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ピース・リゲイン  作者: ヨベ キラセス
8/9

シーズン

「わざわざ付いてこなくてよかったんだが……」

「そういうなって。お前だってこんな夜中に来なくてもいいだろうに」

 現在7時。廃校を四人で歩く。

「…本橋さんは帰ってもよかったんですよ?」

「いえ! ついて行きます!」

 いつになく秋はそう強く口にし、しかしガタガタと千夏の後ろにしがみ付いていた。千夏はと言うと……なんかニヤニヤしている。

「…海原、ちゃんと本橋さんを守ってくださいね」

「分かってるって! まあ私らに喧嘩売る奴なんてそうそういないでしょうけどね!」


 こうして三十分歩く。どうしてか秋の『空間把握』に引っかからず地道に何度か冬人にコールしてもらうが、一向に音がしない。

「…なあ、本当にここなのか?」

 その冬人の一言に少し揺らぐが、思い返せばどうも昨日の昼からなかった気がして探すのを続ける。

「冬人、もう一度––––」



 それは突然、辺りに鳴り響いた。


 流れているのは小五に流行っていたロボットアニメの曲。

 響く曲に耳をすませ、その方向に着いた時僕らは背筋が凍った。


 彼の墓の前だった。


 固唾を飲み、僕はその携帯を手に取る。

 それは最近流行りのスマホに似ていたものの、少し性能が違う気がする。

 そこに映し出されていたのは、文字化けした名前と、通話を促すスワイプだった。

「…おいおい、霊界からとかだったら洒落にならないぞ?」

「ど、どうしますか春夜さん!」

「お、お、お、落ち着きなさいよあなななたたち!!」

「海原、お前が一番落ち着け。……もしかしたら持ち主かもしれない。あいつを訪ねて来てくれたのかもしれないし、一応出てみよう」

 そしてスワイプし、スピーカーに変える。果たして………

『……あーもしもし、自分、そのスマホの持ち主なんですが』

 やはりと言うべきか、僕らは安堵し会話する。

「あ、いえ、すみません。僕らも自分の探していた時に見つけたもので。どちらにおられますか? こちらから届けたいと思いますが」

『いやー、わざわざすみません! えーと、多分近くにいると思うんですが……あ、俺も拾ったスマホなんですよ。お借りしたかもしれませんね』

「いえ、お互い様だと思いますから。それより場所を教えてください」

 声的には同い年の男子の声だった。どこか懐かしさを感じる気がするが、ひとまずは合流すべきだろう。

『…えーと、廃校裏の、ちょっと不気味な墓があると思うんですが』

「あ、はい。それで」

 おそらく合流場所を指定しているのだろう。墓については仕方ないが、皆少しもやっとしてしまう。

『そこで待ってます』

「……えっと、あなたは今どこに?」

『え? だから墓前に』

 その言葉にようやく違和感を感じて辺りを見渡す。暗いとはいえ、辺りには人影がない。

「……春夜さん」

 スマホに聞こえない声で秋はある事実を告げる。

「……校内、校外に通話していると思われる人物が見当たりません」

「……そんな…」

 絶句する。彼女の能力は決して弱くない。むしろその力と知識で『シーズン』の頭脳ですらあるほどの優秀さだ。なのに、彼女でさえ探知できていなかった。

「……あの、本当にあなたはどちらですか?」

『あ! 名前名乗るの忘れてました!』

 緊張感を感じない声で答える彼が、もしかすると『防人』のメンバーかもしれないとさえ考える。一言すら相手に情報を与えてはならない。


 ––––そう、思っていた。






『俺は『平坂ヒラサカ 史軌シキ』! ここだけの話、何でも屋をしている葉坂高校の一年だ!』

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