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アッサム視点 王都での休日編

アッサム視点

お時間が許すなら、

第7部と読み比べてみてくださいね。

 孤児院の訪問から何日か経ったある日。

もう、今日は仕事は終わりにして私室に戻ろうと片付けていると、ライラ嬢が執務室にやって来た。

「レナード殿下、いま少しお時間よろしいですか?」

ライラ嬢がこんな時間に執務室に来るのは珍しい。

「どうぞ。なにかありましたか?」

 ライラ嬢は、なにかうれしそうにされている。

「今日はとびっきりの情報をレナード殿下にお持ちしましたよ。」

「とびっきりの情報??」

 最近、調査している偽札の件か?

 いや、それなら先にホーシャック室長に話しているだろう。見当もつかない。

「たぶん、この情報を聞いたら、視察に行くしかありませんよ。」

 もう、ライラ嬢のニヤニヤが止まらない。

 なんだ?

「3日後のお休みの日にリアーノは王都の中心街までショッピングに行くみたいです。文房具屋は絶対行くみたいです。」


……冷静を装う。

「そうなんですね。リアーノ嬢はせっかく王都にいるんだから、いろいろ観光も楽しめるといいですね。」

「もちろん、ミリ教会もオススメ観光スポットと教えましたよ。わたしは非常に残念ながら、その日は用事があって一緒に行けなくて… ここからは独り言ですが、リアーノを案内してあげたかったなぁ。せっかく王都に来て初めてのショッピングなのになぁと思っています。」


 チラッとこちらを見るライラ嬢の目がなにか言いたげだ。

「素晴らしい情報をありがとうございます。善処します。」

 表情を変えないようにライラ嬢の話を聞いていたけど、気づけば身を乗り出して話を聞いている。


ああ… もう、これ絶対行くしかないじゃないか!


「ライラ嬢、この案件は必ず視察してきます。視察には護衛もなにも要らないので、他言無用でお願い出来ますか?」

「もちろんですよ。極秘の視察ですから。」

 ライラ嬢が満面の笑みで頷いてくれた。



 ライラ嬢の情報によると、昼前に王都で1番大きな文房具屋にリアーノが行くらしい。

 どこかでリアーノを見つけられたらと、早足に辺りを見回すが見当たらない。

 とりあえず、1番大きな文房具屋を見に行こうと急いで向かっていると、肩に激しくなにかがぶつかった。突然開いた扉にぶつかったようだ。

 思わず、あまりにもの激痛にうずくまってしまった。

 「すみません!!」

 頭上から女性の声が聞こえる。

「よく確認していなくて…申し訳ありません。

お怪我は?」

 震えるような声が…早く立たなければ。

「本当にごめん…な…い」

 とにかく顔を上げるとリアーノが目の前にいるではないか!


「レ…ナード…で」

 驚くリアーノに向けて、俺は咄嗟に人差し指を唇の前にあてて、シッーと合図をする。

 今日の姿はレナードだ。いくら、平民の格好で変装しているといっても、大っぴらにバレるのはお互いに良くない。


「…あの… 大丈夫ですか?」

 恐る恐るリアーノが聞いてくる。

「もしかして、肩をガツンとあててしまいましたか?本当に申し訳ありません。」

「リアーノ嬢、気にしないで。僕の肩はこれくらいのことで壊れないよ。大丈夫。」

 やっとリアーノを見つけられたよ。リアーノを見つめながら、ホッとする。


「いえ…でも… 。」

「いや… 本当に大丈夫だから、気にしないで。」

 もう、本当に気にしないでほしい。俺にとってはホンモノの怪我の功名だから!

 愛しさのあまり、いつもの癖でアッサムがリアーノによくやっていた頭をポンポンをやってしまった。


「…でも…。なにかお詫びを…。」

リアーノが困っている。

「じゃあ、お昼ごはんに付き合ってよ。リアーノ嬢はもう食べた?」


 俺の心は3日前から決まっている。

 リアーノをランチに誘いたかったんだ。

 もう、なんて最高のきっかけなんだ!これなら、レナードが誘っても自然だろう?

「いえ、お昼ごはんは、まだです。」

「では、ひとりでは入りにくいと思っていたお店がそこにあるんだけど、一緒に食べよう。」

 ライラ嬢から教えてもらっていた、いま王都で人気のカフェを指さした。



 楽しい時間は一瞬で過ぎる。

 一緒に店を出たが、リアーノはこれからミリ教会を見に行くのだろうか?

 許してもらえるなら俺も一緒に行きたい。実は公務でしか行ったことがないんだ。

 リアーノと一緒に見たい。いや、まだ一緒にいたい。

「リアーノ嬢はいまからどうするの?」

「王都のこれだけは見ていた方が良いと教えてもらった観光スポットのミリ教会を見に行ってから、帰ろうと思いまして。」

 やっぱり、行くつもりなんだ。


「ああ、あそこね。教会を中心に放射状に道があって、教会を中心に街が形成されていったのがよくわかるよ。」

 公務で行った時に司祭が説明されていたことを思い出す。王都に来るようになってから勉強した本にもそう書いてあったな。

「そうなんですね。さすが殿下ですね。よくご存知ですね。」

 司祭の説明のおかげです。司祭様感謝します!


「ところでお店では聞こえてはいけないのでお伺いできなかったのですが、今日はおひとりでお忍びの視察ですか?」

 リアーノが少し首を傾げて聞いてくる。


 今日はライラ嬢が気を利かせて極秘の情報を教えてくれたから(きっと無理に理由をつけてリアーノの誘いを断ったんだろう。)ひとりでお忍びの視察だよ!


「…ふふ… そうそう、一人で視察だよ。」

 自分の一生懸命が可笑しい。こんなはずじゃなかったのに。

 王都でリアーノとデートだなんて、少し前の俺は想像もついてないよ。忘れようとがむしゃらに仕事に打ち込んでいた過去の俺に教えてやりたい。


「リアーノ嬢、ミリ教会をご一緒してもいいかな。」

 リアーノがびっくりしている。そうだよな。レナードの発言だもんな。アッサムだったら、二つ返事だったか?

「レナード殿下、目立ちますよ。殿下が普通に歩いているなんて。あり得ません!」

 自分でもそう思う。護衛もなしに軽率過ぎる。レナードはそんな軽率であっていいはずがない。

「自分は病弱ということもあり、あまり王宮から出たことがないから、そんなに有名じゃないからわからないと思うよ。」

「ねっ、だっていまも誰もお店では気づかなかったでしょ。!」

 いまはとにかく、一緒にいたくて納得してくれそうな言い訳を並べてみる。レナードの病弱設定は本当だし。あまり、表に出てないから面は割れてないはずだ。


 リアーノ、どうか… 断らないでおくれ。

「…はぁ〜レナード殿下はお時間はよろしいのですか?」

 リアーノがため息混じりに困った表情だ。

 そんな表情もアマシアにいる時はよく見たな。大体が俺が無茶振りをする時だったよな。


「あと少しくらいなら、王宮のみんなにバレないでしょ!」

 今日はいつも護衛をしてくれる近衛騎士に頼み込んで見逃してもらっている。


 2人で並んで歩いた。

 アマシアにいる時はなんでもない日常だったのに。

一緒に歩く。

いまはこんなことさえ、難しい。

本日も読んでいただき、ありがとうございます!


いつか、ライラ嬢視点も書きたいと思案中です。

ところで今回のレナードとリアーノのデートのランチ、なにを食べたのか気になりませんか?

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