アッサム視点 出発前夜の街の灯り編
アッサム視点
とりあえず、今回で終了です。
それからはナンシーさんとの調整や雑務などに追われて、気づけば夜になっていた。
ここ王宮に来てから眠れないことも多いが、今夜もあまり眠れそうにもない。
バルコニーから月を見ていると、ふと、リアーノに偶然に出会えた倉庫に行ったら、今夜もリアーノに会えるかも知れない…
そんなことが頭をよぎる。
ただ… 逢いたい…
そう思うと、行動せずにはいられなかった。
今日も王都の街の灯りは綺麗だ。
もしかして出発前のリアーノに逢えるかもと淡い期待を思い描いていたが、姿はなかった。
そんな恋愛小説のような都合のいいことはない。
腰を下ろし、街を眺める。
どれぐらいの時が経ったのだろう。
風が出てきた。
もう、帰ろうと思ったその時だった。
俺の心拍数が急に跳ね上がる。
リアーノが俺の隣に座る。
会話もなく、ただ2人で王都の夜景を見つめる。
アマシアでは、よく屋根伝いに逢いに行っては、こうやってよくふたりで潮風を感じていたな。あの時に戻れれば…。
もう絶対、間違えない。
リアーノを手放したりしないのに。
隣にいるリアーノに触れたい。
そんな衝動を抑える。
「リアーノは明日からの準備は出来たのか?」
「うん。出来てるわよ。今日はあと寝るだけ。」
リアーノがすごいでしょ!と少し得意げだ。
「そうか… あまり、明日から無茶苦茶なことはするなよ… 俺が側に居てやれたらいいけど、レナードでは出れないし…。」
そう。俺がレナードでいる限り、リアーノの側にはいてやれない。レナードに自由なんてものは存在しない。
「アッサムはアッサムで「レナード殿下」の仕事が忙しいじゃない。心配しなくても大丈夫よ!それよりもアッサムの方が、毎日危険じゃないの?」
「…俺?俺は心配しなくても大丈夫だよ。」
リアーノが俺を心配してくれる。
それが愛しくて、思わずリアーノの頭をポンポンと撫でてしまった。
そして、一度触れるともう歯止めが効かなくなる。俺の手がリアーノの髪の先を捉えて離さない。
ずっとこのまま…リアーノに触れていたい…
「そ、そういえば、アッサムはレナード殿下とよく会うの?やっぱりその変装はレナード殿下とよく似てる?」
俺の視線から逃れたいのか、照れているリアーノが話しかけてくる。
「リアーノは本物のレナード殿下に興味があるの?」
不覚にもレナードに嫉妬してしまった。
「いや… そうじゃないけど、ほら、アッサムが身代わりをするぐらいなんだから、2人はよく似ているのかなってーー」
ーー いつか、聞かれるとは思っていた。
「…ああーー レナード殿下とは、ずっと前にそれこそずっとずっと前に一度会ったきりだよ…。」
会ったのは数年前だ。
俺と本当によく似ていて、ベットに座る白くて細いレナード。
その日焼けすらしていない様子から、幼い頃から病と闘ってきたことがすぐにわかった。
握った手がとても冷たかった。
「…ごめん。あまり聞いてはいけなかったね。」
リアーノが申し訳なさそうにしている。
「…いや、リアーノになら知っていて欲しい。いまは話せることは少ないけど…。陛下や皇太子殿下は、俺はレナード殿下によく似ていると仰るよ。実際、1回きりだったけど会った時はよく似ていると思った。」
いまでも、王妃さまは俺を切なさそうに見る。だから、あまり会わないことにしている。
「…そっか…いつか機会があれば、並んでいるところを見てみたいわ。きっと麗しいお方だよね。早くレナード殿下はお元気になられて、たくさん外に出れるといいね。」
「… そうだね。」
そんな日が来ることがないことは知っている。
レナードに言いたいことはいっぱいある。
でも…俺は…
レナードと並んで歩いてみたかった。
いろいろな話をしてみたかった。
なんで、もうこの世にいないんだ。
王宮を吹き抜ける風が少し肌寒い。
もう、どれぐらい経ったのだろう…
帰ろうとふたり立ち上がる。
隣にいるリアーノをこのまま離したくない。
10日間程とはいえ、明日からはダナン宰相の屋敷に行ってしまう。
そう考えると思わず、リアーノを抱き寄せてしまった。
「…アッサム?」
「…このまま…。」
このまま、離したくない
「リアーノ、無事に帰って来るんだぞ。」
リアーノを抱き寄せる腕に力が入る。
「…うん。」
リアーノが小さく頷いてくれた。
本日もありがとうございました。
次回から、やっと本編に戻ります。
楽しみにしてしていただければ、幸いです。




