渡す流れ作業をしている。
この工房の責任者はこの作業を薬の調合であると、この作業に従事する者たちに説明しており、みんなもそれを信じているがこれは決して薬ではない。
工房の責任者や見張りは男性ばかりだが、それ以外は連れて来られたニシアの平民の子どもと女性だけだ。
みんな、ニシアの教会から慈善事業だと説明を受け、連れてこられた者ばかり。
そんな者たちがこの「薬」の本当の正体を知っているわけがない。
なにが慈善事業だ。
でも、本当のことは言えない。真実を知るとみんな間違いなく殺されることは明白だ。
わたしも無知な娘を装い、その正体を知っていることを隠している。
そして、この「薬」のこれからの行く先を追っている。
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