アッサム視点 上京編
アッサム視点です。
第1部〜第5部
何の策略なのかと、我が目を疑った。
俺が成人してから数年間、1〜2か月は王都で仕事をしてアマシアに戻り、普通の生活を送り、そしてしばらくしてまた王都に仕事で行く。そんな生活を俺のわがままで送っていた。
でももう、そんな生活を終わらせなければならない時は迫っていた。
次に王都サハに行ったら、もうアマシアに帰って来れる見通しは立っていなかった。
アマシアに俺がそこまでこだわる理由。
リアーノだ。
リアーノが小さい頃は、うちの親もリアーノの祖父母も日中はいつも仕事で忙しくしていることもあって、よくリアーノの面倒を見さされたっけ。
お互いの家が屋根伝いで行けるもんだから、大人になってからも用事があれば、夜は屋根伝いで行き来してきた。
いや… リアーノに会いたくて、屋根伝いに行き来出来る言い訳を俺は一生懸命作っていたんだ。
そんな日々でも、リアーノの笑顔を見てるだけで幸せだった。
遂に来てしまったアマシア最期の夜。
しばらく会えないことをリアーノに伝えなければならなかった。
いつものように屋根伝いにリアーノを訪ねる。
バルコニーからリアーノを呼ぼうとしたら、机に突っ伏して寝ているリアーノを見つけた。
普段は明るく、クルクル動いて可愛いリアーノだけど、疲れて寝ているリアーノもより愛しかった。
いつから意識したのかなんて覚えていない。
ただ気づいた時には、リアーノの笑顔をそばで守りたかった。それだけなんだ。ただそれだけなんだ。
バルコニーでしばらく会えないと伝えた時、リアーノは少し複雑な表情を浮かべたけど、察しのいいリアーノは深くはなにも聞かなかったよね。
本当のことはまだ言えない。
あの時、一緒に行かないかと言いたかったんだ。攫ってでも連れて行きたかった。
でも、言葉には出来なかった。
いや… その気持ちを言葉にはしてはならない。
リアーノは絶対アマシアにいたほうが幸せになる。
だから、執務室にホーシャック室長と一緒にリアーノが現れた時は、本当はすごい動揺をした。自分がレナードの姿であることを忘れそうだった。
そして、何の策略なのかと… 我が目を疑った。
王都に来てからは、アマシアやリアーノのことは忘れようと、無我夢中で仕事をしていた。
そんな姿がホーシャック室長やダーリア殿、ライラ嬢を心配させていたのだろう。
アッサムの時とは違い、長い黒髪を束ね、眼鏡姿のレナード殿下姿を見て、リアーノは声まで上ずって緊張していたよね。
そんなリアーノをただただ抱きしめたかった。
その感情をグッと堪えたけどね。
本日も読んでいただきありがとうございます。
ずっーと書きたかったアッサム視点!
しばらく、アッサム視点が続きます。
よろしくお願いします。