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ジークの告白

ジークとレナード殿下はそのまま向き合い、お互い黙ったままだ。


「レナード殿下、いまは時間もありません。この続きは記念式典が終わってからにしましょう。リアーノもね。」

 ジークがわたしの方を見たので、思わずビクッとしてしまった。

 

 今回のことがあって、一度はゆっくりニシアに行ってみたいと漠然と思っていたが…


 お昼休み直前、ジークが事務室のみんなに帰国の挨拶に来た。レナード殿下はジークと陛下の元に向かってからまだ戻ってきていない。

 事務室にいる面々は、ジークの多大な協力に感謝を述べて、次は記念式典での再会を楽しみに別れを惜しんだ。

「リアーノ、潜入のパートナーだった俺の見送りに来てよ。」

 ジークがニッコリと微笑みながら、パートナーだったとか言って、見送りを懇願する。

 「リアーノ、見送りに行っておいで。」

 ホーシャック室長に言われると行かざるを得ない。

 今朝のことがあるから、無難にみんなと一緒でここで見送りたかったんだが…

 「…はい。」

引き攣りそうな顔で無理矢理に笑顔を作る。

 なにも起きませんように。

 ジークがこっそり笑っている。

 あー 嫌がっているのがバレたな。


「ジーク、今回はいろいろありがとう。」

 結局、他愛もない話しをしながら城門のところまで見送りに来てしまった。

 城門では近衛騎士が3人ほど待っていた。

 そうか… ジークって意識していなかったけど、隣国の筆頭公爵家のご子息で、王家の親戚にもなる人だから、近衛騎士が護衛に…

 そんな人が協力してくれて、これは凄いことなんだと改めて実感する。

「…リアーノ、どうしたの?」

「近衛騎士様がお待ちだから…」

「ああ…陛下に断ったのに、今回の英雄でもあり、ニシアの重要人物を一人で返したらセイサラの沽券にかかわるとか言われたらね…。」

 ジークは苦笑いしている。

「ジークなら、守られなくても無事に帰れるのにね。」

 思わず、2人で野宿したことを思い出し、ゲラゲラと笑ってしまった。


 ふわっとした明るい空気のところに、ジークが真剣な表情でわたしを見つめてきた。

 ジークの空気が一瞬で変わったのがわかった。ただ、少し頬を赤く染めている。

「リアーノ、朝にも言ったけど、今回は俺はひとりで帰るけど、次にセイサラに来る時はリアーノを連れて帰るからね。」

「ジーク、ありがとう。わたしも一度ゆっくりニシアに行きたいと考えているの。本当のお父様、お母様にお会い出来るものなら、お会いしてお礼を言いたいの。殺されてもおかしくないわたしを危険を承知でおじいさまに預けてくださったからね。だから、その時はよろしくね。」

「うん。リアーノ。それはきっと叶うよ。俺は、リアーノにはニシアで暮らして欲しいと思っている。さっき、リアーノをこれから守りたいって言ったのは嘘じゃないから。」

「…ジーク?」


ジークがわたしの手を取り、その綺麗な切長の瞳で見つめてくる。

「リアーノ、俺と婚約前提で付き合わないか?」

「!!!」

いま、なにを… 咄嗟のことで理解できない。

付き合う? そして、こ、こんやく… 婚約ってアレ?婚約のこと!

「な、なにを言っているの!」

 事の重大さに気づいて激しく動揺してしまう。

「だから、俺と婚約前提で付き合って欲しいと言っている。」

「…付き合う?ジークとわたしが?」

「そうだ。俺はリアーノと出会って、今回一緒に行動して、その明るい人柄に惚れた。リアーノといて楽しかった。ずっと一緒にいれたらと思った。だから、婚約を前提で付き合ってくれ。」

 あまりにも思ってもなかったので言葉が続かない。

「リアーノは誰とも付き合っていないんだろう?レナード殿下とも付き合ってないんだろう。」

「そうだけど…。」

「じゃ、問題ないじゃないか。アッサムに愛を囁かれたか?でも、いずれアッサムはレナード殿下になる。」


 えっ???なに…それ…

 初めて聞いた… それは知らない。

 なにかしら事情があるのは察していたけど…


「??それはどういうこと?」

 少し気まずそうな顔をジークがした。

「詳しくはアッサムに聞いた方がいい。」

「アッサムはレナード殿下の身代わりの仕事をしているだけよ。いろいろ事情はありそうだけど…。」

 そう言って、ハッと嫌な予感がよぎる。


「詳しくは本人に直接聞いてくれ。」

 ジークがギュッとわたしの手を握る。

 「返事は今でなくていいよ。記念式典の時に聞くから、俺のことを考えていて欲しい。」

「…でも、ジークは公爵家の人よ。わたしは食堂を営む家の娘。考える余地はないわ。」

 ジークが首を横に振る。

「俺の家はそんなことは気にしないし、誰からもなにも言わせない権力もある。それにリアーノの事情を知っている。むしろ、歓迎すると思うよ。」

 ジークが嬉しそうに微笑んでいる。

「…ジーク…。」

 きっといまわたしは情けないくらいすごい戸惑った表情をしているに違いない。

「じゃあね。リアーノ、記念式典まで俺のことだけを考えていてね。」

 そう言うと、ジークは踵を返して、近衛騎士の方に向った。

 

今日もありがとうございました。

遅くなって申し訳ないです。

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