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伝説

 「ここにおられるみなさんがこのニシア国やセイサラ王国では王家に双子が生まれることは不吉であるという伝説はご存知ですよね。」

 わたし以外が頷く。


「もちろん、知っている。それは王家に関わる者だけが知る重要機密事項のひとつだ。でも、ここ何代かは生まれていなかったはずだ。」

 ジークのお兄様が発言する。


「表向きはそうなっています。いまから18年前、今のニシア国の陛下、つまりステファニー王女殿下のお父上が皇太子だった時、皇太子妃は初産で双子の女の子を出産されました。皇太子ご夫妻はその当時の王、ステファニー王女殿下の祖父にあたられる王に伝説を無視し、双子を育てることを懇願したのですが、伝説を重んじる王はそれをお許しになりませんでした。しかも、育てることを認めないばかりか、双子の妹の命を奪うことを側近に命じられたのです。」


 わたしは、ハッと息を飲んだ。

 おじいさまがわたしの方を見た。

「そう、ここにいるリアーノを殺せと命じられたのです。それがどうしても出来なかった側近が皇太子殿下に正直に王の命令を打ち明け、相談したのです。側近もまた、小さな子ども2人の父だったのです。」

「…その側近とは、もしや父でしょうか?」

ジークが神妙な面持ちでおじいさまに尋ねる。


「そうです。フォンデル公爵です。フォンデル公爵は王の考えも理解できるが、子どもを持つ父として皇太子ご夫妻の気持ちもわかるため大変悩まれました。そして、あることを企てるのです。」


 おじいさまの眉間の皺が深くなる。

「双子の妹を殺したことにして、誰にも気づかれず国外に脱出させること。そして、王家と関係のないところで育てることを…わたしはその頃、特殊部隊を率いてニシア国やセイサラ王国の秘密裏の調整の任にあり、行ったり来たりの生活でしたが、とある命でセイサラ王国のアマシアを拠点にしており、わたし達の部隊がアマシアで預かることになった。細心の注意を払い、船で国外に脱出させることに成功したのです。」

 ああ… だから、おじいさまはわたしを「海からの贈り物」だと言ってくれていたのね。

 仲間であるナンシーさんもわたしのことを知っていたのね。


「お父様もお母様も双子の妹を手放したことをそれはそれは大変後悔しておいででした。」

 ステファニー王女殿下が俯いている。

「リアーノがいま身につけているネックレスもわたしの16歳のデビュタントの時にお父様とお母様からお祝いにと作ってくださったのだけど、わたしと貴方にお揃いで作られたものなの。だからそれは貴方のなのよ。」

ステファニー王女殿下の優しい眼差しと目が合う。

「ドレスもよく似合っているわ。ジークから貴方に合うドレスを貸して欲しいと急使が来た時は大変驚いたけど、そのドレスもベーシックなものはお母様が2着づつ貴方の分もと言って作らせるから、貴方のドレスなよ。お母様ったらサイズもわからないのに双子だったらきっとサイズも一緒だろうと、わたしのサイズで貴方の分を作らせてね。あと3着、わたしとお揃いがあるわよ。」

ふふふ。と微笑まれる。

「…そうだったんですね。ありがとうございます。」


 いままで、本当の家族が生きているなんて考えたこともなかった。考えないぐらいおじいさま、おばあさまに愛されて育てられた。


「わたしは今まで、本当の家族がそんなにわたしのことを思っていてくださっているとは知らず、それはそれはおじいさまやおばあさまが大切に育て、愛してくださり、幸せに暮らしてきました。まわりの方々にも本当に大事にしていただいていました。」

「…知っているわ。祖父が亡くなってお父様が即位されてすぐに、お忍びでアマシアに貴方を見に行かれたもの。帰って来られた時は、幸せそうで連れて帰って来れなかったとしょんぼりされていたわ。」

「そうですね。ニシア王は即位後すぐに食堂にお忍びで来られましたよ。定期的に近況はお知らせしていたのですが。」

 おじいさまがステファニー王女殿下と頷き合っている。


「フォンデル公爵も大したものですね。フィリップ様がステファニー王女殿下の婚約者に決まっても、フィリップ様にこの件はお話しになられなかったんですね。秘密をずっとおひとりで守っておられたんですね。」

 ジークのお兄様のフィリップ様が頷かれる。

「そうね。わたし達王家もこの話をする時は必ず人払いをするしね。みんな、秘密を必死に守っていたのね。わたしはずっとリアーノに会って、話しをしてみたかった。だから今日は、リアーノに会えるチャンスを逃してはならないと、フィリップ様にわがままを聞いていただいて、王都からザッハまでがんばって来てしまいました。会えて本当に嬉しわ!」

 ステファニー王女殿下が嬉しそうにわたしを見つめてくださる。


 ジークが真剣な面持ちでおじいさまの方に向き直り、いきなり立った。

「ダンさん、貴方やお仲間の皆様が必死で18年間守り抜いたリアーノをこんな場面で利用することになって、本当に申し訳ありませんでした。」


 ジークが深々とおじいさまに頭を下げる。

 おじいさまがたちまち困り顔になった。

「いやいや、レナード殿下からこの計画を聞いた時は驚いたけど、ニシア王にもこの件はお知らせを秘密裏にしていてね、承諾は頂いているよ。実際にステファニー王女殿下は王宮から、いつもより近衛騎士が多くついていても、すぐに出発できたのではないかい?」

「…そういえば。」

 ステファニー王女殿下がハッとされる。


「ニシア王の計らいだよ。」

「陛下にも、もう報告が…。」

ジークとお兄様のフィリップが唖然とされている。


今日もありがとうございました。


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