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ザッハへ

お待たせしました。

やっと本編に戻ります。


「ジーク、ザッハまではあとどれくらい?」

「そうだな。あの山を越えた先だ。」

 あの山… だいぶ遠くに見えるのですが…

 今日中に着くのかしら?


 善は急げであれから翌朝、ジークがいい話があると連絡をしてきたらしく、わたしが出勤する頃には、ジークを交え、レナード殿下やホーシャック室長、ダーリア殿と話し合いが始まっていた。


 ジークは、この件を進めるのに、ダナン宰相のとこでの護衛騎士の職を急用で親戚の女性と一緒に実家に帰らなければならなくなったいうことで、休みをもらったらしい。

 その日には出発をしたいという、ジークの意向に沿い、あまりにも時間がないので、わたしは道中でジークから説明を受けるということになった。昼には着の身着のまま王都サハをふたりで飛び出した。

 

 ジークと並走して、馬を走らせる。

「リアーノは馬に乗れるんだな。」

「はい!おじいさまに仕込まれましたので。おじいさまは、わたしにいろいろ教えてくださいましたので。」

「大事に育てられたんだな。」

「きっと、わたしがひとりなっても生きていけるように教育してくれたんだと思います。」

 他愛もないことをジークと喋りながら進む。


「リアーノ、今日は野宿になりそうだ。まもなく日が沈むし、このまま進むのはやめよう。危険だ。」

「わかりました。」

 明日の夜明けまで、とりあえず小川のそばで野宿することになった。

 焚き木を拾い、ジークが貴族の出身にしては手慣れた手つきで火をつける。

「リアーノは寒くないかい?」

 ジークは優しく、よく気が利く。

 ダナン宰相のところで護衛騎士として務まるのもうなずける。


「いまは大丈夫ですよ。ジークはこういうことに慣れているんですか?」

「子供の頃から、狩りに連れ出されて野宿もしたことがあったし、騎士団でも野営はしたよ。いまは護衛騎士だしね!」

 悪戯っ子のような表情をして、戯けて見せる。ジークは本当に明るく楽しい人だ。

 ジークが持ってきてくれた敷物に並んで座った。

「ジーク、わたしに今後の予定を説明していただいてもよろしいですか?」

「そうだね。リアーノは何も聞いていないんだよね。明日の昼頃にはザッハにある僕の実家の別荘に着く予定だよ。そして、2日後に例の密造酒を作っている貴族の屋敷の舞踏会にふたりで出るよ。」


 舞踏会…それは困った。

「すみません、ジーク。わたしは平民出身なので舞踏会に行ったことがないです。しかも行ける身分でもないし、舞踏会に行けたとしても用意も全く持っていませんよ。」


ジークがリアーノがその言うだろうと予想していたのが当たったのか会心の笑顔で、

「それは大丈夫だよ!俺に任せておいて。」

とニカっとした。

 なにか企んでいそうに見えるのは気のせい?


「それにしても舞踏会のタイミングが良すぎませんか?」

「ああ… それは、以前に招待状を頂いていて、兄が行く予定にしていたものを代わってもらうことにした。」

「ジークにはお兄様がいらっしゃるんですね。兄弟って憧れますね。わたしはひとりっ子なので。」

 そう言って、兄のようなアッサムを思い浮かべてしまった。


 昨夜、抱きしめられ、好きだと言われた。

 そして、口づけをした…

 アッサムがわたしを大事に思っているということだけを覚えていて欲しい…と。


 いまも思い出すだけで、頬が熱くなる。


 今朝のレナード殿下の顔を恥ずかしくって、直視できなかった。

 レナード殿下はなにか言いたげだったが、ふたりになる時間もなく、慌ただしく出発してしまった。でも、ある意味、助かったとも思った。

 あのまま、執務室での仕事が続くようなら、どう接していいのか、わからなかった。


「リアーノ??なんか赤いけど大丈夫?」

「…あ、すみません。焚火が心地よいもので…」

 顔に出てしまった!

 咄嗟に赤い顔の理由がそれしか思いつかなかった。



 翌日のお昼前には、ジークの家の別荘に到着した。

「ジーク、別荘だと仰っていましたよね。」

 わたしの目の前には、門番付きの立派な門の向こうに、綺麗に手入れされた芝生が広がり、別荘という建物は、どう見ても屋敷という佇まいだ。

「別荘だよ。王都の屋敷はもう少し広いけどね。」

「………。」

 (ジーク、あなたはいったい何者?)


 門番さんが恭しくお辞儀をされ、門を開けられる。

「ようこそ、俺の友人のリアーノ!」

「!!!ジーク、それは違うわ。貴方は貴族よ。わたしは平民。ダナン宰相のとこの使用人って事にしておいて!」

 それが一番、平和だと確信していますが…。

「そんな怖い顔しないで。リアーノは俺の友人は嫌?俺はもう、リアーノを友人だと思っているよ。一夜を共にしたしね!」

 ジークがキラキラ金髪を揺らしながら、ウィンクしてくる…

「ジーク、その言い方は誤解を生むわ!一緒に野宿しただけよ!」

 そんなことを言われても、まあ憎めない…。 大きな子犬のような…

「ありがとう。では、お言葉に甘えて友人でお願いします。」

「良かった!リアーノ、よろしくね!」

ジークは楽しそうに微笑んだ。

今日もありがとうございます。

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