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話し合い

 ナンシーさんもわたしも息をのむ。

「その密造酒らしいものが一体どこから来るのかを調べる価値はあるね。」

 ナンシーさんが腕を組みながら、フーと息をつく。

あっ…!!

「あの…確か……隣国のザッハ… ザッハの酒製造所!」

 一緒に作業をしていた門番さんがそう言った気がする。

 ザッハは隣国の王都の次に大きい街で、このセイサラ王国の王都サハからは、そう遠くはない。

 「「ザッハ!!」」

アッサムとナンシーさんの声が揃う。

「ザッハになにかあるの?」

「偽札のことを探っていたんだが、例の貿易商は王都に来る前はザッハにいたらしい。」

 アッサムが眉間に皺を寄せて教えてくれる。

 「ザッハがたまたま一緒なだけで、偽札も密造酒疑惑のことについても、まだまだ情報が足らなさ過ぎる。」

 ナンシーさんも眉間に皺が出来ていますよ。

「ナンシーさん、そうですね。これだけでは、証拠を掴むことすら難しいですね。ザッハに一度、誰かが行かなければならないな。」

「いま、動けるの人の心当たりはありますか?」

 まだ、たくさんの協力者がいるようですね。

「そうだね。その酒製造所の確認と、貿易商の足どりだけでも、早急に誰かが調査しないことには前に進まないな。」

 アッサムとナンシーさんはよく話し合いをするのか、小慣れた感じです。

しばらく話し合いが続く。


「そろそろ、帰ります。」」

アッサムが窓の方を見ています。

月がもう山に隠れそうだ。

「ここにはなにできたの?」

「…徒歩。」

「!!!」

「抜け出して来るのに、馬はないだろう。」

アッサムがニヤッと笑う。

よく考えればそうですね。


「では、ナンシーさん、リアーノをよろしくお願いします。」

「もちろん。アッサムの大事なリアーノのことは任せておいて!」

「ありがとうございます。リアーノ、むちゃはしないようにな。ナンシーさんの言うことを聞くんだぞ。」

 子どもだった頃を思い出します。

 アッサムによくこんなことを言われてたな。

 少し拗ねてしまう。

「わかっています。ナンシーさんにご迷惑をかけないようにがんばります。」

 なんだか、任務を果たすというよりも、良い子で無事に過ごすことに重きが置かれているような…。 深く考えてはならない。

「では、引き続きよろしくお願いします。」

 アッサムは静かにドアを閉めていった。


「否定しなかったね…。」

「なにをですか?」

「リアーノはわかっていなくていいよ。」

 ナンシーさんがクックってうれしそうに笑っていました。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「昨夜、ダナン宰相の屋敷にいるナンシーさんとリアーノに会ってきました。」


 綺麗な長い黒髪を束ねた眼鏡姿の麗しいレナード殿下。

 今朝はいつものように穏やかな雰囲気で執務室にいる。

 「昨夜、また抜け出したんですか?誰にも見つかってないでしょうね。」

 ホーシャック公爵が心配顔だ。

「ホーシャック公爵、大丈夫ですよ。例の地下道で抜けましたし、アッサムだから誰もわかりませんよ。」

「城の地下道の存在を知るものは限られているとはいえ、レナード殿下の代わりなんてあなたしかいないんです。何かあったら…。」

「すみません。何かないように気をつけます。」

 わかっているのか、わかっていないのか、満面の笑みで応えるレナード殿下。

「それよりも忙しくなりそうです。すぐに調べないといけないことがあります。ダーリア殿とライラ嬢も召集です。」

ホーシャック公爵が2人を呼びに執務室をでる。


 窓から見える王宮の建物や、遠くに見える街は今日も平和そうである。

 自分はここでなにをやっているんだ。

 これは「レナード殿下」の仕事と割り切っている。

 それが役割。

 陛下と皇太子は表で常に公正で正しくなければならない。

 「レナード」は第二皇子。すべての闇と裏を引き受ける。

 遠い空の下はアマシアだろうか。

 思い描いてはいけない未来。

 これから先のことに思いを巡らせ、大きく息をつく。

今日もありがとうございました(^ ^)


アッサムはあれから、30分かけて歩いて帰ったそうです。お疲れ様!

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