表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/103

アッサム視点 孤児院編

今日もアッサム視点です。

第6部

思い出しながらの作業でした。


孤児院訪問の日程が決まった。


 いつも式典や訪問などの行事出席は、皇太子殿下の役割なのだが、どうやらあちらも日程が詰まっているらしい。あと半年程で記念式典なので、バタバタしているのだろう。

 珍しく、こちらで対応することになった。


 俺の公的なスケジュール管理を担当をしているダーリア殿は、申し訳なさそうに事前レクをしてくれる。

 「当日の同行はリアーノ嬢になりました。」

 しれっとダーリア殿が言う。

 普段、「レナード」は病弱設定なので、あまり感情を出さない、物静かな人間を演じている。なのに、俺は間違いなく一瞬動揺を見せたと思う。

 ダーリア殿が、なにやら言いたそうな顔をしたかと思うと、意味ありげにニコッとする。

 俺になにを言わそうとしているんだ。

 リアーノへの想いは誰にも言っていないのだから、知るはずもないだろう。


「わかりました。」

 なにもなかったように俺は答えた。

 心の中では、よっっしゃ!!と叫んでいたけどね。

 そこへホーシャック室長が執務室へやってきた。

「レナード殿下、事前レクは進んでいますか?」

 一見、好々爺に見えるこの御仁はとんでもない狸爺だ。それをおくびにも出さないんだから、末恐ろしい。

 でも、幼少の頃からこの御仁は俺には甘いんだ。俺はいつもそれに甘えているが…。


「ええ。だいぶ頭に詰め込みましたよ。」

「リアーノ嬢は初同行なのでよろしくお願いしますね。「アッサム」になってはいけませんよ。」

 ホーシャック室長の目が面白いことは起こるかもとワクワクしている。

「なんか、他人事だと思って楽しんでいませんか?」

「いつ、リアーノ嬢はレナード殿下が「アッサム」だと気づくんでしょうね。」

 ダーリア殿もうれしそうに笑っている。

「孤児院訪問では、完璧に「レナード」でやり抜きますよ。」

 俺はハァと溜息をついた。

 人の気も知らないで…。



 当日、同じ馬車に乗り、俺の正面にいるリアーノは見てわかるぐらいに緊張をしていた。

 アッサムと気づかれないためにも、持ってきた書類に目を落とすが、全く内容が頭に入ってこない。


「リアーノ嬢は、アマシアの出身だったかな。アマシアも王都と一緒で記念式典に向けて、賑わっているらしいね。」

 緊張をほぐそうとリアーノに声をかける。

 緊張しながらも一生懸命に答えてくれるリアーノは本当に可愛い。

「リアーノ嬢は、アマシアで好きな場所はあるかい?」

 知っているけど、聞いてみる。


 例の砂浜だと話してくれた。

 リアーノが「海からの贈り物」として、やって来たあの砂浜。


 ダン爺は、砂浜に籠に入れられて置かれていたとリアーノには説明しているが、本当は違う。

 俺はあの時、ダン爺と一緒に砂浜にいたんだ。だから、知っている。

 男同士の約束だから、リアーノには絶対言えないが。



 孤児院訪問は無事に終了できるとホッとした時、まだ、歌や劇で興奮冷めやらぬ子どもたちから、かくれんぼのお誘いを受けた。


 ゲームがはじまり、隠れるところを探す俺の後ろをリアーノが、少し距離を取ってついてくる。

 

その距離がもどかしい。


 思わず、リアーノの手首を掴み、目についた物置の影に隠れた。


 このまま、手を離したくない。

 掴む手に力が入る。

 リアーノが困っているのがわかる。

 俺を意識してもっと困ればいい。

 リアーノの薄い茶色の瞳を見つめる。


 その時、ピカッと激しい閃光が走った。

 リアーノが悲鳴を上げる。


「!リアーノ!!大丈夫だから!」

 咄嗟にリアーノを俺の胸に引き寄せた。


 リアーノのふわっと甘い匂い。

 この王都サハで再会してからずっと抱きしめたかったリアーノが俺の胸にいる。


 想いが溢れ出る。


 思わず抱きしめてしまった。


 小さく震えるリアーノが愛しい。

「…雷、苦手だったよね。」


リアーノの甘い匂いを包みながら、囁く。

このまま、時間なんて止まってしまえばいいのに。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。


思った以上にアッサム視点が長くなりそうで…

次はサハでのデート編。

気長にお付き合い頂ければ、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ