上書きされた予知 2
「……中に二十三人、かなり広いです」
扉に手を当て目を閉じて感覚を集中させる秋の能力は『空間把握』。場所の広さ、高さから人や物の配置まで、あらゆるものを透視するかのように理解する。手を当ててはいるが、もっと集中すればどんな遠くの座標すらも把握できるらしい。
秋の合図に今度は冬人がドアを蹴って中に入った。
「…オイ! お前らなにも––––」
そう叫んだ男の背後をバットで殴った冬人の能力は『瞬間移動』。あらゆる場所に瞬時に飛び、又は相手を飛ばし翻弄して、日頃からの腕っ節で相手を崩す。
そして千夏が真正面から近くの男に突っ込んだ。
「お、いい女じゃねーか」
そう言って油断する男の顔目掛けて殴る千夏の能力者は『重力操作』。自信や周りの重力を自由に調整でき、今は彼女の拳に普通の数倍重い重力で殴り、その男はそのまま壁まで飛んでいった。
そして、突っ込んだ二人に逃げ腰になった奴は僕と秋の方に突っ込んでくるが、
「……浅い。浅すぎる」
僕は呟き手をヒラッとさせる。
僕の能力は『念力』。自在に遠くの物を持ち上げたり投げたりできる単純な力だが制限は今のところなく、僕はそいつらを浮かせ、壁に叩きつける。
「反異能教団『防人』、確保完了しました」
『ご苦労。追加報酬も考えておく』
「……ところで金山さん、少しいいですか?」
『なんだい、君から質問とは珍しい』
一呼吸おいて、ポケットに入れていた紙を広げる。
「……今みたいなテロやそれに準じる事件は変わらないのですが、ちょっとした交通事故、火事、自然災害等の小さな被害について、予知がほぼ外れています」
『……ほう』
予知科の的中率は決して低くない。大体85%をキープする水準である。
だけど、今日の事件の大半、小さめのものに関してはほぼ外れている。二十近くあるそれらのほぼ全てが。
金山は少し口籠り、
『……そのことなのだが』
と、隠していた事実を告げられる。