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護衛騎士

 アッサムが帰った翌朝、わたしとナンシーさんはいつも通りに朝食の準備を他の使用人さんと進める。

 いつもと違うのは、ダナン宰相が隣国の外出から昨夜のうちに戻られたため、なにかと厨房は慌ただしい。


「リアーノ、食料庫から小麦粉を取ってきてもらっていい?」

 奥の厨房のお菓子チームからです。

「承知しました。適当に持てるだけ持ってきますね。」

 外に出て、食料庫へ向かう。

 昨日は、この食料庫の地下にワインの樽に入った蒸留酒をがんばって搬入したんだっけ。

 もう一度、あの樽を見れば、なにかわかることがあるかも知れない。

 手ぶらで地下に降りて、誰かがいては怪しまれる。棚から小麦粉を手早く取り、両手に抱えながら地下に降りた。


 樽に使われる木の匂いとうっすらと芳醇な香りが部屋いっぱいに広がっている。

 その時、不意に横から声をかけられる。

「どうしたの?」

 若い男性のようです。パッと横を見ると、金髪の端正な顔立ちの騎士のような男性が立っておられた。

「あ、ーー!いや、わたしは、その。そ、そう!昨日、この樽を搬入したんだけど、手荒く入れたので無事だったかな〜と。」

 突然のことに、顔が引きつっているのが自分でわかる。

「そうだったんだね。きみが搬入してくれたんだ。」

「門番さんと一緒にですけどね。」

 わたしだけでないことを主張してみる。

「うん!大丈夫そうだよ。綺麗に入れてくれてありがとう。」

 怪しい人ではなさそうだが…

 とにかくボロが出る前に早くここから立ち去らねば。ジリジリと後退。

「あ…、では…わたし、そろそろ帰り…ま。」

 金髪の騎士さま風がわたしの顔をじっと見ながら、ジリジリ寄ってくる。

「僕はジーク。きみは?」

「…リアーノです。」

「リアーノは前からいた?僕は旦那様の護衛騎士をしているんだけど、見ない顔だね。」

す…鋭い…。

「わたしは臨時の料理人の助手で1週間前からお世話になっております。」

「どおりで見ない顔だ!」

 端正な顔立ちのジークさまが納得したような顔をされる。

「ジークさまは、旦那様と一緒に隣国にお出かけされていたんですか?」

「…ジークでいいよ。そうだよ。昨夜帰ってきたんだ。隣国で買っておられた酒がちゃんと納品されたかが気になってね。」

 これは願ってもないチャンス!

「門番さんがザッハの酒製造所から届いたと言っておられましたが、注文通り納品されてましたか?」

「…注文通りだったよ。」

「それはよかったです。」

 そして、ちょっと怪しいかなと思いつつも質問をする。

「わたし、ザッハに行ったことがないんですが酒製造所はザッハのどの辺りにあるんですか?」

「うーん。ザッハの少し外れにある山の麓だよ。」

「そうなんですね!山が近いと綺麗なお水で作られていそうですね。」

「きみは作り方とかに興味があるの?」

(興味はないが…)

「はい!これでも自分は料理人の端くれですから、自分でいろいろ作ってみたくなりますよ。」

(いろいろ作ってみたいは嘘ではないわ。)

「わかった。今度ザッハに行く時はリアーノを連れて行くよ。」

「ありがとうございます。」

 ここは社交辞令だろう。

 目の前の金髪の甘いマスクのジークが微笑んだ。

 

「ナンシーさん!ナンシーさん!」

 さっき、ダナン宰相の護衛騎士をしているというジークから聞いた情報を伝えようと厨房でナンシーさんを呼ぶ。

「リアーノどうしたの?」

「ちょっとだけ時間いいですか?」

2人で外に出て、人気のない建物の裏に行く。

そして、先ほどあったことを伝えた。

「ザッハの外れの山の麓ねー。」

「ナンシーさんなら、大体検討はつきますか?」

「たぶんあの辺って事ぐらいは…でも、もしわたしが思っているところだったら、そこの領地の貴族の大きなお屋敷のようなものがあった気がするんだけど…。」

 ナンシーさんはエプロンのポケットをガサゴソして、ペンと小さな紙をインクを出した。

「リアーノ、紙が小さくて書きにくいと思うけど、酒製造所が山の麓だってことを書いて!わたしはちょっと、便を呼ぶわ。」


んん?便?

ナンシーさんは指笛を吹いています。

わたしは慌て屈んで、紙に書きます。

 しばらくすると、1羽の鳩がきたではありませんか!

 鳩の足に紙をくくりつけると、また飛び立って行きました。

「ナンシーさん、あれは?」

「伝書鳩よ!仲間に知らせてくれるわ。」

ナンシーさん、やっぱり只者ではなさそうです。


今日もありがとうございました(^ ^)


ナンシーさんのポケットは他にいろいろ入っていますよ。まるで有名ネコ型ロボットのポケットさながらです。

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