見知らぬ地と新たな家族
祐一は転生した、新しい世界へと。
「ゃないか!ってあれ?もしかしてもう着いた感じ?」
「そうでございます。実際のところ転生というものは莫大なエネルギーを使うため時間が掛かります。もちろん祐一様も人間の寿命で言うならば20回ほどは生きられる時間が掛かりました。しかし転生を施され方は感覚的に一瞬なのでございます。」
「え、じゃあこっちにくるまでに大体、2000年ぐらい掛かったの?」
「ええ、大体そのくらいだと思っていただいていいと思います。」
「そうかそうか、まぁさ、それはいいとして、イルロス。僕には疑問がある。
なぜ墓地なんだよ!もっといい場所ないのかよ!こうさぁ、海が一望できる絶景の海岸とか、世界を見下ろせる山の頂上とか色々あるじゃない。なんでここなんだよ!服もボロボロだしよ泣」
「この体は以前他の方が所有していたもの、つまり一度病気や事故により死んだものの体となっておりたった今墓地から蘇ったため墓地にいます。もちろんもう一度使えるように新品には変えてあります。それでですね祐一様、この世界には転生方法が二つございます。それが新たな生命をもたらす転生と一度死にもう一度命を宿す転生です。そしてお分かりの通り祐一様の転生方法は後者であります。つまりそれはあなたの名前も家族も既に存在しているという事。それで、祐一様には家族の場所に戻っていただきます。そして今、祐一様は現状7歳でございますが15歳までこの体の持ち主であった家族と共に過ごしていただきます。そして祐一様が15歳になった時、祐一様がこちらに来た理由、そして成さなければならない事をお伝えいたします。」
「そうなのか、しかし、その家族の元に絶対戻らなければいけないのか?」
「はい、それが掟でございます。そして何より祐一様が15歳になるまでの試練でもあるのです。」
「試練というと?」
「はい、その試練とはあなた様が新たな家族を守り、助け抜くことができるかということです。」
家族か、俺は前の人生で家族を大切にするどころか迷惑をかけ怒鳴り散らしていたからな笑、まぁ頑張ってみるか
「おう!やってみせるよ!」
「それでこそ祐一様ございます。では新たな家族の家はそこまで遠くありませんので歩いて向かいましょう。」
「え!それって歩かなくてもいい方法あるってことでしょ?そっちで行こうよ、俺歩くのやだ。」
「近くても遠くても歩くしか方法がありませんね、この世界。もし遠くに行く場合は馬車ですね。」
「遠いってどれくらいから言うの?」
「大体、50kmぐらいです。」
「うわ、聞かなきゃよかった。」
「さぁ、祐一様、陽が沈む前に向かいましょう。」
「あ、はい。」
そして祐一達は家族のもとへと歩いていった。そして祐一がノアが住んでいたミダル村に近づくにつれ人が見えるようになった。それと同時に死んだはずのノアが歩いていることを見て驚愕し呪われた子だと恐れた。それを感じとったイルロスは祐一に教会に行き祈りを捧げることを提案した。
「なぁ、イルロスよー、祈りを捧げるのはいいんだがなんでそんな事するんだ?」
「それは祐一様が呪われている子ではないと証明する為です。祈りを捧げれば呪いは浄化されると考えられていますので」
「なるほどね、てかイルロスはどうするの?悪魔だから教会なんて入れないんじゃないの?」
「いえ、私は何も害がなく入ることができます。確かに役職としましては悪魔ですが、私には以前述べたように知恵だけを兼ね備えた存在、つまり私は悪魔としての役割が一切無いのです。ですので何ら問題はございません。」
「そうか、じゃあやっぱりイルロスの言葉に嘘はなかったんだな!俺はそう信じてたぜ!笑」
イルロスは思っていた。彼の心は腐っているのだと。親への不敬な態度、更生の無さ、人として終わっているとそう思っていた。イルロスはこの短期間の中で彼がまだ腐っていないことを理解し、そして彼が信者に選ばれた理由を理解した。
そして祐一達は墓地から約5キロ離れたミダル村にある家族の家、ボリアース家に着いた。祐一達が家に着くとちょうどノアの姉、エリナは庭にあるレモンの木を手入れしていた。そして手入れされたレモンの木にはレモンが3個なっていた。
エリナ・ボリアース、今年で16歳になる可愛らしく美しい女の子だ。エリナは容姿もスタイルも良く一般から見れば不自由がなく人生の勝ち組といったところだろう。しかし彼女は自分の人生に落胆していた。それもそのはず、彼女にとってこの世で一つしかない大切存在を失ったからだ。ノアという存在を。
彼女が6歳の頃、父ダン・ボリアースと母サラ・ボリアースの元に新しい命が宿った。
「エリナ、あなたに大事な話があるの、聞いてくれるかしら」
「どうしたの?」
「お母さんね、赤ちゃんができたの。」
「え!じゃあ私、お姉ちゃんになるの!?」
「ええ、そうよ、あなたはお姉さんになるの」
「やったー!私お姉さんになるんだ!」
「それでねエリナ。赤ちゃんが産まれたらお母さんは赤ちゃんにずっと付き添わなければいけないの。」
「うん」
「だからね、エリナはお母さんが困ってる時は助けてくれる?」
「うん!当たり前だよ!だって私お姉さんになるんだもん!」
「あらあら、頼もしいお姉さんね。」
エリナはお母さんとの約束を守るために毎日、お手伝いをし、自分ができる事をできるだけした。
そして段々とお母さんのお腹が目立ち始めもうすぐ私もお姉さんになるんだとワクワクしていた。
でもその一方でお母さんが段々と暗くなっていき涙を流す回数が増えていたことに不安も抱き始めていた。
そう不安を抱き始めたのも束の間、ある日、母のお腹は元通りになっており顔はげっそりと痩せ魂が抜けたように天井をただただ見つめるだけの人になった。
そしてサラは子供ながらに理解した。赤ちゃんは生まれて来ないのだと。
サラが子供を産めなかったのはある男が原因だった。
それはサラがゴラス町まで買い物に行った時のことだ。魚を買いたかったサラだがミダル村は海辺から遠いため、魚介類が無い。
そのため魚介類を買うには隣町であるゴラス町に行かねばならなかった。なのでサラは魚を買うためゴラス町にあるボードフィッシュという魚屋に出向いていた。そしてその頃魚屋の向かいにあるペッパーマードルという酒場で喧嘩が起きていた。
喧嘩していたのはカートルとジョンでどちらも下級兵士を務めていた。二人は久々の休暇をもらった為溜まりに溜まったお金で、どんちゃん騒ぎをしていたのだがどちらが偉いかという些細な言い合いからもみ合いに変わってしまった。それがただのもみ合いで済めばよかったのだが悪いことにカートルを投げ飛ばしたジョンがふらついてサラにぶつかりドミノ倒しで倒れてしまった。そして不運なことにサラが下敷きになってしまった。そしてお腹の子は天使と共に消えていった。